「Affinity Designer」というInkscapeと同じドローツールに分類されるソフトがあります。

Serif Europe社の製品で有料ですが「買い取り」形式になっていて初期費用だけで済むのがウリの1つになっているようですし、単独のベンダが作っているので品質も安定しているという意見を目にします。
そこで、Inkscapeの機能をほぼ調べ終わったことですし、この「Affinity Designer」についてもいろいろ勉強してみて、Inkscapeとどんな違いがあるのかをまとめていってみようかと考えました。
(2025.01.20更新)
現時点での感想など・・・
ざっとまとめると、
- 機能の多さ、操作のしやすさは、一長一短あってどちらがいいとも言えない。
- 解説コンテンツ(ヘルプ、チュートリアル)はAffinity Designerのほうが充実しているが、内容はわかりやすくはなく、純正の解説コンテンツであるという安心感と、意味のつかみにくい用語の多用から起こる混乱とで、こちらも一長一短。
- ネット上に具体的なノウハウを紹介してくれるコンテンツがあまり見つからなくて、どんな絵が描けるのか把握しにくい。
といったところ。
以下、Affinity Designerのヘルプを順番に読みながらちょっと使ってみて、まだ全体をカバーできている状態ではないですが、とりあえずの感想をつらつらと書いてみます。
一言でいえば、Inkscapeのほうがオープンソースソフトであるがゆえに品質がちょっと低かったり、解説コンテンツが揃ってないということを除くと、Inkscapeに比べてAffinity Designerのほうが特に使いやすいということはないという印象です。
InkscapeはGUIが使いにくいと思うことが多いですが、Affinity Designerもその点では一長一短があって全体としてみれば言うほど差はないなと思います。Affinity Designerも使いにくい機能は使いにくいです(笑)。そもそもお絵描きツールはいろんな機能を盛り込んだものになりがちで、InkscapeであってもAffinity Designerであっても1つ1つの機能がどんな効果を発揮するものなのかを理解するだけでも大変なことが多くて、GUIを多少工夫したぐらいでは使いやすいと感じさせるのは本質的に難しいのだろうと思います。
結局、入門レベルの「さわり」の紹介で終わらない、より実用的な機能をわかりやすく説明してくれるコンテンツがあるのかどうかが「使いにくい」と感じることに直結しているように思います。
Affinity Designerのほうは確かに純正の解説コンテンツの量は多いですが、独特な言い回しや用語もたくさん出てきて、一通りの用語を頭に入れないといけないのは当然としても、用語の不統一感も大きく、それを補足してくれる説明もなかったりして、混乱しがちです。意味を知らない用語が出てきたときにヘルプ上の検索ではその説明部分がヒットしないことが多いのも気になります。その点はInkscapeが標準規格である「SVG」の用語や概念をそのまま実現したものになっているので統一感があってわかりやすいと感じます。
特にAffinity Designerはビュー上の図形のことを「オブジェクト」と呼んだり「レイヤ」と呼んだりしていて、「レイヤ(層)」という言葉の普通の意味と違うので、登場する「レイヤ」という用語が「層」を指しているのか「オブジェクト」を指しているのかを文脈から読み取らないといけないという面倒があります。
ほんとに些細なことでも、Inkscapeなら簡単にできるのにAffinity Designerではどうやったらいいのか分からない、なんてこともすでにたくさん見つかっています。
Affinity Designerのほうが動作が軽いという声もよく見かけますが、Windows版で比べてみると、そうでもなくてどっこいどっこいだと思います。テキストの入力に限ればInkscapeのほうが動作はとても重いですが。Affinity Designerでは例えばパスの変形時に描画がかなりガクガクします。
「InkscapeとAffinity Designerとどちらがいいですか?」ともし聞かれたら、「やりたいことを上から3つぐらい挙げて、それが全部できるか否かで選ぶのがよさそう」と答えてみたいです。個人的には「画像のエッジを抽出してくれるトレース機能」があるという点だけでもInkscapeを使い続けるだろうと思っています。
Affinity Designerの良さそうなところ
なんといってもうれしいのが、日本語の純正マニュアル(ヘルプ)があることです。さすが有料の製品です。Inkscapeには英語のものも無いので(笑)。これを順番に読んでいけばAffinity Designerにどんな機能があるのかを網羅できる(マスターできるかどうかは別)ような予感がします。Inkscapeにはそういう全機能を網羅している純正マニュアルが無いので、やりたいことがInkscapeでできるのかどうかを判断したくても自分で情報収集しまくらないといけないのが課題だと思います。実はInkscapeでも実行可能な操作があるのに解説コンテンツがすぐ見つからないというだけの理由で「Inkscapeでは出来ない」と思われていることも多いと思います。
