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Inkscapeのページのマージンと塗り足し

 このページでは、Inkscapeバージョン1.3からサポートされた、ページごとマージン塗り足しの幅を指定する機能について紹介します。

(2024.09.02更新)

 ※バージョン1.3.2の時点でPDF出力の動作が修正されていることに気付いたので、それに合わせて一部修正しました。

マージン/塗り足しとは

 「マージン」は日本語で言えば「余白」のことで、元々は印刷する絵図の端のところの印刷が多少ズレても絵図がはみ出して切れてしまわないように設けたものらしいですが、ページ番号などの印刷領域として利用したりするのでレイアウト上の利点もあるそうです。

 「塗り足し」は英語で言えば「ページブリード」のことで、マージン(余白)と逆に、印刷したい紙の上下左右の端の外側に余分に絵図を描いておくことだそうです。なぜそんなことをするかというと、本格的な(?)印刷の場合、印刷対象の絵図を最終的に印刷したい紙のサイズよりも少し大きい紙に印刷してから上下左右の不要な部分を切り取る(すなわち裁ち落とし)という工程を踏むことで紙の端までぴったり印刷されたものにするそうなのですが、印刷対象の絵図が切り取る大きさピッタリだと、切り取る位置のずれのせいで切り取った後の紙の端に何も印刷されていない隙間ができてしまうからだそうです。あらかじめ「塗り足し」として少し大きめの絵図を描いておけば多少切り取る位置がずれても紙の端までぴったり印刷されたものにできるというわけです。

 どちらのパラメータもドローツールやペイントツールで絵図を作成するときに設定できる(ことが多い?)パラメータだそうです。

 紙の端のところをきれいに印刷したいようなときは適宜設定しておかないといけないパラメータのようですが、手元のプリンタで印刷するときにも関係するのかどうかは分かってません。印刷サービスサイトにデータをアップロードして印刷してもらうようなときはそれなりのパラメータを設定した状態でデータを作成する必要がありそうです。

 ざっと調べてみると、印刷サービスではマージンと塗り足しをどちらも「3mm」に設定するよう奨めることが多いようです。紙の端を切り取る機械の精度として業界標準の値なのでしょうか?

 また、切り取る位置を印刷担当者に伝えるための「トンボ」と呼ばれるマークを描くことも奨められているようです。詳しくは「トンボの描き方」を。

 そして、ここからはInkscapeの場合これらのパラメータをどのように設定し、その結果どんなことが起こるのかという話です。

マージン/塗り足しの幅の効果

 Inkscapeでは、マージンの大きさや塗り足しの幅をゼロより大きく設定すると、キャンバスのページ枠のそばにマージンの大きさや塗り足しの幅を示す細い線が現れます。

 ページ枠から内側の青い線までがマージンで外側の赤い線までが塗り足しです。

 マージンの線はスナップダイアログ上で次のように設定するとスナップ対象(スナップ先)とすることができるので、マージンの位置にぴったりとオブジェクトを描くことが簡単にできます。(参考:スナップ機能

 「ページマージン」のほうだけ有効にすれば良さそうに思ったのですが、バージョン1.3.2で試したところ「ページ境界」の方も有効にしておかないとスナップできるようになりませんでした。(正確に言えばマージンの線の角のところにしかスナップしてくれない)

 また、塗り足しの線のほうはさらに「境界枠」の「角」のスナップも有効にします。リリースノートを読むと「ページ境界」を有効にすれば良いかのように書いてあるのですが・・・。

 なお、マージンや塗り足しの線を無視した位置にオブジェクトを描くことも可能です。そもそもこれらの線は「この線に合わせてオブジェクトを描けば、指定したマージンや塗り足しの幅に沿って描くことになるよ」という目安として表示されているだけで、自動的にこの線に合わせたレイアウトにしてくれるというようなものではないようです。

 塗り足しをゼロより大きく設定したドキュメントをPDFファイルにエクスポートすると、「ページツール」で設定したページの縦横の長さよりも塗り足しの分だけ大きいサイズのPDFドキュメントとして保存されます。

 実はやってみたところ塗り足しの分よりもほんの少し(0.3mmとか)大きいPDFドキュメントになりましたが、原因は分かりません。塗り足しを付けなければぴったり210mm x 297mmのPDFドキュメントになるし、塗り足しを付けた上で塗り足しちょうどぴったりのところにオブジェクトを描いてからPDFドキュメントにして64倍まで拡大して見てもずれているように見えないので、どういうことなのか気になるところではあります。

マージンの設定方法

 ツールバー上でページツールを選択し、さらにいずれかのページ枠を選択しておいてからツールコントロールバーでマージンの大きさを指定します。

  (参考:ページツール(複数のページを作る)

 ツールコントロールバーに直接「20mm」のように指定することもできますが、その入力欄の左端にある「矢印が2つ向かい合って並んでいるアイコン」のところをクリックすると、ページ枠の上下左右それぞれを独立に指定できるダイアログが表示されます。

 例えばここで数値を入力してリターンキーを押せばそのマージンが反映されます。

 また、選択したページ枠の周囲には次のようにページ枠それ自体を拡縮するハンドル(□)とともに、マージンを設定するためのハンドル(〇)も表示されるので、これをドラッグしてもマージンを設定することができます。

塗り足しの幅の設定方法

 塗り足しの幅にはマージンのように上下左右を指定したり、ハンドルをドラッグしたりして設定する画面がありません。

 上に示した、マージンの上下左右を指定する画面の下半分に「ページブリード(page bleed、すなわち塗り足し)」と書かれた入力欄があるので、ここに幅の値を直接指定します。

上下左右を直接指定する方法

 マージンや塗り足しの幅の数値を直接入力する欄は通常は上下左右4方向に共通の値を指定しますが、2つや3つや4つの値を入力することで上下左右の値を異なるものにすることもできます。(このあたりはスタイルシートのパラメータを指定するときの形式に似ています)

 「10mm 20mm」のように2つの値をスペースで区切って入力すると、上と下の幅を10mmにして、左と右の幅を20mmにしろ、という指定になります。

 「10mm 20mm 30mm」のように3つの値をスペースで区切って入力すると、上の幅を10mmにして、左と右の幅を20mmにして、下の幅を30mmにしろ、という指定になります。

 「3mm 5mm 7mm 10mm」のように4つの値をスペースで区切って入力すると、順に、上の幅、右の幅、下の幅、左の幅を指定したことになります。