Inkscapeを使って、区切りのない(区切りの目立たない)連続的に描かれているように見えるパターンの作り方を試してみたので、このページではその結果を紹介します。

- Contents
- 普通のパターンとの比較
- 手順1:パターン1単位を描く
- 手順2:パターンを4つ並べる
- 手順3:パターン1単位にする領域を描く
- 手順4:図形を追加する
- 手順5:境界線の矩形を消す
- 手順6:クリッピングしてパターンを切り出す
- 手順7:パターンに登録する
(参考:パターンを使って塗りつぶす)
(2023.11.10更新)
普通のパターンとの比較
比較のためまず普通のパターンを作って塗りつぶしに使ってみます。
例えば次のような互いに少しずれた位置に矩形を描きます。

これをInkscapeのパターンとして登録し、楕円のフィルの塗りつぶしに使ってみます。

これだとパターン1単位の中の模様は互いにバラバラな位置にありますが、パターン同士の境界線をまたいでいる模様が無いので、パターン同士の境界線が見た目にはっきりしてしまいます。
一方ここで描きたいのは、次のように模様が互いにズレた位置にあるおかげでパターン同士の境界線が見た目でははっきりせず、何らかのパターンが繰り返されているということだけはわかるのだけれど、まるで連続して描かれているような錯覚を受けるパターンです。

手順1:パターン1単位を描く
以下のような手順を考えてみました。
まずパターンの境界線に相当するパターン1単位の大きさの矩形を描き(左)、その中に収まるように模様を描きます(右)。

この模様をそのままパターンに登録して並べただけでは上に書いたようにパターンの境界線が目立ってしまうので、これらの模様に対して縦横に重なるような位置の他の模様を次のように描き足します。
手順2:パターンを4つ並べる
パターン1単位を境界線の矩形ごとコピーして縦横4つに並べます。

このときスナップダイアログでシャープノード同士が一致するような設定をしておくと、ドラッグしている矩形の角が他の矩形の角に吸い寄せられるようになるので、簡単に揃えることができます。(参考:スナップ機能(ドラッグ時の位置合わせ))

手順3:パターン1単位にする領域を描く
さらにその上からもう1個だけ同じ形の矩形を描きます。

この最後に追加した境界線の矩形の内側に描かれているものを最終的にはパターンとして用いることになります。
描いた図形に交差するような位置を選んで境界線の矩形を描くと、パターン化して並べたときに境界線がより目立たないようになるのがポイントだと思います。
手順4:図形を追加する
パターン1単位の領域の内側に追加の模様を描きます。

追加の模様はパターン1単位として切り出したときに境界線のところで模様が切れてしまわないように、境界線の矩形の内側に描くのがポイントです。
また、パターンの境界線が目立たないように、すでに描いてある模様に対して縦横に重なるようにずれている位置に描くのがコツだと思います。
手順5:境界線の矩形を消す
パターン1単位として切り出す真ん中の境界線の矩形以外の矩形を消します。真ん中の矩形はパターン1単位を切り取るために使うので、残しておきます。

そしてパターン1単位を示す矩形(シェイプ)を、次のボタンを押して一番上に重なるようにします。この矩形をクリッピングパスとして使ってパターン1単位を切り出す(クリッピングする)ためです。

手順6:クリッピングしてパターンを切り出す
パターン1単位の部分を切り出します。
描いた模様とパターン1単位を示す矩形(一番上に重ねたもの)とを全部選択した状態で、オブジェクト > クリップ > クリップを設定メニューを操作します。そうすると境界線の矩形の外側は見えなくなります(つまりクリッピングされる)
(参考:クリッピングとマスキング)

手順7:パターンに登録する
このクリッピングした状態でオブジェクト > パターン > オブジェクトをパターンにメニューを操作します。
すると、次のようにクリッピングされた状態のままパターンに登録されます。

あとは好きなオブジェクトのフィルやストロークの塗りつぶしに使うことができます。

この例ではパターンとして紫と緑の矩形を描きましたが、それ以外の好きな模様を描いてもよいし、2種類でなく何種類も追加して描くことでもっと複雑なシームレスパターンを作ることもできそうです。
例えば同じ形の模様同士をずらしたり、パスをずらして描きそのセグメントの端がつながるように後から編集すれば、次のようなパターンになります。