Affinity Designerの図形入力ツールは種類が多くて、矢印ツールやドーナツツールがあるのもうれしいです。Inkscapeはこういう「良く描くであろう基本図形」のサポートが少し弱い・・・。
これは当たり前かもしれませんが、CMYKモデルの色情報をファイルに出力できるらしいのは大きいです。(本当?試してみたけどうまくいかないので、詳しくは後述。)
というわけで、ここからはAffinity Designerのヘルプにのんびりと目を通しながら分かったことを順番にメモ書きしていって、そのうち適当なタイミングで整理してみたいと思います。
とりあえずメモ
解説コンテンツ
Designerのメニューから表示されるヘルプ画面は複数画面に分けて表示させることができないので、Web版を読むほうが楽です(「新しいウィンドウで開く」などが可能なので)。
ほかにもヘルプメニューからジャンプできるところに多くの解説動画が提供されていますが、字幕を読まないといけないのでなかなか大変そうです。
全体像
Affinity Designerではベクタデータもラスタデータ(ビットマップ画像)も描けます。どちらを描くかはモード(「ペルソナ」と呼ばれる)で変わります。ベクタデータは「デザイナーペルソナ」、ラスタデータは「ピクセルペルソナ」に切り替えて描きます。Inkscapeはラスタデータはビットマップオブジェクトとして表示するだけで、ペイント編集は外部アプリケーションを呼び出すことで代わりにやってもらってましたが、Affinity Designerは自分の中にその機能があるんですね。
画面のメインの領域は「ドキュメントビュー」と呼ばれ、ここに描画対象の「アートボード」という四角い領域を定義して、その中にお絵描きします。「アートボード」はInkscapeでいうところの「ページ」に当たると思います。新規ドキュメントを作成するときのダイアログ上で1個目のアートボードも併せて生成するかどうかを選ぶことができます。(デフォルトではアートボードなしのドキュメントになるようです)
ファイル
絵を描いて独自形式のファイル(afdesignファイル)を読み書きします。Inkscapeでいうところの「Inkscape SVG」ファイルに当たるものです。
開いているファイルの中身はInkscapeと同じように「ドキュメント」と呼ばれます。「ドキュメント」の上の階層に「プロジェクト」という概念があるようなのですが、具体的にどのような機能なのか分かってません。
ドキュメント
サイズを指定したり変更したり、変更した結果を再利用できるように登録できるらしい。
オブジェクト
Inkscapeのパスに当たる図形は「ライン」「カーブ」「シェイプ」と呼ばれます。「カーブ」は複数のノードをつないだもので、ノード間を「セグメント」といいます。これはInkscapeと同じです。特に2個しかノードのない「カーブ」のことを「ライン」と呼び分けます。この細かい呼び分けにどういう意味があるのかはわかってません。
ノードには3種類があって、「シャープ」「スムーズ」「スマート」です。「スムーズ」と「スマート」の区別はよくわかりません。「スマート」は最適にフィットするラインになると説明されていますが、漠然としています。Designerのヘルプでの説明はこういう漠然とした表現が多いので、結局どういう機能なのか分かりにくいと感じます。
「シェイプ」は閉じたパスだそうです。Inkscape(つまりSVG形式)のシェイプとは全然違う意味です。閉じていないパスの両端をつなぎ合わせるとシェイプになります。
さらに矩形や楕円などのような典型的な図形を「幾何学的シェイプ」と呼びます。Inkscapeに比べて多くのタイプの「幾何学的シェイプ」をツールを使って入力できますが、いわゆる扇形のことを「セグメント」と呼んでいたりして、シェイプごとの特徴が分かりにくいです。ツールのメニュー構造も、「角丸長方形ツール」の下位ツールに「ハート型ツール」があったりして、うまく整理されていないように感じます。
境界線(Inkscapeのストローク)の色以外のスタイルは「境界線」というパネルで設定します。境界線の色は「カラー」というパネルで設定します。塗りつぶし(Inkscapeのフィル)は「塗りつぶし」というパネルが無いので混乱しますが、「カラー」(や他の)パネルで設定します。
テキスト
テキストには「アーティスティックテキスト」「フレームテキスト」「パス上のテキスト」「シェイプテキスト」といった種類があります。Inkscapeではテキストオブジェクトの属性に対して沿わせるパスを加えたり流し込むパスを加えたりしていますが、Designerでは最初から種類の異なるテキストとして処理されるようです。テキストをオブジェクトとして拡縮しようとしたときに字形が拡縮されるのが「アーティステックテキスト」で、テキストの入力枠が拡縮されるのが「フレームテキスト」だと理解してしまえば簡単ですが、「アーティスティックテキスト」にも文字列の大きさに合わせたフレームが存在するので、区別しにくい種類名になってると感じます。
