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InkscapeでPDFに保存するとぼかしが粗くなることについて

 このページでは、Inkscapeでオブジェクトにぼかしを設定した状態で、そのドキュメントをPDFファイルにエクスポートしたときに、ぼかした部分の解像度が勝手に低くなってしまうことがあるという動作について、メモしておきたいと思います。

(2025.03.17更新)

 まず押さえておきたいのは、Inkscapeでオブジェクトにぼかしを入れる機能は、ぼかしフィルタを使って実現されているということです。Inkscapeがメインのデータ形式としているSVG形式の仕様としてそういうことになっているようなのでInkscapeが独自にそういうことにしているというわけではなさそうです。

 さらに、InkscapeのドキュメントをPDFファイルにエクスポートする際、何かしらのフィルタが設定されているオブジェクトが存在する場合はそのオブジェクトに対して、そのフィルタを使って画像処理を施した上で、その画像処理後の画像データをPDFファイルに書き込む、という動作をするのだそうです。

 そのあたりの事情は「画像ファイルを読み書きする時の解像度」のほうに書いてあります。そちらに書いたように、PDFファイルにエクスポートした後の解像度はエクスポート前にダイアログ上であらかじめ指定する「ラスタライズ解像度」というパラメータによって変化します。そのため、「ラスタライズ解像度」に指定した値によってはPDFファイルに保存したときに粗い画像になってしまう場合があります。

 このあたりの事情を知らないと、単にぼかしを入れただけのオブジェクトのエクスポート後の解像度が「ラスタライズ解像度」に左右されていることに気づきにくく、不思議な動作をしているように見えてしまいます。

 具体例で試してみます。

 次のようなオブジェクトを描きます。フィルにぼかしを入れたもの(青い円)とストロークにぼかしを入れたもの(水色の円)を並べて描いてあります。また、比較のためぼかしを入れていない紫の線も重ねておきました。

 これをPDFファイルにエクスポートします。細かい手順は「画像ファイルを読み書きする時の解像度」のほうに書いてあります。

 エクスポート手順の中で、まず「フィルターエフェクトをラスタライズする」というチェックをはずしてエクスポートしてみます。そしてエクスポートしたPDFファイルを表示すると、次のようになっています。

 このチェックをはずすと、Inkscape内のオブジェクトにはぼかしフィルタは適用したままで、それに従った画像処理を実行せずに各オブジェクトを画像化してPDFファイル内に書き込むので、ぼかしが入っていない状態になります。

 次に「フィルターエフェクトをラスタライズする」にチェックを入れ、「ラスタライズ解像度」にデフォルトの「96dpi」を指定してエクスポートしてみます。

 パッと見にはInkscapeのキャンバス上のオブジェクトの見た目と、ぼかし具合はそんなに差がある感じではないです。

 さらに「ラスタライズ解像度」に「30dpi」という低めの解像度を指定してみると、次のようなPDFファイルになります。

 これはさすがに解像度が低いです。ぼかした結果に粗さが目立っていると思います。

 デフォルトの「96dpi」でも十分ぼかしの見た目を保ち、かつ、無用に解像度を落とすことなく、オブジェクトを画像化してPDFファイル内に保存できるようですが、ぼかしの大きさなどによっては粗さが目立つ結果になるかもしれません。PDFファイルにエクスポートした結果が思ったようになっていないときは「ラスタライズ解像度」の数値を高くしてエクスポートしてみれば改善するかもしれません。