このページでは、Inkscapeの「Multiple Boolean Operations」というエクステンションについて分かっていることをまとめてみたいと思います。

(2025.06.13更新)
Inkscapeには複数のパスを選択しておいてから実行すると、それらをつなぎ合わせたり、逆に複数のパスにバラバラにするような、パス操作(パスオペレーション)と呼ばれる機能が何種類か用意されています。それぞれの操作の詳細は「パスをつなぎ合わせる/切り離す」のほうに書いてあります。
ところで、これらパス操作には、3つ以上のパスに対して実行できなかったり、選択したものにオブジェクトグループが混じっていると実行できなかったりするという制約があります。
これに対して、3つ以上のパスでもオブジェクトグループが混じっていても実行できるように作られたのが「Multiple Boolean Operations」というエクステンションです。Inkscapeに標準装備されていないので、Inkscapeのポータルサイトからダウンロードして使います。
名前に「ブーリアン」という言葉が使われていますが、ブーリアン演算ではない他のパス操作も実行できます。「パス操作(Path operation)」ではどんな機能なのか分かりにくいので「ブーリアン」というキーワードをあえて使っているのだと思います。
さて、使い方ですが、まずInkscapeにエクステンションとして追加します。Inkscapeのポータルサイトからこのエクステンションのファイル(アーカイブファイル)をダウンロードしてきて解凍し、解凍されたファイル群をフォルダごとエクステンション格納用のフォルダ(詳しくは「自作エクステンション(シンプル)」を)に置きます。
1つのpyファイルと複数のinxファイルが並んでいます。

これでInkscapeを起動しなおすと、エクステンションのメニューに次のように「Multiple Boolean Operations」を起動するサブメニューが追加されます。

英語なので分かりにくいですが、上から「統合」「差分」「交差」「排他」「分割」「パスをカット」「結合」です。
複数のパス(やシェイプやテキスト)を選択した状態でいずれかのメニューを選ぶと、一番上に重なっているオブジェクトを使って、それ以外のオブジェクトの各々とのペアでパス操作を実行します。オブジェクトグループが含まれている場合も、そのグループ内のオブジェクトそれぞれに対して再帰的に実行します。
「統合」でやってみると次のようになります。

緑の矩形2つをグループ化しておいて、3つの矩形を選択した状態で「統合」を実行すると、一番上の紫の矩形と、グループ内の緑の矩形のそれぞれとで「統合」操作が行われます。3つの矩形を1つに統合するのではないところが注意です。実行後にバラしてみると、上の例の右端のように1番上の矩形を繰り返し使って他のオブジェクトのそれぞれと「統合」が行われたことがわかります。
「パスをカット」もやってみます。

カット用のパスを斜めに引いて、それごとまとめて選択した状態で「パスをカット」を実行すると、斜めの線以外のオブジェクトは交わっているところで切り離されます。標準機能のほうの「パスをカット」とは異なり、切断対象にオブジェクトグループが混じっていても、その中の各オブジェクトが一番上に重なっているオブジェクトの位置で切断されます。
ところでエクステンションのメニューの一番下に「PathOps Custom」というメニューがありますが、これを選ぶと次のようなダイアログが表示されて、ここで各操作をデフォルト設定で実行するのではなく、いくつかのパラメータを変更した上で実行することもできます。