「フレームテキスト」を「アイティステックテキスト」に変換できますが、なぜか「アートテキストに変換」というメニューになっていて、呼び名も違うし、なぜか「レイヤー」メニューの下にあります。
Affinity Designerは縦書きのテキストをサポートしてない、という説明をよくみかけますが、幅が1文字分のテキストを描けば縦書きみたいになるんじゃないかと思いましたが、縦書きってそういうことじゃないのかもしれません。
任意のパスにテキストを沿わせるのは、テキストの曲げ方を設定するのではなく、パスのタイプを「パステキスト」に変更することで実現しているようです。その変更は「テキストパスに変換」というメニューで行いますがなぜか「レイヤー」メニューの下にあります。「レイヤー」メニューの役割が分かりません。「パステキスト」なのか「テキストパス」なのかも統一してほしいです。
色/カラーモデル
Affinity DesignerはCMYKに対応しているという情報があるので、試してみました。ヘルプやそれ以外の解説コンテンツにも書いてあるように「ドキュメント設定」でカラーフォーマットとして「CMYK/8」を選択して、パネル上でCMYKの値で色を設定し、SVGファイルとPDFファイルにエクスポートしてみました。
しかしどちらのファイルもカラーモデルはsRGBが使われていました(つまりsRGBの値が保存されていた)。
Affinity Designerの画面上では確かにCMYKで設定できてCMYKっぽい色で表示されるようになっていますが、ファイルに出力するとsRGB値に変換された値になるようですが、何か間違っているのでしょうか。「CMYKに対応している」というからにはファイルの中にCMYK値を保存してほしいのですが。現実には保存したSVGファイルをWebブラウザで表示させてみたらAffinity Designerの画面上で指定したCMYK値の色とほぼ同じ色で表示されたので、意図した色が保存されているという意味では問題ないのかもしれません。
試しにJPEGファイルにエクスポートしたらこちらはCMYK値で保存されました。
一部のファイル形式ではCMYK値の色とほぼ同じRGB値で保存されている(そして印刷しても違いが出にくいので気づかない?)ことは知っておいてもいいかもしれません。
そして、もしAffinity DesignerのCMYK対応がこういうことなのであれば、InkscapeでCMYKを扱う場合とそんなに違いはないような気もします。Inkscapeの場合はCMYK値をSVGファイルに保存することもできますし。(→ 「CMYKモデルについて整理してみた」)
スタイル
境界線の「スタイル」とは別に「スタイル」という属性があって、Inkscapeでいうところのパターンみたいなものらしいが、デフォルトで設定できるのはほんの少しの(しかも結構特殊な)模様だけなので、どういう使い方を想定しているのか?一方で「ビットマップ塗りつぶし」という機能もあるようで、こちらもInkscapeのパターンに似ている機能のようだ。どういう違いがあるのだろう?
いったん設定した「スタイル」を「スタイルなし」の状態に戻すにはどうしたらいいのか?
スタイル(ブラシ)
境界線をいわゆるブラシで描くことができます。境界線パネルで「スタイル」として「テクスチャ線スタイル」を選ぶと、これとは別にブラシパネルで選んでいるブラシを使って引いたような境界線になります。「テクスチャ線スタイル」とは妙な名前です・・・。
シンボル
「シンボル」という機能があって、Inkscapeでいうところのクローンによく似た機能のようです。Inkscapeのクローンと大きく違うのはオブジェクトを選択しておいて「シンボル」を作成すると、シンボルパネルにそのシンボル(すなわちクローンのメニュー)が追加され、次にそのシンボルをドキュメント上に配置する(配置されると「シンボルのインスタンス」になる)という手順になっていることです。その点ではInkscapeのシンボルとクローンの両方の性質を持つ機能といってもいいのかもしれません。
オブジェクトを「シンボル」化すると、シンボルパネルにそのシンボルが追加されるとともに、元のオブジェクトはそのシンボルのインスタンスに置き換わります。シンボルそれ自体はInkscapeでいうところのクローン元オブジェクトみたいな立場になりますが、シンボル自体を直接編集することはできないようで、シンボルインスタンスのいずれかを編集するとその編集結果は各シンボルインスタンスに同期して反映されます。しかし、「シンボル」と「シンボルインスタンス」と「シンボルの元のオブジェクト」がどういう関係になるのか分かりにくいです。
