このページでは、Inkscapeのバージョン1.4で追加された新しいツール「LPEツール」についてメモしていきたいと思います。

(2025.02.26更新)
LPEツールとは?
どんなツールかというと、LPE(ライブパスエフェクト)を適用した後のパスを直接入力できるようにしたツールです。
通常のパスエフェクトでは、まず適用対象のパスを描いて、次にパスエフェクトのダイアログを表示してそのなかから適用したいパスエフェクトを選ぶと、そのパスエフェクトでパスから変換された後の図形が表示される、という手順を踏みます。
これに対してLPEツールでは、適用対象のパスをあらかじめ描くのではなく、いきなりパスエフェクトによる変換後の図形を描きます。言い換えれば、各パスエフェクトを適用するための専用のオリジナルパスをパスエフェクトを適用する直前に描くためのツールとも言えそうです。
パスエフェクトの中には適用対象のオリジナルパスを変換後の図形の生成パラメータとして使うという側面が強いものがあります。例えば「3点による円」というパスエフェクトではオリジナルパスは「円が通る3つの点の位置を指定するためのもの」にすぎません。そんな場合はいちいちオリジナルパスを描くよりも、そのパスエフェクトが生成する図形の形を指定するためのパラメータを直接指定できるツールを作ってしまおうという発想なのだと思います。
LPEツールのアイコンのそばには次のように「幾何学的構成を行います」と表示されますが、「幾何学的構成」という妙な日本語は「生成される図形の形がオリジナルパスの形から幾何学的に決定されるタイプのパスエフェクト」という意味を込めたものなのだと思います。

そのため、LPEツールはすべてのパスエフェクトに使えるというわけではなく、生成される図形の形を幾何学的に指定するようなタイプの一部のパスエフェクトについてその適用後パスを描くことができます。LPEツールをツールバー上でクリックすると、ツールコントロールバーに次のような各パスエフェクトに対応したアイコンが並びます。

(他にもアイコンがありますが、LPEツールが開発途上にあるせいか機能がはっきりしないアイコンなので、ここでは一旦省略します。)
左から「直線セグメント」「3点による円」「円(中心と半径)」「パラレル」「垂直二等分線」「角の二等分線」「鏡映対称」の各パスエフェクトに対応します。以下、この順にどんな機能なのかをまとめていこうと思います。
直線セグメント
「直線セグメント」は2点を通る直線を生成するパスエフェクトです。
LPEツールで入力するには、直線に通ってほしいキャンバス上の2つの点をクリックします。

すると、ストロークのスタイルが「塗りなし」に設定されているオリジナルパスが生成され、さらにそのオリジナルパスの両端のノードを通る直線に変換されます。

「塗りなし」なのでとりあえず見えないですが、生成されたオリジナルパスの色を何か設定すれば、「直線セグメント」エフェクトが生成した直線が表示されます。

生成される直線はページ枠のところまで延びたものになります。
結果的に、キャンバス上で2個の点を指定することでその2点を通る直線を描いたことになります。
3点による円
「3点による円」は3点を通る正円を生成するパスエフェクトです。
LPEツールで入力するには、円に通ってほしいキャンバス上の3つの点をクリックします。

するとその3点を通る円が生成されます。

円(中心と半径)
「円(中心と半径)」は2点の一方を中心としてもう一方を通る正円を生成するパスエフェクトです。
LPEツールで入力するには、キャンバス上で中心の点→円周上の点の順でクリックします。

すると次のような位置に円が生成されます。

パラレル
「パラレル」は2点を通る直線に平行な直線を生成するパスエフェクトです。
LPEツールで入力するには、キャンバス上で2つの点を指定します。

すると、その2点を通る直線に平行な直線が生成され、かつ、その平行な直線を移動するハンドルも表示されます。

ただし、どういう具合かよくわかりませんが、指定した2点から大きく離れたところに平行線が生成されるようです。見失わないように注意する必要があります。上の例では左上の離れたところに表示された平行線をハンドルを使って移動してきています。
垂直二等分線
「垂直二等分線」は2点を通る線分の真ん中を通る垂直な線を生成するパスエフェクトです。
LPEツールで入力するには、キャンバス上で2つの点を指定します。すると、その2点を通る線分の垂直二等分線が生成されます。

角の二等分線
「角の二等分線」は1つの頂点(角)を通って、その角のちょうど真ん中を通る直線(二等分線)を生成するパスエフェクトです。
LPEツールで入力するには、キャンバス上の3つの点をクリックして、1つの頂点(角)を指定します。

すると、その角を通る垂直二等分線が生成されます。

鏡映対称
「鏡映対称」はペンツールと同じ要領で描いたパスに対して、その鏡像を追加するパスエフェクトです。
LPEツールで入力するには、キャンバス上でペンツールと同じ要領でパス(ベジエ曲線や折れ線)を描きます。

そしてこのパスの描画を終了する(例えばダブルクリックする)と、鏡像が生成されます。元のパスと鏡像の間には対称軸も表示されます。
対称軸には3つのハンドルがあって、上と下のハンドルをドラッグすると対称軸が回転され、真ん中のハンドルをドラッグすると対称軸が移動します。
なお「パラレル」と同じように、最初に生成される鏡像は大きく離れた位置になります。
どうやって使うのか?
LPEツールを使うと、すでに描かれているオブジェクトに対して、何かしらの幾何学的な関係にあるパスを追加することが簡単にできるようになります。
例えば次のようなパスがすでに描かれているとします。この角のところにぴったりハマる円を描くことを考えます。

「所定の中心点と半径の円を描く」のほうに書いたような手順など工夫をすれば描けなくもないですが、結構面倒な操作になってしまいます。
これに対してLPEツールを使うと、こうなります。
円を追加したいパスをロックしておいて、スナップの設定で「シャープノード」と「線の中間点」をスナップ対象にしてから、LPEツールの「円(中心と半径)」を使って次のように線の真ん中とどちらか一方の角を指定します。

そうすると、ちょうど2つの角にピッタリはまる円が生成されます。スタイル(色など)を適当に変更して、このままだとパスエフェクトによる変換結果が表示されているだけなので「パスに戻す」操作を行ってパスエフェクトの変換結果をパスオブジェクト化します。
