このページでは、Inkscapeで描いた複数のオブジェクトを関連付けることで、いつでもまとめて選択できるようにする方法を考えてみたいと思います。
複数のオブジェクトをまとめて選択するには、シフトキーを押しながらクリックしたり、ラバーバンドの線で囲ったりする方法がありますが(→「オブジェクトの選択操作」)、繰り返し選択したいときやオブジェクトの数が多いときは手間がかかります。
一方で、オブジェクトグループにしておけばグループ単位で選択することができるようになりますが、1つのオブジェクトは1つのグループにしか含めることができないし、複数のレイヤにばらばらに存在するオブジェクトをグループ化することもできません。
例えば次のように2つのレイヤのそれぞれに2つずつオブジェクトが配置されているとします。

2つのレイヤから1つずつオブジェクトを選択して・・・

グループ化すると次のようになります。

「円3」はLayer2にあったのに、グループ化すると「円2」と合体されてLayer1のほうに移動することになります。当然ですが、この状態でグループを解除しても「円3」はLayer2に戻ることなく、「円2」と同じLayer1に残ります。

これはこれで不便な場合も多くて、何らかの関連があるオブジェクト同士をまとめて選択できるようにしたいけれど、各オブジェクトの配置(例えば属するレイヤ)は変えたくないときはどうすればいいのか?
まず思いつくのは、各オブジェクトには「ラベル」や「タイトル」という任意の文字列を設定できるプロパティがあるので、ここに共通のキーワードを設定しておけば、そのキーワードで検索することでいつでもまとめて選択することができるのではないか?ということですが、1つのキーワードを複数のオブジェクトにまとめて設定する機能はないようです。だからといって、オブジェクト1つ1つに手でキーワードを設定して回るのも大変です。
そこで裏ワザというべきなのでしょうが、Inkscapeの「グループに属性を付加」というエクステンションを使って複数のオブジェクトに一気に同じキーワードを埋め込むことを考えてみました。
「グループに属性を付加」エクステンションはメニューでエクステンション > スタイル > グループに属性を付加を操作すると起動されます。日本語の名前ではわかりにくいですがこれは英語では「Interpolate Attribute in a Group」というもので、「複数のオブジェクトの属性を補完」と訳したほうが意味が近いです。どういうエクステンションかというと、複数のオブジェクトを選択しておいて、属性名と「最初の値」「最後の値」を指定して適用すると、その属性に「最初の値」から「最後の値」まで徐々に変化させた値を自動的に設定してくれるというものです。少しずつ色の変わるオブジェクト群にしたいときなどに使います。
このエクステンションを流用して、独自の属性名を指定して、なんでもいいので適当な「最初の値」「最後の値」を指定して適用すると、選択しておいた複数のオブジェクトに同じ名前の属性を挿入することができるので、同じキーワードを埋め込むのと同じ効果が得られると考えたわけです。
さきほどと同じように「円2」と「円3」を選択しておいてこのエクステンションを起動してダイアログを表示させ、例えば次のようにパラメータを指定して適用ボタンをクリックします。

「その他の属性」のところに自分で決めたキーワードを指定します。日本語文字はエクステンションが対応していないので使えませんでした。開始値と終了値は適当な値を指定しておきます。
適用した後のSVGデータの中身をXMLエディタで確認してみると、独自に指定した属性名の属性(groupX)が追加されていることがわかります。

この状態でオブジェクトを検索します。(詳しくは「オブジェクトを検索/置換する」を)

そうすると、独自属性を追加したオブジェクトが(その属性値には無関係に)まとめて選択されます。

独自属性はいくつも追加することができそうなので、まとめて選択したいときの目的に応じてあらかじめ決めておいたキーワードの属性を追加しておけば、各オブジェクトの配置を変えずに、まるで複数のグループにまとまっているかのような効果があると思います。
ただしあくまでも裏技なのでいろいろ問題もありそうです。例えば一度追加した独自属性をまとめて削除することはできないと思います。