このページでは、Inkscapeを使ってフリーハンドのパスを描くための鉛筆ツールについて紹介します。
- Contents
- 鉛筆ツールの基本操作
- 描くパスの種類
- 曲線のなめらかさの設定
- ベジエパス作成モードの詳細
- スピロパス作成モードの詳細
- Bスプライン作成モードの詳細
- 線状ではないパスを描く
- 鉛筆ツールのよくわからないところ
(参考:パスを作成/編集)
(2024.01.10更新)
鉛筆ツールの基本操作
鉛筆ツールは、パス(ベジエパスやBスプライン)を作成するためのツールの1つです。マウスをドラッグすることで、フリーハンドで入力するように、ベジエパスなどを作成できます。
ツールバーで鉛筆ツールを選んで、好きな位置を開始点としてマウスをドラッグしてフリーハンドの軌跡(アウトラインであって、まだパスではない)を描いていき、最後まで描いてマウスのボタンを離すと、その軌跡を自動的にベジエパスやスピロパスに変換してくれます。

とても短いセグメントをたくさんつないだようなパスになるので分かりにくいですが、描いたものは通常のパスオブジェクト(例えばペンツールで描いたパスオブジェクト)と同じです。
ドラッグし始めた点に戻ってボタンを離すと、閉じたパスになります。
描くパスの種類
鉛筆ツールを選択した状態で、ツールコントロールバーの左端のアイコンでモードを選ぶと、それに応じた種類のパスが作成されます。
- ベジエパスを作成モードでは、ベジエ曲線をセグメントとして連結したパスが作成されます。
- スピロパスを作成モードでは、スピロスプラインのパスが作成されます。
- Bスプラインを作成モードでは、入力した折れ線に対するBスプライン曲線が作成されます。
これらのモードでどんな線が描かれるかは、「ペンツールでパスを描く」のほうに具体的に説明しています。
曲線のなめらかさの設定
ところが、鉛筆ツールはフリーハンドの軌跡をパスに変換するので、そのまま単純に変換したのでは、非常に細かく曲がりくねったパスに変換されてしまいます。
そのため、どのモードで描いても見た目にあまり違いが出ません。
そこで、ツールコントロールバーで、フリーハンドの軌跡をパスに変換する際にどのぐらいなめらかなパスに変換するかを指定するようになっています。
別の言い方をすれば、フリーハンドの軌跡にぴったり沿うような、短いセグメントを多数つないだ曲がりくねったパスを生成するのではなく、ツールコントロールバーで指定したパラメータに応じて、長めで数の少ないセグメントをつないだパス(すなわちなめらかなパス)に変換してくれます。
このような、セグメント数を減らしてなめらかにつながったパスにすることを「簡略化」と呼びます。鉛筆ツールは、ツールコントロールバーで指定した簡略化のパラメータを使って、フリーハンドで雑に入力しても、結果としてなめらかなベジエパスなどを作成してくれます。

なお、鉛筆ツールに限らずパス一般の場合でも、パス > 簡略化というメニューがあって簡略化の処理を行うことが可能ですが、このメニューと同じことを鉛筆ツールではフリーハンドで軌跡を入力した直後に自動的にやってしまうものと考えればわかりやすいです。
簡略化のパラメータとしてどんなものが指定可能なのかは、作成モードによって異なっているので、以下に作成モードごとに説明を加えたいと思います。
ベジエパス作成モードの詳細
ベジエパス作成モードでは、ツールコントロールバーは次のようになります。
左から、3つのモード切替ボタンがあり、その右に筆圧入力を使用ボタンがあります。これを押すと、Inkscapeをタブレットなどで使うときに、筆圧に応じた太さの線が引けるそうです(試してません)。
次に平滑化と書かれている数値があります。これは、フリーハンドで入力したアウトラインからどの程度のノードを自動的に間引いてなめらかな曲線にするかを指定するもので、「スムージング(簡略化)の適用量」と呼ばれ、ゼロから100までの値を指定します。100が最大でほぼ全てのノードが削除されます。
機能としては簡略化のパラメータなのですが、画面上では平滑化と表示しているのが少し不満(笑)です。
この値を指定してからマウスをドラッグすると、ドラッグ完了時にこの値に応じてノードが間引かれて、なめらかな曲線に変換されます。
ちなみに、どんなルールで間引き、「適用量」の値の大きさにどんな意味があるのかは解説コンテンツを見つけられていないので、わかりません。大きいほどなめらかになるのは確かなんですが。
平滑化の右側にぐにゃぐにゃした線が描かれているボタンがありますが、これはLPEベースのインタラクティブな簡略化ボタンだそうです。このトグルボタンを押しておくと、先に描いた曲線に対して「適用量」の値を後から変更することで、ノードの簡略化の具合をリアルタイムに変化させて調整することが可能になります。このトグルボタンを押さずに曲線を描くと、後から「適用量」を変更することはできません。
さて、次は少しややこしい話です。
LPEベースのインタラクティブな簡略化ボタンを押すと、ツールコントロールバーは次のように、さらに右側にもう1つボタンが増えます。
