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Inkscapeのフィルター:透明部分の追い出し

 このページでは、Inkscapeの組み込みフィルタの1つである、透けている部分の色を固定化してくれるフィルタを紹介します。 

(2024.07.12更新)

 このフィルタを適用するには、プルダウンメニューで塗りつぶしと透明化 > 透明部分の追い出しを操作します。

 不透明度が「1.0」未満の色で塗られている領域は下の色が透けて見える(つまり2つの色が混ざって見える)わけです。下の色を取り換えれば(例えば下に重なっているオブジェクトを別の色のものに入れ替えれば)混ざった結果の色も変わります。透けて見えているのですから当然です。

 ところで、この透けて見えることを利用して、ある色とある色を混ぜた色を意図的に表示させる場合があります。その場合は意図した色になるように混ぜているので、他の関係ない色がたまたま下に重なってきてもそれはもう透けて見えてほしくない(混ざってほしくない)わけです。

 そこでこの「透明部分の追い出し」というフィルタを適用して、透けて見せることで色を混ぜた場合にその混ざった色を「固定」して、その後さらに別の色が下に重なってきてもその「固定」した混色のままで表示させるようにします。

 このフィルタを適用すると、その時点で混ぜ合わされている結果の色が「固定」されて、他の色が重なってもそれは透けて混ざらないようになります。

 例で示します。

 次のように少しづつ異なる不透明度を設定したオブジェクトを描きます。

 これを重ねると2つの重なっている不透明度に応じて変化するような混ざり方をします。

 この混ざった色を最終的な色として表示させたいとします。ところが不透明度を小さくして色を混ぜているので、この下に別の色を重ねると、次のようにその別の色も透けてしまいます。

 そこで、最初に重ねて色を作った段階で、その重ねたオブジェクト全体をグループ化し、そのグループに対して透明部分の追い出し」を適用します。すると最初に重ねた段階での混色が「固定」されるので、同じように別の色を下に重ねてもそちらは透けたようにならなくなります。

 ただし、この機能はフィルタとして実現されているので、オブジェクトのバウンディングボックス全体に効果が出てしまうという欠点があると思います。

 次のようにオブジェクトの外枠が矩形でない場合、このフィルタを適用してもオブジェクトとバウンディングボックスとの間の透明な領域も透けた色(すなわち「白」)に「固定」されてしまいます。外枠が矩形のオブジェクトに使ったときだけ効果が出るフィルタと言えるかもしれません。

 ちなみにフィルタの名前が「透明部分の追い出し」という分かりにくい日本語になっています。英語では「Flatten Transparency」となっており、直訳すれば「透明度の平坦化」だと思いますが、少しだけ意訳すると「透明度を展開する」(透明度の値を使った混色の計算をあらかじめ行って固定してしまう)という感じかと思います。「Flatten」という用語をどう解釈するかというはなしだと思いますが、そのあたりは「「Flatten」と呼ばれる機能について」のほうでもう少し書いています。

 さらにちなみに、Illustratorでは同様の英語名の機能は「透明部分を分割・統合」と訳されているようです。