このページでは、Inkscapeの計測ツールの使い方を紹介します。

- Contents
- 計測ツールとは
- ものさしを描く
- ものさしの編集
- オブジェクトの長さを表示する
- オブジェクトの位置/大きさの表示
- 計測ツールのツールコントロールバー
- 選択オブジェクトのみ計測
- 始点と終点を無視
- アイテム間の寸法を表示
- 隠れた交点を表示
- すべてのレイヤを計測
- 計測を反転
- ファントム計測
- ガイドに変換
- アイテムに変換
- 寸法線、オフセット
(2023.01.24更新)
計測ツールとは
計測ツール(ものさしツールと呼ばれることもあります)を使うと、キャンバス上のオブジェクトの位置やサイズなどの計測値をオブジェクトのそばに表示させることができます。すでに描いてあるオブジェクトのいろんなところの長さを測ったり、ある長さの線を描いておいて、それに合わせて別のオブジェクトを描くといったことができます。
ものさしを描く
ツールバーで計測ツールを選択してキャンバス上をドラッグすると、長さや角度を計測するためのものさし(青い線、ルーラとも呼ばれます)が描かれます。ものさしはキャンバス上に1つだけ描くことができます。

青い線がドラッグしたものさしの線です。
ものさし(ルーラ)と呼ばれていますが目盛りは表示されません。
そして、ものさしの長さと赤い水平線からの角度が表示されます。この例では「30mm」という同じ長さの表示が2個所にありますが、ものさしのそばに表示されている値は計測対象の端から端までの長さを示していて、ものさしから離れたところに表示されている値はものさし全体の長さになります。
計測ツールで何もオブジェクトが描かれていないところをドラッグしただけの状態は計測するオブジェクトが指定されていない状態なので、ものさしそれ自体が計測対象になっていて、結果的に同じ長さが表示されています。
この赤い水平線はドラッグ開始点から右側に描かれるので、ドラッグを左の方向に行うと次のように直角よりも大きい角度が表示されます。

ものさしの編集
オブジェクトの長さを表示する
描かれているオブジェクトを計測するときは、次のようにそのオブジェクトに重なるようにものさしを描きます。

すると、ものさし全体の長さ、オブジェクトとものさしとの交点の間(セグメント)の長さ、計測範囲全体(○から○まで)の長さ、水平線からの角度が表示されます。
計測ツールでものさしを描いておいて、後からそのノードをドラッグすることでオブジェクトに重なるように移動しても、最初からオブジェクトの上でドラッグしてものさしを描いても、結果は同じです。
計測ツールではないツールを選択するとこの表示は消えます。計測ツールを再び選択すると、前回ドラッグして描いたものさしが再び表示されます。
だからオブジェクトを変形などしたときは計測ツールを再び選択すれば前と同じものさしとの交点も更新されてその長さが表示されます。計測ツールを表示しっぱなしでオブジェクトを編集すれば長さの変化を追いかけることができるはずですが、表示しっぱなしにできないようです。
また、描いたものさしを基準として長さを計測するので、オブジェクトの特定の部位の長さを測りたいときはその部位にぴったりにものさしを描く必要があります。そのためにはスナップ機能が利用可能です。ものさしのハンドルはシャープノードとして扱われるので、スナップダイアログでシャープノードにチェックを入れればものさしの端を測定対象のオブジェクトにぴったり合う位置に移動することができます。
(参考:スナップ機能(ドラッグ時の位置合わせ))
オブジェクトの位置/大きさの表示
計測ツールを選択しておいてマウスカーソルをオブジェクトの上に移動する(かざす)と、そのオブジェクトの幅、高さ、横方向(X)の位置、縦方向(Y)の位置、アウトライン(骨格)の長さが表示されます。

バグのためか、「幅」や「高さ」のようなラベル部分が文字化けしています。上の例では45mmが「幅」で、30mmが「高さ」で、110mmが「長さ」です。
パスオブジェクトでなくても、シェイプやテキスト(!)でも表示されます。ビットマップオブジェクトはさすがに「長さ」は表示されません。
オブジェクトグループの上にマウスカーソルを持っていくとグループ全体の数値が表示されます。この場合「長さ」は表示されませんが、さらにCtrlキーを押すと、グループ全体の数値に替えてマウスカーソルの下にある(グループ内の)オブジェクトそれ1個だけの数値が(「長さ」も)表示されます。
例えば地図上の経路をパスで描いて、そのパスの長さを表示させれば(もちろん縮尺をうまく処理すれば)地図上の距離を調べるなんてこともできるかもしれません。
計測ツールのツールコントロールバー
計測ツールを選択すると、次のような項目がツールコントロールバーに表示されます。
まず左半分です。

