このページでは、背景部分を透明にしたビットマップ画像(PNG画像)ファイルの作り方を考えてみようと思います。

- Contents
- エクスポート機能を使う
- 大まかな手順
- 実際にやってみた
(2024.01.12更新)
エクスポート機能を使う
Inkscapeにはキャンバス上で選択したオブジェクトをPNG画像ファイルに保存(エクスポート)する機能があります。(詳しくは「エクスポート機能」を)
この機能を使えば、キャンバスに描いたものの中から好きな部分を画像ファイルに保存して、例えばWebページに挿入することも簡単にできます。
また、エクスポート機能のデフォルト設定のもとでは保存される画像の背景部分(何も描かれていない領域)が自動的に透明になります。(設定を変えれば透明でない指定色で自動的に塗りつぶすこともできますが、それは別の話)
なお、オブジェクトが何も描かれていない領域は何も描かれていない背景として扱われますが、オブジェクトは描いてあるけれどその色に「不透明度0%」が設定されている領域も背景として扱われます。
大まかな手順
まず背景が透明な画像ファイル(PNGファイル)をエクスポートする大まかな手順をまとめます。
- 透明にしたいところには何も描かないか、または不透明度0%で塗る
- 画像ファイルに保存したいオブジェクトを選択する
- ファイル > エクスポートメニューでエクスポートダイアログを表示する
- 選択範囲タブを選択する
- 選択中のもののみエクスポートにチェックを入れる
- 保存先のファイル名とファイル形式(PNG)を指定してエクスポートボタンをクリックする
実際にやってみた
例として次のような絵を背景透明のPNG画像ファイルにエクスポートしてみます。

この例では文字の内側も透明背景化したいので、まず文字(テキスト)を選択してメニューからパス > オブジェクトをパスへを操作してパスオブジェクトに変換します。

パスオブジェクトに変換したので、キャンバスの下のステータスバーのところに選択しているのが「パス」であることが表示されています。変換する前なら「テキスト」と表示されるところです。
そして、青い円と文字部分を両方選択しておいてオブジェクト > クリップ > クリップを反転して設定を操作して、文字部分をくり抜いたような絵にします。これでくり抜かれたところも背景部分(すなわち何も描かれていない部分)になります。

この状態で次のようにファイル > エクスポートメニューでエクスポートダイアログを表示させ、エクスポートダイアログ上で選択範囲タブを選んでエクスポートボタンをクリックすると、エクスポートダイアログのプレビュー画面に表示されているように、ドキュメント全体ではなく選択しているオブジェクトの部分(すなわち選択範囲)だけをPNG画像ファイルに保存してくれます。

Webブラウザでこの画像ファイルを表示すると、次のようにちゃんと背景部分が透明になっていることが確認できます。

ただ、Inkscapeのキャンバス上では、透明な背景部分の向こうにキャンバスの色が透けて見えてます。(ページ枠の内側ではデフォルトで白、ページ枠の外側ではデフォルトで灰色)
ドキュメントのプロパティダイアログの表示タブで市松模様というチェックボックスにチェックを入れると、次のようにキャンバス全体に薄く市松模様が描かれるようになりますが、これはキャンバス自体とキャンバスとたまたま同じ色のオブジェクトとを見分けられるようにして、透明な背景部分か否かを分かりやすくするための機能で、市松模様を表示させるようにしたから背景部分が透明になるわけではありません。

実際に保存後の画像をキャンバスの色と異なる背景色の上に表示させたときの見た目がどうなるのかを確認するには、Inkscape上でエクスポート対象のオブジェクトの下に別のオブジェクトを重ねてみる必要があります。

これなら、例えば灰色の背景の上にエクスポートした画像を表示したときの見た目をInkscape上で確認することができます。
Inkscapeのキャンバス上では、透明部分の下に他のオブジェクトが重なっていない場合はキャンバスの色が透けて見えるだけなので、キャンバスの色をドキュメントのプロパティダイアログでどんな色に変更してもエクスポートされる画像の色は変わりません。画像ファイルへのエクスポートはスクリーンショットとは違うので、キャンバスの色はエクスポートの対象ではなく、描かれているオブジェクトの色だけがエクスポートされます。
ところで、この背景色を重ねて確認している状態で、先ほどと同じようにオブジェクトを選択してエクスポートを実行してみます。

そうすると、このエクスポートダイアログのプレビュー画面のところでも分かるように、選択したオブジェクトのバウンディングボックスの矩形の内側に描かれているものは全部画像ファイルに保存されてしまいます。保存した画像をWebブラウザで表示すると次のように余計な部分(背景確認用に重ねたオブジェクトの一部)も表示されてしまいます。

これを防ぐには、エクスポートダイアログでエクスポートを実行する前に、ダイアログの右のほうにある選択中のもののみエクスポートというチェックボックスをチェックしてからエクスポートを実行します。

そうすると次のように確認用に重ねたオブジェクトを無視してエクスポートしたいオブジェクト(選択してあるオブジェクト)だけが画像ファイルに保存され、Webブラウザでも期待通りに表示されます。
