このページでは、Inkscapeのスプレーツールについて紹介します。
(2025.03.10更新）
一般のペイントツールではスプレーツールと言えば、スプレー缶からスプレー塗料を吹き付ける動きを模したものですが、Inkscapeのスプレーツールは「オブジェクトをキャンバスに吹き付ける」というおもしろい動きをします。
スプレーツールを使って吹き付けたいオブジェクトを選択しておいて、続いてツールバー上でスプレーツールを選択すると、マウスカーソルを囲うように硬貨大（サイズ変更可）の円と、吹き付けるオブジェクトのアウトラインが表示されます。
その状態で、キャンバス上でマウスをドラッグすると吹き付けるオブジェクトと同じオブジェクト（すなわち分身）がばらまかれるように（スプレーしたかのように）追加されます。
ドラッグの代わりにクリックする（マウスを動かさずに同じ場所でマウスボタンを離す）と、その場所に１つだけオブジェクトが追加されるので、オブジェクトの分身を追加したい位置でクリックを繰り返せば意図した位置にだけ分身を追加していくこともできます。
スプレーツールを選択するとツールコントロールバーは次のような表示に切り替わります。
（１）先に選択しておいたオブジェクトをコピーしてばらまくモード
（２）先に選択しておいたオブジェクトのクローンを生成してばらまくモード（クローンなので先に選択しておいたオブジェクトを修正すると、ばらまかれたほうのオブジェクトも全部同じように修正されるようになる）
（３）（１）と同じようにばらまいたオブジェクトをさらに全部統合したパス（単一パス）にしてくれるモード（パスの統合の詳細については「パスをつなぎ合わせる／切り離す」を）
（４）先に選択しておいたオブジェクト（分身元のオブジェクト）から分身してばらまかれた他のオブジェクトを消すモード
（４）のモードが少しわかりにくいですが、新たに分身オブジェクトを追加する（１）～（３）の逆の動きで、１つの分身元から分身したオブジェクトの上をドラッグすると消えます。どの分身オブジェクトが消えるかは、どの分身元オブジェクトを選択した状態でドラッグしたかによります。スプレーツールでオブジェクトをばらまいた後でちょっとばらまき過ぎたオブジェクトを消すために使うモードだと考えればよさそうです。
さらに、ツールコントロールバーを操作して、ばらまきかた（範囲や数や回転など）を指定することもできます。
量は、一度にばらまくオブジェクトの量（スプレーの強さ？）を１～１００で指定し、回転は、ばらまくときに同時に行うオブジェクトの回転の最大角度を０～１００（１００は１８０度に相当）で指定し、サイズ変動は、ばらまくときに同時に行うサイズ変更の最大幅を０～１００（１００は元のサイズの２倍に相当）で指定し、散らばりは、円の中心から端に向かってどのような分布でばらまくかを１～１００（１００は端まで均等）で指定し、フォーカスは、ばらまき先を円の中心から端までのどこにするかを０～１００（１００は円の端に向かってばらまく）で指定します。
例えば、フォーカスを１００にして、散らばりを５０にすると、円の端に多く、円の中心では少なくなるようにばらまかれます。
この画面の例では、左端のオブジェクトを選択した状態で、スプレーツールを選択し、単一パスにしてくれるモードで、回転に１０を設定してドラッグしています。単一パスになっているので、オブジェクト同士がくっついたような絵になります。
不透明な領域に適用ボタンをオンにすると、キャンバス上にすでに描かれているオブジェクトの不透明な部分だけにばらまき、透明な領域に適用ボタンをオンにすると、その逆になります。マスキングテープを貼って、上からスプレーするようなイメージでしょうか。
色の間で重ならないボタンをオンにすると、キャンバス上の色と色との境界部分をまたぐような位置にはばらまかないようになります。
オブジェクトの重なりを防ぐボタンをオンにすると、ばらまくオブジェクト同士が重ならないようにばらまきます。
複数のオブジェクトを選択してスプレー
吹き付けたいオブジェクトとして複数のオブジェクトを同時に選択してからスプレーツールを使うこともできます。
その場合は、選択したオブジェクトの中からいずれか１つをランダムに選んでキャンバスに追加するということが繰り返されます。複数のオブジェクトをグループとして吹き付けるのかと勘違いしそうですが。
例えば円と星形とテキストの３つをまとめて選択しておいてスプレーツールを選び、キャンバス上をドラッグすると、３つのオブジェクトからランダムに選ばれたものの分身が追加されていきます。
キャンバス上をクリックした場合も、クリックするたびにその場所に３つのオブジェクトからランダムに選ばれたものの分身が追加されていきます。
複数のオブジェクトをスプレーする際に、ランダムに選ばれたものではなく意図して選んだオブジェクトを追加したい場合は、ちょっと不思議な動きですが「マウスの右ボタンを押す→マウスカーソルをほんのちょっとだけ動かす」という操作をすると、オブジェクトの追加は行われないままでオブジェクトのランダム選択だけが実行される（結果としてマウスカーソルのところに表示されるアウトラインが切り替わる）ので、追加したいオブジェクトが選択されるまで右ボタンを押してちょっと動かすということを繰り返し、追加したいオブジェクトのアウトラインが表示された時点で左ボタンをクリックします。
ただし、オブジェクトの選択は相変わらずランダムに行われるので、すごく運が悪ければ、何回右ボタンを押しても追加したいオブジェクトが一向に選ばれない（追加したくないオブジェクトのほうが選ばれ続けてしまう）なんてこともあるかもしれません。