このページでは、Inkscapeでグラデーションを使ってオブジェクトを塗りつぶしたあと、そのグラデーションが消えてしまうという挙動について、あれこれメモしていきたいと思います。
(2024.05.16更新)
結論から書くと、オブジェクトの変形とともにグラデーションも変形させるようにするという設定をオフにしてあると、オブジェクトの移動やコピペを行ったときにグラデーションが消えてしまうことがあります。
例えば次のようにフィルの塗りつぶしにグラデーション(放射グラデーション)を使った円を描きます。

そして「オブジェクトと塗りつぶしの連動」のページにも書いたように、Inkscapeの環境設定の振る舞い > 変形の画面で「グラデーションを変形する」というチェックボックスをオフにしておいて(チェックをはずしておいて)、このオブジェクトを移動したり違う位置にコピペしたりすると、次のようにグラデーションの模様がずれます。この例では右上に移動した円オブジェクトのグラデーションはその真ん中からズレることがわかります。

なぜかというと「グラデーションを変形する」をオフにしてあるので、円オブジェクトの位置が変わってもそれに合わせて自動的にグラデーションが変形されることがないからです。そのあたりの事情も「オブジェクトと塗りつぶしの連動」に書いてあります。
簡単にいえば、グラデーションの座標値などを含む定義情報は円オブジェクトの情報とは独立に保持されているので、円オブジェクトがどんな位置や形に変化したとしてもグラデーションの位置(座標値)は変化しません。
試しにこの例の円オブジェクトを大きく拡大してみると次のようにグラデーションは最初の位置を保っていることが見て取れます。
そのため、移動、拡大縮小、回転、コピー&ペースト、複製など、元のオブジェクトと異なる位置に変化する場合は次のようにグラデーションの位置がずれます。

ポイントは、最初の位置から遠く離れた領域ではグラデーションはもはや色の変化を失い単一色の塗りつぶしと変わらなくなっているということです。
次のように少しづつ離れた位置に移動していくと、グラデーションの位置もどんどんズレていき、結果的に単一色で塗りつぶしただけのように見える状態になってしまいます。

コピー&ペーストの場合も、コピー元のオブジェクトから大きく離れたところにペーストすると、いきなりグラデーションが消えてしまったかのようになります。
