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Inkscapeのパスの「分割」「パスを分割」「分解」の違い

 このページでは、Inkscapeで可能な、パスを「分割」する操作、「パスを分割」する操作、パスを「分解」する操作にどのような違いがあるのかをまとめてみたいと思います。

 (参考:パスをつなぎ合わせる/切り離す

(2025.05.01更新)

パスを切り離す操作はいろいろ

 Inkscapeにはパスをバラバラに切り離す操作として「削除」「切断」「差分」「交差」「排他」「分割(F)」「分割(F)」「パスを分割」「分解」があります。(※メニューに「分割」と表示される機能が2つあるので、区別するために(V)(F)のようにメニューの横に表示されるショートカットキーごと書いています)

 特に「分割(F)」「分割(F)」「パスを分割」「分解」の4つは、日本語としても違いがまったくわかりません。

 そこで、この3つがどのように異なっているのかをまとめてみたいと思います。(それ以外の「削除」「切断」「差分」「交差」「排他」については、「パスをつなぎ合わせる/切り離す」にまとめてあります。)

「分割」と「パスを分割」の違い

 まず、結合されて1個のパスオブジェクトになっているサブパスをバラバラのパスオブジェクトにする操作には、大きく分解分割の2種類があります。

 そして、分割には、さらに「分割(V)分割(F)」と、「パスを分割」の2種類があります。

 「分割(V)分割(F)」と「パスを分割」の区別は簡単です。「分割(V)分割(F)」は、パスその1とパスその2の交点のところでパスを切り離して別々のパスに分裂させる機能です。一方、「パスを分割」は、1本のパスに含まれるサブパス同士が重なっていないときにそれらサブパスを別々の独立したパスに変換します。

「分割(V)」と「分割(F)」の違い

 「分割(V)」も「分割(F)」も2つのパスの交点のところでパスを切り離して別々のパスに分裂させる機能ですが、少し違います。

 「分割(V)」は一方のパスはカッターの役割をして、その交点のところでもう一方のパスを切り離します。カッターに使ったほうのパスは消えます。「分割(F)」はパスの交点のところで両方のパスを切り離します。

 「分割(V)」はパスを線として切り離しますが、「分割(F)」は面として切り離します。そのためか「分割(F)」を閉じていないパスに適用するとそのパスは消えてしまいます。

 「分割(V)」は分割対象にできるパスは1つだけなので、複数のパスを選択した状態で実行しても切り離されるのはそのうち1つのパスだけです。「分割(F)」は選択した複数のパスを互いに切り離すことができます。

 「分割(V)」は2つのサブパスを含むパスに対して実行しても何も起きません(カッター役のパスが無いから)が、「分割(F)」は複数のパスではなく2つのサブパスを含む1つのパスに対して実行しても同じように切り離してバラバラの閉じたパスにすることができます。

「分解」と「パスを分割」の違い

 問題は「分解」と「パスを分割」の違いです。

 「分解」は、パスオブジェクトを選択して、メニューからパス > 分解を操作します。すると、すべてのサブパスがバラバラの(独立した)パスオブジェクトになります。

 一方、「パスを分割」は、パスオブジェクトを選択して、メニューからパス > パスを分割を操作します。すると、重なっているサブパスはバラバラにならず、重なっていないサブパスのあいだでのみ切り分けられてバラバラのパスオブジェクトになります。すべてのサブパスはバラバラになりません。

 例えば、次のように、重なった4個のパスオブジェクトを描いて、それらを結合します。

 すると、全体が1つのパスオブジェクトになり、サブパスとサブパスに挟まれたところがフィルになるので、次のように「穴」の開いたようなパスオブジェクトになります。

 ここで「分解」操作を行えば、元のバラバラの4個のパスオブジェクトに戻るだけですが、「パスを分割」操作を行うと、次のように外側と内側のサブパスの「穴」の関係は維持したまま、左右の絵がバラバラの2個(4個ではない)のパスオブジェクトになります。