この下向きの矢印のようなアイコンのボタンは、LPE簡略化をパスに反映ボタンです。名前だけでは何のことやら分かりませんが、次のような機能です。鉛筆ツールで描いたベジエパスの内部の構造は、簡略化後も、ペンツールで描いたベジエパスと同じなのですが、インタラクティブな簡略化を行った場合だけ少し違います。インタラクティブな簡略化を行った場合は、単にノードを間引く簡略化を行っているのではなく、LPE(ライブパスエフェクト)として提供されている「簡略化」というエフェクトを適用することで簡略化が実現されています。パスエフェクトダイアログを表示してみると、自動的に「簡略化」エフェクトが適用されていることがわかります。インタラクティブに簡略化するために必要だったんでしょうか。そして「簡略化」エフェクトを適用したままでも見た目上は簡略化されているので問題ないといえば問題ないのですが、LPE適用でない通常の簡略化を行ったパスオブジェクトのほうが便利な場合もあるのでしょう。そんな場合はこのLPE簡略化をパスに反映ボタンを押すと、「簡略化」エフェクトが削除されて、簡略化後の、ノードが間引かれた通常の構造のパスに変換されます(つまり「反映」される)。「簡略化」エフェクトの細かいパラメータをダイアログ上で調整することはできなくなりますが、通常の簡略化を行ったパスと一緒の構造になるので、今後編集しやすくなるという面もありそうです。
スピロパス作成モードの詳細
スピロパス作成モードでは、ツールコントロールバーは次のようになります。
モード切替ボタンのすぐ右側に、LPE簡略化をパスに反映ボタンと同じアイコンのボタンが増えています(なんで同じデザインのアイコンにしたのだろう?)。このボタンの上にマウスカーソルを持ってくると、スピロまたはBスプラインLPEを平坦化という謎のメッセージが表示されるのですが、このメッセージではどんな機能のボタンなのかわかりません。英語版のメッセージでは「Flatten」と表示されるようです。解説コンテンツが見つからないのでこれは想像ですが、どうも「LPEを展開する」という意味らしいです。(詳しくは「「Flatten」と呼ばれる機能について」を)
実際にパスを入力してみると、スピロパス作成モードで入力したフリーハンドの線は、「Spiro Spline」という名前のLPE(ライブパスエフェクト)を適用することでスピロパスに変換されているようなのです。パスエフェクトダイアログを表示してみると、自動的に「Spiro Spline」エフェクトが適用されていることがわかります。そして、スピロまたはBスプラインLPEを平坦化ボタンを押すと、LPE簡略化をパスに反映ボタンと同じように、「Spiro Spline」エフェクトの適用結果としてスピロパス化されたものを通常のパスの構造に変換してくれるようです。同時に「Spiro Spline」エフェクトは削除されます。「Spiro Spline」エフェクトを適用しっぱなしでも見た目は一緒ですから、押すか押さないかは、どちらの構造のパスのほうが便利かで判断しろ、ということなのでしょうね。
Bスプライン作成モードの詳細
Bスプライン作成モードでは、ツールコントロールバーは次のようになります。
なぜか、LPEベースのインタラクティブな簡略化ボタンが消えます。
入力直後はスピロパスと同様に「Bスプライン」エフェクトが適用されている状態になっています。スピロまたはBスプラインLPEを平坦化ボタンを押せば、通常のパスの構造に変換できます。
線状ではないパスを描く
デフォルトでは、鉛筆ツールで新しくパスを作成すると、作成したパスに沿って同じ太さの線状のストロークが描かれますが、これを線状ではなく、パスに沿って他の形を描くようにすることができます。
鉛筆ツールを選択しているときのツールコントロールバーにシェイプというプルダウンメニューがあって、ここで選択した形を使って新規パスが描かれます。
なお、ペンツールのほうにも同様の機能があります。
ただ、鉛筆ツールはペンツールと違って描くパスが細かく曲がったものになるので、線状でない他の形をパスに沿って描いても、ごちゃごちゃした絵になるだけで、意図した見た目になることはまずなさそうなので、この機能を使うことはほとんどなさそうです。
細かいことは「ペンツールで図形をパスに沿わせる」のほうにまとめます。
鉛筆ツールのよくわからないところ
簡略化の量をどのように変えると、どんな曲線になるのかは、ほぼ予想できません。試行錯誤するしかないように思われます。
この辺はInkscape全体のいろんなパラメータに共通して言えることだと感じます。グラフィックスの勉強を本格的にやればわかるようになるのかもしれません。いいかげんな簡略化量を指定すると、描かれる曲線は少しもベジエ曲線ぽいものやスピロパスっぽいものになりません。いろいろ難しそうです。
また、LPEを使って簡略化した結果の曲線の見た目と、ボタン操作することで通常のパスに変換した後の曲線の見た目がほんの少し変化することがあります。理由はわかりません。