このページでは、Inkscapeのクリッピング/マスキング機能の動きを環境設定ダイアログで変更する手順についてメモしてみたいと思います。

(2025.06.06更新)
クリッピング/マスキングの動きを変更する設定は、環境設定ダイアログの「振る舞い」タブから可能です。
ただ、環境設定ダイアログの画面を眺めただけでは各設定パラメータの意味は分かりにくいですし、ネット上で検索しても詳しく説明してくれている解説コンテンツを見つけられないでいます。Inkscapeの対象言語を英語に切り替えてから環境設定の画面を表示すると少し意味が分かりやすい表現になるので、それを見ながら各設定パラメータの意味を考えてみました。
以下、ダイアログ上に表示されている順番に各パラメータの意味をメモしていきます。
適用したとき、最前面の選択オブジェクトをクリップパスまたはマスクとして使用する
英語では「When applying, use the topmost selected object as clippath/mask」と説明されています。
複数のオブジェクトを選択した状態で「クリップを設定」を実行したとき、このパラメータがオンの場合は、一番上に重なっているパスをクリッピングパスとして使って他のオブジェクトを切り取りますが、オフの場合は、一番下に重なっているパスをクリッピングパスとして使って他のオブジェクトを切り取ります。
なぜこのパラメータがあるのかは分からないのですが、オフにすると、Inkscapeの昔のバージョンでは別途クリッピング用のオブジェクトを選択するよう促す画面でもあったのかもしれません。基本的にはオンにしておけば良いように思います。
グループ化解除時、子孫のクリップ/マスクを保持
英語では「When ungrouping, clips/masks are preserved in children」と説明されています。
このパラメータはオブジェクトグループに対してクリッピングを適用したときに意味があると思います。クリッピングした後で、そのグループを解除してバラバラのオブジェクトにしたときに、グループの解除とともにグループに対して適用したクリッピングパスもクリアしてしまう(オフ)のか、グループを解除したときはグループに対して適用したクリッピングパスを自動的に解除後の各オブジェクトにコピーしてくれる(オン)のかを切り替えます。
オフにしていた場合、グループを解除した瞬間にクリッピングの効果が消えてしまう(切り取られていない状態に戻ってしまう)ことになるので、普通はオンにしておくのではないかと思います。
適用後にクリップパスまたはマスクオブジェクトを削除する
英語では「Remove clippath/mask object after applying」と説明されています。
オンにしていた場合、クリッピングを行ったときにクリッピングパスの元として使ったクリッピング用オブジェクトを自動的に削除します。一方オフにしていた場合は、クリッピング用オブジェクトからクリッピングパスを生成してクリッピングを行いますがクリッピング用オブジェクトはそのまま残ります。
例えば1つのオブジェクトを繰り返し使って、他のオブジェクトを次々にクリッピングしていく作業を想定すると、このパラメータをオフにすると便利だと思います。
適用前:クリップ/マスクオブジェクトをグループ化しない
英語では「Do not group clipped/masked objects」と説明されています。
オンにしていた場合、クリッピングパスはクリッピング対象オブジェクトそれ自体に適用され、クリッピング対象オブジェクトの属性として記憶されます。複数のオブジェクトを選択した状態でクリッピングを実行した場合もクリッピングパスを各オブジェクトの属性にコピーすることでクリッピングを適用します。
適用前:各クリップ/マスクオブジェクトをそれぞれのグループに収める
英語では「Put every clipped/masked object in its own group」と説明されています。
オンにしていた場合、クリッピング対象オブジェクトから、その1つだけを含むオブジェクトグループを自動的に生成した上で、そのグループに対してクリッピングパスを適用します。
なぜそのようなことをするかは、想像ですが「クリッピング済みオブジェクトのクリッピング」のほうで書いたようにグループのほうにクリッピングパスを適用しておくとクリッピングパスを追加で適用することが簡単になるという効果があるのだと思います。
適用前:すべてのクリップ/マスクオブジェクトを一つのグループに収める
英語では「Put all clipped/masked objects into one groupと説明されています。
オンにしていた場合、複数のオブジェクトを選択した状態でクリッピングを実行すると、その適用対象のオブジェクトを自動的にオブジェクトグループにまとめてから、クリッピングパスを適用します。
解除後:生成されたグループを自動的解除する
英語では「Ungroup automatically created groups」と説明されています。
オンにしていた場合、オブジェクトグループに対してクリッピングパスを適用した状態で、そのクリッピングパスを何かの事情で解除したとき、適用先のオブジェクトグループも自動的に解除します。
上に書いた「適用前」のパラメータでクリッピング時に自動的にオブジェクトグループ化するよう設定していた場合、このパラメータをオンにしておくと、クリッピングの解除時にも逆の動きで自動的にそのオブジェクトグループが解除されて、元に戻ることになります。
ちなみにあらかじめ手でオブジェクトグループ化したものにクリッピングを実行し、その後クリッピングを解除しても、オブジェクトグループは解除されず、グループの状態を保ちます。