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Inkscapeのシェイプビルダツールの細かい話

 このページでは、Inkscapeバージョン1.3で追加されたシェイプビルダツールについて、他の解説コンテンツでは見かけない細かい特徴を紹介したいと思います。

  (参考:シェイプビルダツール

(2023.08.11更新)

生成されるパスはどんなパス?

 まず、シェイプビルダツールで作ったパスはどんな構造になっているのか?という点です。 

※2023年11月にリリースされたInkscapeバージョン1.3.1ではここにメモしている事情(シェイプビルダツールが生成するパスはセグメントが多すぎること)は解消しています。

 例えば次のように複数の円を描いてシェイプビルダでその重なった領域だけ選択すると、次のように葉っぱ状の形のパスが生成されます。

 このとき生成されるパスの構造(アウトライン)はどうなっているのかをノードツールを使ってノードを表示させて確認してみました。

生成したパスのノード

 こんな風に元の円弧シェイプオブジェクトの構造とは全く異なる(が、その形はピッタリ一致している)、非常に多くの短いセグメントをつなぎ合わせたようなパスが生成されていることが分かります。そのためシェイプビルダで作ったパスにさらに編集を加えようとするときは、この構造を意識しておく必要があるかもしれません。

 なお、これではセグメントが多すぎて編集しにくいということで、鉛筆ツールで描いたフリーハンドのパスでも良くやるようにシェイプビルダで作ったパスに対して「簡略化の操作」を行ったところ、形は変えずにセグメントの数を減らすことも一応出来ましたが、シェイプビルダで作ったパスがどんなものであっても形を変えずに簡略化できるかどうかは分かりません。この例の場合、シェイプビルダで切り取る前のパスが「円」だったので「簡略化」しても形を変えずに済んだだけのようにも思われます。

どこで区切ってるのか?

 シェイプビルダツールでパスに変換される選択領域の端はどこで区切られているのかというと、ストロークのところではなくアウトラインのところということになります。ストロークの線の真ん中と言ってもいいかもしれません。

 試しにすごく太いストロークを設定したオブジェクトをシェイプビルダツールでバラバラにしてみると次のようになります(アウトラインの位置に区別できるように赤い線を引いてあります)。

 ストロークのところではなく、アウトラインのところで区切られていることが分かります。

生成したパスのスタイルは?

 同じスタイルのオブジェクトだけ選んでシェイプビルダツールを使ったときは、生成されるパスもそれと同じスタイルになるので問題ないですが、いろんなスタイルのオブジェクトを混ぜて選んだ状態でパスを生成するとどうなるのか?

 Inkscapeのリリースノートでは「the first object will determine the style of the result」とあります。どういうことかというと、シェイプビルダツールで編集しているとき(編集を開始する直前、ではない)に、最初に選択したオブジェクトのスタイルが生成されるパスのスタイルに自動的になるということらしいです。ドラッグで複数の領域を結合する際はドラッグを開始した位置のオブジェクト(つまり最初に選択したオブジェクト)のスタイルが使われ、1つの領域だけクリックで選択したときもそのオブジェクト(つまり「最初に」選択したオブジェクト)のスタイルが使われます。

 例えば次のようなスタイルがバラバラのオブジェクトを描いておいてシェイプビルダツールを使ってみます。

 まず左からドラッグして結合すると、ドラッグ開始位置の青い円のスタイルになります。

 真ん中のあたりからドラッグして結合すると、ドラッグ開始位置の赤い三角のパターンで埋めた円のスタイルになります。この場合ドラッグ開始位置のオブジェクトは一番上に重なっているオブジェクト(すなわち赤い三角のパターンで埋めた円)になりますが、シェイプビルダツールの編集画面では重なり具合が分かりにくいので注意が必要です。