このページでは、Inkscapeのパスエフェクトの1つである「セグメントを計測」の機能のうち、「投影(Projection)」と呼ばれる機能について紹介したいと思います。

(参考:パスエフェクト:セグメントを計測)
「セグメントを計測」というパスエフェクトには3つのグループ(タブ)に分けられているパラメータがあります。
「一般」タブと「オプション」タブに分けられているパラメータについては「セグメントを計測」のページのほうにまとめました。
もう1つ残った「投影」というタブのパラメータは特殊な機能に関するもので、詳しい説明なしではどんな機能なのかなかなか想像することは難しいです。

まずそもそも「投影」とはどんな機能を指すのかを(推測混じりではありますが)説明します。
通常、「セグメントを計測」エフェクトを適用すると、次のようにセグメントの長さ(ノード間の距離)が表示されるようになります。

この場合は3つのノード(と曲がった3本のセグメント)から成るパスなので、3つのノード間の長さ(すなわち距離)が表示されています。ノード間の直線距離なのでセグメントが曲がっていても関係ありません。
「投影」タブの一番上にある「投影を有効化」というチェックを入れると投影機能が働いて、上下方向の座標軸に投影(すなわち射影)したときのノードの座標値の差を距離として表示するようになります。別の言い方をすれば、パスを真横から眺めたときの隣り合ったノードの間の距離を表示するようになります。

あとは投影先の座標軸をどうするかとか、どの座標値を投影させるかをパラメータとして指定していきます。
パラメータの順番は「投影」タブのものとは少し前後します。
「距離」は投影後の距離表示をセグメントからどのぐらい離して描くかを指定します。デフォルトでは「20.0」とけっこう大きい値が指定されているので、パスのそばに表示させたければ小さい値に変更します。あまり大きいと距離表示を見失ってしまうので注意です。
「投影角度」は投影先の座標軸の角度を指定します。「0」だと垂直の軸に投影し、時計回りに軸の角度を指定します。例えば「120」を指定すると次のようになります。

「境界枠を計測」にチェックを入れると、パスのノード以外にバウンディングボックス(境界枠)のノード(4隅の点)も投影対象になります。

「境界枠のみ」にチェックを入れると、バウンディングボックスのノード(4隅の点)のみが投影対象になります。

「中心を追加」にチェックを入れるとパスの中心も投影対象になります。

「最大と最小のみ」にチェックを入れると、投影したノードのうち両端の間の距離だけが表示されます。
かなり変わった機能ですが「アイテムへリンク」というボタンもあります。

これはパス自身が持つノードやバウンディングボックス以外に、他のパスのノードも投影対象にするという機能です。言い換えればこのエフェクトを適用した対象のパスのノードだけでなくリンクした他のパスのノードもノード間距離の表示対象に加えようというものです。
まず、距離を表示させたいノードを持つパスを描きます。もちろん描いたあとで距離を表示させたい位置にノードを移動してもかまいません。

この例では両端に2つのノードを持つ(1本のセグメントを持つ)パスを追加で描きました。
そしてこのパスオブジェクトをクリップボードにコピーします。例えばCtrl-Cを押します。
次にエフェクトを適用したほうのパスを選択して「セグメントを計測」エフェクトのダイアログを表示させ「アイテムへリンク」ボタンを押します。

すると追加したパス(緑色のパス)の2つのノードが距離表示の対象に加わります。元のパスに3つのノードがあったので、全部で5つのノードが投影の対象になり、それらの間の4つの距離が表示されます。
こうすることで、エフェクトを適用したパス自身に含まれないノードも距離表示の対象として加えることができます。
ちなみに対象ノードを追加するための手順として「他のパスを描いてクリップボードにコピーする」という不思議な手順を踏むのはなぜかを考える必要はないと思います。Inkscapeの既存の機能で自由にキャンバス上の点を指定する操作としてたまたまその手順を選んだだけだと思うからです。
たくさんノードを持つパスへリンクすると、元のパスのいろんなところの距離を寸法線を使って描かせることができるようになります。

積み木みたいに積んだ物体の重なり具合を示す図を描きたい場合などに使うのかもしれないな、と想像してみたりしました。
