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Inkscapeのクリッピング/マスキング済みオブジェクトの選択

 このページでは、Inkscapeでクリッピング済み(マスキング済み)オブジェクトを選択する操作について紹介したいと思います。

 (参考:Inkscapeでクリッピングとマスキング

(2022.11.09更新)

はじめに

 クリッピング済み(マスキング済み)オブジェクトを選択する操作には少しクセがあります。

 まず、クリッピング済みオブジェクトの選択(マスキングの場合もほぼ同じ)には、クリップ後の一部分が隠れた状態のオブジェクトを選択状態にする場合と、クリップ前のオブジェクトの全体を選択状態にする場合があり、さらに、選択ツールを使って選択する場合と、ノードツールを使って選択する場合とで違いがあるということです。

 そのことを区別できていないと、クリッピング済みオブジェクトをクリックして選択したときに、ハンドルが表示される位置がコロコロと変わるように見えて、とまどうことがあります。

クリッピング直後の選択状態

 次のように大きなパスと小さなパスを描いて、小さなパスのほうをクリッピングパスとしてクリッピングを行ってみます。

 この2つのパスを両方選択しておいて、メニューからオブジェクト > クリップ > クリップを設定を操作すると、次のようにクリッピングされて、小さいパスの外側が隠れた状態になります。ここまではクリッピングの基本的な手順です。

 このとき、内側のクリッピングパスのほうを選択したかのようなハンドルが周囲に表示されていますが、実際はクリッピング済みオブジェクト全体を選択した状態です。だからこの状態でドラッグして移動したり拡縮したりすると、クリッピング対象のオブジェクトとクリッピングパスの両方を移動したり拡縮させることになります。

レイヤーで選択状態を確認

 ここで、レイヤーとオブジェクトダイアログを表示させて、どんな選択状態になっているかを確認してみると、次のようになっていることが分かります。


 「path17159」という名前で表示されているオブジェクトが、クリッピング対象のパスオブジェクト(上の例では大きいほうのパスオブジェクト)です。クリッピング対象のパスは「g17172」という名前のオブジェクトグループに似た謎のオブジェクトの下位オブジェクトになっています。よく見ると、アイコンのところに小さくハサミの絵が表示されています。これはクリッピングやマスキングを行ったときに自動的に挿入される特殊なオブジェクトで「マスクヘルパー」と呼ぶそうです)

 この画面からは、クリッピング済みオブジェクトをキャンバス上で選択すると、実際はこのマスクヘルパーのほうが選択状態になっていることがわかります。ハサミの絵が表示されているので、通常のオブジェクトグループではなくクリッピング用のマスクヘルパーであることが区別できます。(ちなみにクリッピングではなくマスキングのときはハサミではなく、覆面の絵になります。)

 オブジェクトの名前を説明上分かりやすくなるように書き直してみると、次のようになります。

ダイアログ上で選択を切り替え

 ここで、ダイアログ上でクリッピング対象の「path17159」のほうを選択すると、キャンバスの表示は次のようになります。

 この状態で移動したり拡縮したりすると、クリッピングパスはそのままで、クリッピング対象のパスのほうだけ変化します。

ノードツールで選択

 さらに、ノードツールを使って選択すると、次のようになります。

 クリッピング済みのパスオブジェクトを選択しているはずですが、クリッピング済みパスオブジェクト自体のアウトライン部分はクリッピングによって隠れているので、アウトライン上に存在するはずのパスのノードもクリッピングされてしまって表示されません。単に選択されていることを示す矩形の点線が表示されています。

 ここで、ツールコントロールバーにある、次のような選択オブジェクトのクリッピングパスを表示ボタンを押します。


 すると、クリッピング対象パスに替わって、クリッピングパスのほうのノードが表示されます。このノードをドラッグすると、クリッピングパスのほうだけ形を変更することができます。

 ここであらためてレイヤーとオブジェクトダイアログ上でパスオブジェクト(「path17159」)のほうを選択すると、クリッピング対象パスのほうのノードが表示されます。こちらをドラッグすると、クリッピング対象パスのほうだけ形を変更することができます。