このページでは、Inkscapeのパスエフェクトの１つである「パワーストローク」についてまとめていきたいと思います。
（2024.06.07更新）
パワーストロークとは
通常のパスでは、ストロークの幅（太さ）については１つの値しか指定できないので、パス全体で同じ幅（太さ）にしかならないですが、パワーストロークというパスエフェクトを適用するとパスのストロークの側面にストロークの幅を変更するためのハンドルが表示されます。
このハンドルをドラッグすることでその位置でのパスの幅を変化させる（パスを太くしたり細くしたりする）ことができるようになります。
ハンドルとハンドルの間は指定した平滑化タイプ（後述）に従った線でつなぎ合わされます。
なお、幅を調整するためのハンドルはオリジナルパスのどちらか一方の側にしか表示されません。そしてハンドルをドラッグすることで一方の側の幅を広げたり縮めたりすると、オリジナルのパスの反対側も同じ距離で広がったり縮んだりします。
ハンドルを使った幅の調整
ノードツールを使ってパワーストロークを適用済みのオブジェクトを選択すると、オリジナルパスのノードなどのハンドルとは別に幅変更用のハンドル（◇）が表示されます。
このハンドルをドラッグするとオリジナルパスを中心にして両側に均等に広がるように幅が変化します。
幅変更用のハンドルは通常のパスのノードとは異なるので、ハンドルのハンドルの間をドラッグして変形することや、ハンドルの位置での曲がりをなめらかに変更することはできません。
より細かい間隔で幅を変更したいときはハンドルを追加します。追加するにはCtrlキーを押しながら既存のハンドルをクリックします。するとそのハンドルにぴったり重なるように新しいハンドルが生成されるので、ドラッグで移動します。逆にハンドルを削除したいときは、Ctrlキー＋Altキーを押しながら削除したいハンドルをクリックします。
複数のハンドルをまとめて追加したり削除したりすることはできないようです。
パワーストロークのスタイル
パワーストロークによってオリジナルパスから生成されたパス（幅の変化するストロークのように見えるパス）のスタイルがどうなっているかというと、生成されたパスのフィルはオリジナルパスのストロークのスタイル（ただし線種を除く）が設定され、生成されたパスのストロークは「塗りなし」に設定されます。
結果的にオリジナルパスのストロークが置き換わったように見えるというわけです。
パワーストロークのパラメータ
パワーストロークのパラメータをパスエフェクトダイアログ上で指定します。
平滑化タイプを選択するとハンドルの間をどのような曲線でつなぐか（すなわち補間するか）を切り替えることができます。
ただ、平滑化タイプのメニューに表示される方式（曲線の種類）の名前を見ても、どんな曲線になるのか、方式ごとにどのような違いがあるのかは分かりません。ネットで検索しても定義らしきものは出てきませんでした。
実際に切り替えながら試してみましたが、そんなに目立った変化はないので、どれを選ぶかはそれほど気にしなくてもいいのかもしれません。
なお、平滑化タイプとして「線形」という選択肢があります。これを指定するとハンドルの間が他の方式に比べてシンプルな曲線で補間されるようで、他の平滑化タイプに比べてなめらかなストロークにしやすいと感じます。
平滑化タイプとして「CubicBezierJohan」または「CubicBezierSmooth」を選ぶと、さらにその下の滑らかさを指定することができます。滑らかさを大きくするとハンドル間をより滑らかにつなぐようになります。
パスの始点の形状、終点の形状、連結の形状、継ぎ目の限界もダイアログで指定します。これらのパラメータは「先細ストローク」という別のパスエフェクトと同様のものです。
他にハンドルにジャンプしないというオプションとポイントの並び替えというオプションがあります。
ハンドルにジャンプしないの意味はネットで検索してもわかりませんでした。
ポイントの並び替えにチェックを入れておくと、ハンドルをドラッグし、オリジナルパスに沿って移動して隣のハンドルを追い越したときに自動的に追い越したハンドルと追い越されたハンドルを入れ替えてくれます。チェックを入れないと自動入れ替えが起こらないので、パスの縁が２つのハンドルの間でジグザグに曲がった状態になります。
形のきれいなストロークを描くには
パワーストロークの解説コンテンツの多くがストロークの幅を調整して上手にきれいな形のストロークに修正してみせてくれますが、どんな風にハンドルをドラッグすればきれいな形になるのか具体的に説明してくれていません。
実際にパワーストロークを適用して適当にハンドルをドラッグして幅を調整してみると、思った以上にでこぼこした形になってしまい、きれいな形になりません。
いろいろ試してみた結果わかってきたコツみたいなものをここにメモしておこうと思います。
- オリジナルのパスのノード付近にはハンドルを持っていかない。パスのノードのところも補間する曲線の制御点（曲線の形を決めるために使う点）として使われているらしく、ノード付近にハンドルを移動すると、ハンドルの位置の制御点とノードの位置の制御点が近くなりすぎて、補間される曲線が大きくゆがんでしまうことが多い。
- オリジナルのパスから離れた位置にハンドルを持っていかない。言い換えるとすごく太いストロークを描こうとしない。これも補間される曲線がゆがむ原因になるらしい。
- ハンドルを作りすぎない。