お絵描きソフトInkscape(インクスケープ)の使い方を初級レベルから上級レベルまで広く紹介しています。
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Inkscapeでうまく図形が入力できないのだが…

 Inkscapeの使い方に慣れていないとき、キャンバス上に図形(シェイプ、パス、テキスト)を描こうとしたが、思ったような図形が入力できない、ということがよく起こります。

 変なところが塗りつぶされていたり、ドラッグした位置より大きい図形になってしまったり、描いたはずのものが見えなかったり・・・。

 たいていの場合は操作ミスということではなく、Inkscapeのちょっとクセのある機能に慣れていないからだと思いますが、試行錯誤で何とかなる話でもないので、参考になるかもしれない情報をまとめてみました。

(2025.03.25更新)

 Inkscapeでシェイプ、パス、テキストを描くには、画面左端のツールバーでツールを選んで、キャンバス上でクリックしたりドラッグしたりするわけですが、ちゃんとその手順で操作したのに結果としてキャンバスに追加される図形(オブジェクト)が思っていたのと違ってしまうのには、ほんとにいろんな原因が考えられて、残念ながら「こうこういう原因があるから、こうこうすれば解決する」といえることはほぼ無いと思います。

 とはいえ、いくつか「持っていれば解決につなげられるような知識」があると思うので、以下にそれを列挙してみようと思います。

新規オブジェクトのスタイルは確認しにくい

 Inkscapeで図形(オブジェクト)を新たに描いたときに、そのオブジェクトの線の太さなどの「スタイル」がどうなるはずなのかはとても分かりにくいです。絵具で絵を描く様子から連想するとオブジェクトを描くには「ツールを選び→色や太さを指定し→キャンバス上でドラッグする」という手順で操作するのだろうと考えてしまいそうですが、Inkscapeはこの真ん中の「色や太さを指定する」ステップがありません。Inkscapeでは代わりにツールの種類(矩形ツールや星形ツールなど)ごとにあらかじめスタイルを設定しておくようになっていて、ツール自身が自分の描くオブジェクトのスタイル(「ツール独自のスタイル」と呼ばれている)として記憶しています。

 そしてそのツールが記憶しているスタイルを簡単に知る方法は提供されていません。これが混乱の原因のようにも思えます。

 何かツールを選択する(例えば矩形ツールを選択する)と画面の右上に「これから入力する新規オブジェクトの色と太さ」が小さく表示されます。

 でも、この小さな表示では分からないことも多いです。「白」と「透明」の区別がつかないし、点線のタイプ、角の丸め具合、多角形ツールの頂点の数など他のスタイルがどうなっているのかも表示されません。

 ぶっちゃけ、実際に入力してみないとどんなスタイルの図形が入力できるのかは分からない、というのが正直なところです。

新規オブジェクトのスタイルは設定しにくい

 とはいえ、ツールごとのツール独自のスタイルを設定しておけば、分かりやすい手順とはいえなくても思った通りの図形を描くことができるはずですが、このツール独自のスタイルを設定する手順がまたちょっと分かりにくくなってます。

 新規オブジェクトのスタイル(すなわちツール独自のスタイル)は他のオブジェクトから「拝借」することしかできません。

 具体的には「何か他の図形で最後に変更したスタイルを使う」か「現在選択中の他の図形のスタイルをツール独自のスタイルとして記憶する」かのどちらかをツールを使う前に環境設定画面で選んでおかないといけません。

 少し分かりにくくて間違いやすい設定手順になっていると思います。

 詳しくは「オブジェクトのスタイルを設定する」のページの「新規オブジェクト追加時のスタイル」というセクションに書いてあります。

フィルとストロークのスタイルのパラメータは共通

 オブジェクトには外側の縁にあたる「ストローク」と内側の塗りつぶし領域にあたる「フィル」とがあります。

 ストロークは「線」で、フィルは「面」なので、それぞれのスタイルのパラメータも互いに種類が全然違うはずだと思ってしまいそうですが、実際は共通部分があります。

 選択しているオブジェクトのフィルやストロークのスタイルは「フィル/ストローク」ダイアログで設定しますが、フィル用の設定画面(左)とストローク用の設定画面(右)はそっくりです。

 「フィル/ストローク」ダイアログには3つのタブがあって、「フィル」「ストロークの塗り」「ストロークのスタイル」という名前がついていますが、これは細かいことをいえば「フィルの塗りのスタイル」「ストロークの塗りのスタイル」「ストロークの塗り以外のスタイル」と呼ぶべきなのでしょうが、長くなるので省略されているようです。

 そして「フィル」と「ストロークの塗り」で設定できる項目は同じです。

 そのため、フィルとストロークのどっちのスタイルを設定しようとしているのか、どっちのスタイルが今現在どうなっているのか、混乱しやすいです。

 さらにフィルには設定できずストロークにだけ設定できるスタイルもあるので、ややこしいです。

テキストにもフィルとストロークがある

 「テキストは文字だろ?」と思ってしまいそうですが、テキストオブジェクトは文字の形をしたパスのようなものです。そのため、フィルもストロークもあります。

 テキストオブジェクトを入力しようとして、例えば他の矩形オブジェクトのストロークをすごく太く変更した直後に、テキストツールを選択して新しくテキストオブジェクトを追加すると、矩形オブジェクトと同じ太いストロークを使ったテキストオブジェクトが入力されてしまうことがあります。ストロークが太すぎて重なり合ってしまうために文字に見えません。

 テキストオブジェクトもパスオブジェクトと似たデータ構造であることを知っていれば、慌てることはなくなると思います。

透明にする方法がいくつもある

 オブジェクトのフィルやストロークを、赤や青のように透明でない(不透明な)色で塗るかわりに透明(または半透明)にしたい場合、その方法は1つではないです。そのため、オブジェクトのとある部分が透明なとき、それがなぜ透明なのかを知るのは少し面倒です。面倒ですが入力した図形が意図せずに透明に設定されているせいで見えなくなってしまっている場合は、なぜ透明なのかを調べて直さないといけません。

 透明にするには「フィルまたはストロークの色を透明にする(アルファチャネルを0%にする」「オブジェクト全体の不透明度を0%にする」「フィルまたはストロークを『塗りなし』にする」「オブジェクトを非表示にする」のどれかを実行します。どれを実行した結果透明になったのかが分かる情報はいろんなダイアログのあちこちにバラバラに表示されているので、確認して回るのは大変です(が、透明になっている理由を知りたければやるしかない)。

 「透明にするには不透明度を低くする」というややこしい説明になるので、いつもうっかり間違えないようにしてます。

 (参考:オブジェクトが見えなくなる理由

 (参考:不透明度についてのあれこれ

 (参考:オブジェクトの非表示とロック

ベジエ曲線(ベジエパス)が描きにくい

 ベジエパスはペンツールを使って描きます。どういうマウス操作で描くのかについて、多くの解説コンテンツでは「マウスボタンを押す→ドラッグする→マウスボタンを離す→マウスカーソルを移動する→マウスボタンを押す→以下繰り返し」という標準的な手順で描くものと説明されています。

 確かにそれがペンツールの基本的な使い方なのですが、これは案外難しい操作で、思ったような曲線になかなかなりません。

 個人的にはこの手順ではなくて、あまり紹介されていない手順ですが「ドラッグせずにクリックを繰り返すことで描く」手順をお薦めしたいところです。

 詳しいことは「ペンツールの操作手順の詳細」に書いてあります。