このページでは、Inkscapeで塗りつぶしに用いる組み込みパターンとは別にオリジナルのパターンを作った場合に、そのオリジナルパターンをフィル/ストロークダイアログのプルダウンメニューに追加していつでも選んで塗りつぶしに使えるようにする手順を紹介します。
(2023.11.08更新)
Inkscapeではキャンバス上で絵図を選択しておいてメニューからオブジェクト > パターン > オブジェクトをパターンにを操作すると、その絵図を塗りつぶしの単位とする新たなパターンをドキュメント中に登録して、そのドキュメントの中の各オブジェクトを塗りつぶすためにフィル/ストロークダイアログから利用することができるようになります。

その詳しい手順は「パターンを使って塗りつぶす」で紹介しています。
登録したオリジナルパターンは編集中のドキュメントの中にリソースとして格納されるので、そのドキュメントを編集している場合に限れば、そのオリジナルパターンで塗りつぶしたいオブジェクトを選択しフィル/ストロークダイアログ上でオリジナルパターンを選択することでいろんなオブジェクトをそのパターンで塗りつぶすことが可能です。
ただしこれだけでは同じ1つのドキュメントの中のオブジェクトに対してしか使うことができません。
そこでこのオリジナルパターンを組み込みパターンと同じようにInkscape自身に登録しておけば、どのドキュメントのどのオブジェクトに対してもいつでも利用することができるようになります。
以下ではドキュメント中に登録したオリジナルパターンを、さらにInkscape自身にも登録してInkscapeを起動するだけでフィル/ストロークダイアログに組み込みパターンと同じようにパターンの候補として表示させる手順を紹介します。
パターンを登録したドキュメントを保存
まずフィル/ストロークダイアログのパターンフィルの欄にオリジナルパターンを登録した状態のドキュメントをSVG形式ファイルとして保存します。登録の手順は「パターンを使って塗りつぶす」にすでにまとめてあります。
このときのファイル名はフィル/ストロークダイアログ上のパターンの種類を選ぶプルダウンメニューに表示させたい文字列にします。
例えば「オリジナルパターン.svg」というファイル名で保存すると、プルダウンメニューには「オリジナルパターン」というメニューが表示されます。
このファイルは中に含まれているパターンデータを取り出すためだけに用いられるので、キャンバス上のオブジェクトは全て削除してしまってから保存して構いません。
保存したファイルをパターン登録用のフォルダに置く
保存したSVG形式ファイルは特殊なフォルダに置く必要があります。ただしOSごとに確認するのは難しいので、Windows 10でしか試していません。他のOSでもファイルパス以外は共通の手順になってるだろうと思いますが。
特殊なフォルダとはInkscapeの環境設定ダイアログのシステムタブを開くと表示される、Inkscapeが自動的に読み込むファイルの置き場所(フォルダ)一覧のうち「ユーザーペイントサーバー」と書かれている欄のフォルダ、または、「Inkscapeデータ」と書かれている欄のフォルダ(の下の「inkscape\paint」の下)です。デフォルトでは「…\AppData\Roaming\inkscape\paint」などになっていると思います。

なお「ユーザーペイントサーバー」と書かれている欄のフォルダに置いた場合は自分しか利用できないオリジナルパターンになりますが、「Inkscapeデータ」と書かれているフォルダに置いた場合は複数のユーザで共同利用することができます。
(参考:ペイントサーバー)
Inkscapeを再起動するとそのファイル名と同じラベルのメニューがフィル/ストロークダイアログのプルダウンメニューに追加されます。

そしてこのプルダウンメニューに追加されているメニューを選ぶと、登録したオリジナルパターンがメニューとして表示されます。

オリジナルパターンに名前を付ける
これだけでもオリジナルパターンを使って自由に塗りつぶしを行うことは可能になりますが、メニューに表示されるパターン名は「pattern2」のように自動的に生成された意味のない名前になってしまいます。
そこで次のようにすればパターン名も自分で付けることができます。
パターンとして登録する前に、パターンにしたいオブジェクト群をグループ化して、オブジェクトのプロパティダイアログを表示し、「ラベル」と書かれている欄の文字列を好きなものに変えます。

この状態で改めてオブジェクトグループをパターンとして登録すると、次のようにダイアログ上のメニューのラベルも変わります。

色を変えられるパターンにする
ところで単純にオブジェクトをオリジナルパターンとして登録するだけでは、そのパターンを塗りつぶしに使ったときにパターンの色を変えようとしてもできません。登録したときのオブジェクトの色のままです。
一方フィル/ストロークダイアログには次のように設定済みのパターンの色を変更するボタンがあります。ほとんどの組み込みパターンの場合、パターンを設定した上でこのボタンを押すと色を選択する小さなダイアログが表示され、パターンの色を変更することができます。

このボタンは設定したパターンを構成するオブジェクトの中に色を変更できる部分がない場合はクリックしても何も起こりません(つまり色を変更することができません)。
オリジナルパターンの場合も色を変更できる部分を意図的に作ることでこのボタンを有効にして色を変更できるようにできます。そのためには次のような手順を実行します。
パターンとして登録する前に、色を変更できる部分にしたいところの色をフィル/ストロークダイアログの「?」ボタンを押して「未定義(アンセット)」に設定します。

「未定義(アンセット)」に設定するとキャンバス上では黒く表示されます。
この状態でパターンとして登録すると「未定義(アンセット)」部分は黒く表示されたままパターン一覧に表示されます。

このオリジナルパターンを別のオブジェクトに設定してから色変更ボタンを押すと、今度は色を指定する小さなダイアログが表示され、そこで選んだ色に変わります。当然ですがあらかじめ「未定義(アンセット)」に設定してある部分だけが選んだ色になります。

黒以外で変更できる色を付ける
あらかじめ書いておくと、以下の手順は組み込みパターンのデータの中身を勝手に観察した結果推測した手順なので、裏ワザと呼ぶべきです。Inkscapeの将来のバージョンでも使える手順かどうかは怪しいです。
さて、上ですでに書いたように、色を変更できるようにしたいところを「未定義(アンセット)」にすると、キャンバス上でもパターンのメニューの上でも「アンセット」にした部分が黒く表示されます。
これでは都合が悪い場合(例えば、そもそも固定で黒くした領域も含まれるパターンの場合や、黒以外のデフォルトの色でメニュー表示させたい場合)は、「アンセット」を設定しておいてパターンとして登録してSVG形式ファイルに保存し、さらにテキストエディタなどでSVG形式ファイルを直接編集することで、その「アンセット」部分のデフォルト色が黒以外の色で表示されるようになり、もちろんパターンを設定後にもその色を変更することができるようになります。
具体的には次のようにします。
パターンを登録したSVG形式ファイルをメモ帳のようなテキストエディタで開いて、オリジナルパターンを定義している要素(<pattern>)の中に次のように「style」属性を1行追加します。

この「style」属性に指定する色(この場合は#ff0000だから赤)が次のように「アンセット」設定部分のデフォルト色として表示されます。

このオリジナルパターンで何か1つオブジェクトを塗りつぶした後で、さらに色指定ダイアログを表示させてデフォルト色(この場合は赤)を他の色に変更することができます。
