お絵描きソフトInkscape(インクスケープ)の使い方を初級レベルから上級レベルまで広く紹介しています。
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Inkscapeについてのありがちな誤解

 Inkscapeを少しだけ触ったころ(入門を終えたころ)に間違えて理解していたことがたくさんあったと思います。

 他のドロー系ソフトの経験があったので、解説コンテンツに目を通さずにとりあえず使い始めればそのうち何となく使い方が分かってくるだろうと軽く考えていましたが、手探り状態のまま少し触ったぐらいではなんだかよく分からない。「だいたいこんな感じになってるんじゃないか?と思っていたら、Inkscapeでは実はこうなっていた」みたいなことも多いので、自分の確認のためも兼ねて、思いつくごとにここにメモしていこうかなと思います。

基本的に読み書きするのはSVG形式ファイルか?

 SVG形式にいくつか独自の情報を記述できるように拡張した「Inkscape SVG」という形式です。標準仕様のSVG形式ファイル(プレーンSVG形式)を読み書きすることもできますが、例えばレイヤの情報が保存できないそうです。この2種類のSVG形式ファイルの拡張子は同じなので区別できませんが。

InkscapeはCMYKに対応していない?

 対応してないわけじゃなくて「CMYKで色を設定できるけどPDFや画像ファイルに保存するときはRGBの値に変換して保存される」です。(参考:InkscapeのCMYK対応機能の詳細)」

新規オブジェクトのスタイルが上手く設定できない

 上手く設定できないのではなくて、普通の手順では設定できないのです。Inkscapeのクセのあるスタイル設定手順を憶えないといけません。(参考:新規オブジェクト追加時のスタイル

ストロークが勝手に太く/細くなる

 オブジェクトを拡大/縮小するとパスやシェイプのストロークも太く/細くなる(幅も変化する)という動作をすることがあります(インストール時のデフォルトではそうなっている)が、そうならないようにすることもできます。ウィンドウ右上のトグルボタンでオフにすると、オブジェクトを拡大/縮小してもストロークの幅は変化しなくなります。

 こういう細かい設定の切り替え操作が分かりにくいのは「あるある」でしょうか。

ラバーバンドですっぽり囲わないとオブジェクトを選択できない

 これは「いじっているうちに使えるようになる」と考えて使い始めたときに起こりがちな勘違いかもしれません。

 実際は選択ツールでもいろんなモードに切り替えることが可能になっていて、ラバーバンドで囲わなくてもちょっと重なっただけでそのオブジェクトを選択することができるモードもあります。デフォルトが「囲うことで選択するモード」なので、他のモードの存在に気づきにくいのかもしれません。(参考:オブジェクトの選択操作

パスはノードをつないだもの?

 SVG形式の仕様のはなしなのかもしれないですが、パスは複数のノードをつないだものというよりは、複数のセグメントをつないだものと理解したほうが正しいと思います。「ノード」はパスを操作可能にするためにInkscapeが表示させている画面上のマークみたいなものです。このあたりのことについて「パスを作成/編集」のほうにメモ書きしてみました。

パス上にノードを追加するのが大変?

 プルダウンメニューの「パス」以下にそれらしきメニューが無いからそう感じるのかもしれません。ノードを追加したい場所をダブルクリックするか、またはCtrl+Altキーを押しながらクリックするだけで、その位置にノードが追加されます。Inkscapeには重要な機能なのにプルダウンメニューから実行できないものがほかにもたくさんあるのでよく見逃してしまいます。

オブジェクトのアウトラインを描く機能がない?

 テキストの縁(アウトライン)を描く機能がInkscapeには無いように見えます。なぜかというと、SVG形式を基本データとしているInkscapeの世界では縁の線を「アウトライン」とは呼ばずに「ストローク」と呼ぶからです。Inkscapeでは「ストローク」に色や太さを設定して縁の線を描くことが簡単にできるので、テキストの縁(アウトライン)を描く機能と言えます。(参考:文字(テキスト)をアウトラインに変換する

自動トレース機能で縁(アウトライン)がベクトル化できない

 一色で塗られたイラストやアイコン画像などをトレース機能でベクトル化(パスオブジェクト化)しようとしてもうまくいかない場合、原因の多くが「エッジ検出」というモード名に惑わされているからではないかと思っています。「明るさの境界」モードや「色の量子化」モードを使えば解決する場合が多そうです。詳しくは「「エッジ検出」モードでのトレースについて」を。

マスクを設定してもその部分が隠れない?

 「マスク」という名前から、オブジェクトの一部分を隠す機能なのかと思いそうですが、オブジェクトの色をオブジェクトの不透明度に変換する機能です。だから一部を隠すというよりも一部を透けさせる機能と思ったほうが分かりやすそうです。詳しくは「マスキング」を。

バケツツールでうまく塗れない?

 Inkscapeのバケツツールは、同じ色の領域を別の色で塗りつぶすツールではなくて「色の境界線の内側を覆うオブジェクトを生成するツール」なので、ペイントソフトの塗りつぶしのようにピクセル単位の細かい凸凹した境界に沿って正確に塗りつぶしてくれるものではありません。(参考:バケツ(塗りつぶし)ツールの詳細

消しゴムツールでうまく消せない?

 Inkscapeの消しゴムツールは「ペイントソフトの消しゴムツールっぽく消す機能を、消しゴムで擦ったかのような形の図形を生成することでベクトルデータに対して疑似的に実現したツール」と理解すべきもので、使う場面は少ないと思います。通常はドローソフトらしく、パスの変形や切断、クリッピングなどで一部分を削除する編集を行います。(参考:消しゴムツールの詳細