左から、フォントサイズ、精度、表示倍率、単位の指定を行う項目です。これらは、ものさしのそばに表示する長さの形式を指定するもので、精度は小数部分の桁数、表示倍率は実際の長さの何%の長さを表示するかを指定します。
右半分は次のようになります。

左から、選択オブジェクトのみ計測、始点と終点を無視、アイテム間の寸法を表示、隠れた交点を表示、すべてのレイヤを計測、計測を反転、ファントム計測、ガイドに変換、アイテムに変換、寸法線、(寸法線の)オフセットを指定する項目です。
選択オブジェクトのみ計測
このボタンを押すと、選択していたオブジェクトだけを計測対象にするモードに切り替わります。
下のほうのパスだけ選択しておいて計測ツールを選択してものさしを描くと、次のように、下のほうのパスとの交点についてだけ長さが表示されます。

始点と終点を無視
このボタンを押すと、ものさしの端(始点、終点)は計測対象にせず、それ以外の交点について長さを表示するようになります。
次のように、ものさしは普通に表示されますが、端点とそれ以外の交点との間の長さは表示されなくなります。当然、計測範囲全体(○から○まで)の長さはものさし自身の長さよりも短くなります。

アイテム間の寸法を表示
このボタンを押すと、複数の交点の間の長さはすべて表示されますが、このボタンを押さないと、複数の交点のうち一番外側の交点の間の長さだけが表示されます。

隠れた交点を表示
このボタンを押すと、他のオブジェクトが重なっているために見えない交点についても計測対象にして交点の間の長さを表示します。次の例はこのボタンを押していない場合です。
すべてのレイヤを計測
このボタンを押すと、複数のレイヤに配置されているオブジェクトを対象とします。押していない場合は、現在編集中のレイヤに配置されているオブジェクトだけが対象になります。
計測を反転
このボタンを押すと、ものさしの向きが反転されて(始点と終点が入れ替わって)、結果として長さの表示や角度の表示が反対側になります。

ファントム計測
このボタンを押すと、その瞬間のものさしの絵が画面に残ったまま、次のものさしをドラッグして描くことができます。1つ前に描いていたものさしの「幻影(ファントム)」を作るボタンということです。
ボタンを押したときだけ幻影が作られるので、計測ツール以外のツールを選択したりすると消えます。
なんどもものさしを描くときに、1つ前のものさしと比較できるようにするという効果があるようです。
ガイドに変換
ものさしの計測対象になっているポイントからガイドライン(オブジェクトをスナップすることができるキャンバス上の線)を引きます。
計測対象になっているすべてのポイントからガイドラインを引くので、次のようにガイドだらけの画面になります。
(参考:スナップ機能(ドラッグ時の位置合わせ))

アイテムに変換
ものさしとその周囲のオブジェクトをパスオブジェクトなどに変換してくれます。計測ツール以外のツールを選択したときも見た目は同じままにパスオブジェクトやテキストオブジェクトとしてキャンバス上に残ることになります。(「アイテムに変換」という名前は機能を表していないように思います)
このボタンを押すと、次のようにオブジェクトの交点を示す「×」印や長さ表示のラベルもオブジェクトになります。変換後のオブジェクトは1つのオブジェクトグループになります。

このボタンを使うと、先にものさしを描いてオブジェクトに変換しておき、スナップ機能を使ってものさしの大きさに合わせて他のオブジェクトを配置するようなことも可能になります。
寸法線、オフセット
アイテムに変換する操作に似ていますが、ものさし全体を、その長さを示す矢印(パス)
と長さラベル(すなわち寸法線)に置き換えてくれます。置き換えたあとは普通のオブジェクトなので、計測対象のオブジェクトを変形してもそれに追いつくように自動的に変形されたりはしません。また、ものさし全体ではなく、その一部について置き換える機能はないようです。

オフセットは、寸法線をものさしからどれぐらい離れたところに描くかを指定します。