EPS形式って何?
EPS形式データというのは、技術的な細かいことは理解していないのですが、SVG形式よりも微細な絵図を表現できるベクトルデータになっていて、ディスプレイ画面より解像度の高い印刷画面でも意図したとおりの形をきれいに表示することができるのだそうです。SVGよりも複雑な図形に対応したデータ要素が定義されていると言ってもいいのかもしれません。
ベクトルデータの形式としては元々PS形式データ(PostScript)というものがあって、そのPS形式データの種類の1つとして拡張された形式だそうです。
EPS(Encapsulated PostScript)という名前から、論文や記事の文章の中に埋め込む図面データの形式だと何となく思っていました。実際そういう使い方を前提としてデザインされた形式でもあるようです。
ただ、そういうイメージは少し昔のものになっていて、今は「印刷データの形式の1つ」という捉え方がされているようです。Web上の情報をざっくり読んだ感じでは、他の文書データに埋め込むためのものというよりは、EPS形式をサポートしているプリンタに直接送り込んで高精細な印刷を行わせるためのデータだという説明が多いです。
ちょっと前まではMicrosoftのWordなどにEPSファイルをインポートすることができたので、文書データに取り込む部品データのような使われ方もあったようですが、Wordのその機能がサポート対象外になったという経緯があって、現在ではEPSファイルを取り込んで編集するという流れはマイナーなものになっているように感じます。
EPS形式をデザインしたアドビ社のWebページでも、EPS形式はプリンタに送り込む直前に生成するデータであって、内容を編集したい場合はEPS形式ファイルを読み込んで編集するのではなく、IllustratorのAIファイルのような主要形式のファイルとして編集を行い、印刷しようとするときにそれをEPS形式に変換してエクスポートする、という手順が基本的な手順なのだと説明されています。
InkscapeとEPS形式との関係
Inkscapeでは標準機能としてEPS形式でのエクスポートがサポートされています。
Inkscapeを使ってSVG形式で編集と保存を繰り返し、完成したところで印刷用にEPS形式データとしてエクスポートするという作業手順になるかと思います。
想像ですが、EPS形式のほうがSVG形式よりも表現力が高い形式なので、Inkscapeで生成できるEPS形式データは、EPS形式として表現可能なあらゆるバリエーションの絵図のうちの一部分だけを描いたものにしかならないとも言えるのかもしれません。
一方、InkscapeのWindows版の標準機能ではEPS形式ファイルを読み込んで編集することはできません。(→「Inkscapeで読み書き可能なファイル形式」)
EPS形式が印刷する直前のデータであることからすると、直接編集することができないのも自然なことと言えなくもないですが、たまたま手元にEPS形式ファイルがあって(例えばダウンロードしたEPSファイルがあって)それを表示したり編集したりしたいときにInkscapeに読み込みたいと思うこともあると思います。
そこで、裏ワザ的にInkscapeのWindows版にEPS形式データを読み込むことができるようにする手順を試してみようということになるわけです。
なお、Linux版とMac版のInkscapeの場合は、標準機能としてEPS形式ファイルをキャンバス上にドロップするとインポートできるらしいですが、その環境が手元にないので試してはいません。
InkscapeにEPS形式を読み込めるようにする
WebでInkscapeのWindows版にEPS形式ファイルをインポートできるようにするには、次のようにします。
まず「GhostScript」という名前のフリーソフトをインストールします。
インポートしようとしているEPS形式ファイルを試しに表示だけしたい場合はインストールした「GhostScript」を起動して、表示されるウィンドウにそのEPS形式ファイルをドロップします。すると次のように「GhostScript」がEPS形式データを表示してくれます。
次に「GhostScript」のインストール先のフォルダをメモしておき、そのフォルダのパスをWindowsの環境変数「PATH」に追加で設定します。(この環境変数の設定操作は スタートメニュー→設定→システム→システムの詳細設定→詳細設定→環境変数→(変数PATHを選択してから)編集 の順に行います。)
なお、なぜそうするのかはわかりませんが、「GhostScript」のインストール先のフォルダの下の「lib」という下位フォルダと「bin」という下位フォルダを別々にPATH変数に設定するそうです。
PATH変数の設定が正しいかどうか確認したければ、コマンドプロンプトを起動して、次のようなコマンドが実行できるかどうかで確認できます。Inkscapeは「GhostScript」が提供する「ps2pdf.exe」というプログラムでEPS形式からPDFデータへの変換を行ってそれをインポートしているようなので、このコマンドが実行可能なようにPATH変数が設定されているかどうかを確認すればよさそうです。
PATH変数の設定ができたらInkscapeを起動して、キャンバス上にEPS形式ファイルをドロップすると、まずページの向きを自動的に調整するかを聞くダイアログが表示され(このダイアログの役割は分かってません)、それに答えると次にPDFファイルのインポート処理の設定をするためのダイアログが表示されます。
このダイアログで「OK」をクリックすると、ドロップしたEPS形式データを「GhostScript(のps2pdf.exe)」を使ってPDFデータに変換し、それをInkscapeにインポートしてくれます。
PDFデータのインポートはとても重い処理のようですごく時間がかかりますが、根気よく待っているとインポートされます。