このページでは、Inkscapeを使ってテンプレートのように一部分の文字列を差し替える方法を考えてみたいと思います。
(2024.10.11更新)
次のような日付を含むテキストオブジェクトが描かれた(しかも複数個所に描かれている)ドキュメントを作ったとします。

この日付の文字だけ後から別の日付にまとめて変更できるようにしてテンプレートデータのように使いたい場合を考えます。
単純に考えるとInkscapeには文字列の検索と別の文字列への置換をしてくれる機能がある(参考:オブジェクトを検索/置換する)ので、これを使って「10日」を「11日」に変更すれば良さそうです。ただ、この例ではたまたま「日」の部分まで含めて検索できるのでこれでうまくいきますが、「10」のところだけ置換しなければならないケースで次のように検索/置換ダイアログに入力すると…。

「10」という文字列にヒットしたところは全部「11」に置換されてしまいます。Inkscapeはヒットした文字列のうち一部だけを置換対象に選ぶ機能がない(「すべて置換」というボタンしか無い)らしいのでこういうことになります。

そこで、置換機能に頼らずに1回の置換で決まった箇所の文字列だけ置換できるように「クローン」を使ってみます。
「クローン」を使えば、クローン元のテキストオブジェクトの文字列を編集するとその結果はクローン先のテキストオブジェクトにも一斉に継承されるので、後で変更することがあらかじめわかっているテキストオブジェクトをクローンとして作っておくとクローン元の文字列だけを変更すればまとめて置換することができるようになります。
まず月と日で別々にテキストオブジェクトを描き、ページ枠の外側に置きます。

そして、それぞれのクローンを作って、これらはキャンバス上に置きます。

そのクローンの下に適当な色を付けた矩形を描きます。重ねたときに元の文字列が見えてしまうのを防ぐためです。

このクローンを背景の矩形ごと最初のテキストオブジェクトの対応する場所に重ねます。

この状態で、ページ枠の外側にいるクローン元オブジェクトの文字列を変更すると、クローンのほうも同じ文字列に変化します。この例では「日」に当たるほうのテキストを「10」から「11」に変更するとクローンのほうも青いほうのテキストオブジェクトだけ「11」に変化します。

あとは一斉に変更したい文字列をすべて1つのテキストオブジェクトのクローンとして生成してドキュメント上に配置すれば、クローン元を変更するだけで一斉に置換することができるようになります。