また、シンボルインスタンスへの編集結果は同期するといっていますが、シンボルインスタンスは内部的にシンボルインスタンスそれ自体とそれを含むグループで構成されていて、普通にシンボルインスタンスをクリックして選択しようとすると実はグループのほうが選択されています。そしてどういうわけか、色を変更すると同じシンボルのインスタンスは一斉に同じ色に変化しますが、拡縮をしてもそのインスタンスしか変化しません。インスタンスの上でダブルクリックすることで、グループのほうではなくその中のインスタンスのほうを直接選択した状態にしてから拡縮すると同じシンボルのインスタンスが一斉に変化します。その違いは画面上の見た目ではわかりにくいので、混乱しそうです。
アセット
Inkscapeでいうところの「シンボル」は「アセット」という呼び名で提供されています。
ウィンドウメニューから「アセット」パネルを表示させるとビュー上にドロップできる部品のメニューが表示されます。
選択した任意のオブジェクトをアセットパネルに追加することもできます。
画像レイヤー
Inkscapeでいうところのビットマップオブジェクトに当たる「画像レイヤー」もあります。なぜ「画像オブジェクト」と言わないのかはわかりません。画像レイヤーなりの編集も可能なようです。
オブジェクトの検索
ヘルプの説明が少なくて、よくわかりません。ネットで検索しても純正ヘルプ以外の解説コンテンツがヒットしないので、あまり利用されていない機能なのかもしれません。
「オブジェクトの検索」という名前の機能がありますが、ビュー上で選択したオブジェクトがレイヤーパネルのどこにあるのかを検索して、そこにフォーカスを当ててくれる、という機能のようです。
ステートとクエリ
何らかの条件を満たすオブジェクト群をまとめて非表示にしたり、エフェクトの有無を切り替えたりできるようですが、ヘルプの説明がよくわかりません。ちょっといじってみると、とても不思議な動きをするので混乱しています。
どうやら、複数のオブジェクト(レイヤ)の表示/非表示の切り替えを一括して行うようなマクロのような機能らしいです。「ステート」はある時点での表示/非表示の状態をスナップショット(ステートエントリ)として記録しておいて、選んだステートエントリを再現(適用)するとその記録したときの表示/非表示の状態が復活するという機能です。「クエリ」はスナップショットではなく自分で定義したルール(該当するレイヤの属性)に合致するレイヤを表示に切り替える(または非表示に切り替える)という機能です。
その他の編集操作
「複製」もありますが、ショートカットキーが「Ctrl+J」で片手で操作するのがつらいです。ばしばし複製したいときに少し面倒です。
選択しているオブジェクトの「上」または「下」にクリップボードから別のオブジェクトを貼り付ける機能があって、用途によっては重宝するらしいです。この機能はInkscapeには無いという声がありますが、Inkscapeの場合は選択しているオブジェクトの「上」に貼り付けられるので、「下」に貼り付けたい場合は続けて「背面に移動」操作を行えば結果は同じです。
グループ化されているオブジェクトをダブルクリックするとまずグループ全体が選択される、と説明されていますが、やってみるとグループ内のオブジェクトのほうが選択されます。
オブジェクトの回転は移動ツールでもノードツールでもポイント変形ツールでも可能ですが、移動ツールやノードツールでは固定された中心に対してしか回転できないようです。ポイント変形ツールならInkscapeと同じように回転中心を自由に変更した上で回転させることができます。ただし、回転専用の中心ではなく、拡縮の中心も兼ねているので、回転だけさせたい場合はCtrlキーを押しながらドラッグします。シフトキーを押しながらドラッグすると反対にそこを中心に拡縮されます。でも、回転中心が2種類あったり、ツールのレベルで切り替えなければならないのは少し面倒かもしれません。
回転ハンドルをドラッグしても回転できますが、コーナーハンドルの「近く」にマウスカーソルを持っていくと回転できるようになったりします。オブジェクトを傾けたい(ヘルプでは「傾斜する」と言っている)ときも辺のハンドル(サイドハンドル)の「近く」でドラッグします。「近く」がどこなのか見た目に分からないのでオブジェクトが重なりあったりすると難しそうな操作です。
調整(Adjustment)
Inkscapeでいうところの「色フィルタ」のようです。違うのはInkscapeがSVGの仕様に沿ってフィルタをオブジェクトの属性の一つにしているのに対して、Affinity Designerはオブジェクトの1種として、フィルタリング対象のオブジェクトの下に配置することで見た目を変化させるようになっているところでしょうか。
ヘルプの説明では「レイヤーを選択して、調整をそのレイヤーの子として追加します。選択されたレイヤー上のすべてのオブジェクトが調整の影響を受けます。」とありますが、「レイヤー」と表示されないものを選択した状態でも新規調整を追加することができるので、何を言いたいのか分かっていません。
ややこしいことにAffinity Designerはこの「調整」機能を実現する特殊なオブジェクト?のことを「調整レイヤ」と呼んでいます。オブジェクトを配置する「板」を指すレイヤとは別に、こういう特殊機能を持つもののことも「レイヤ」と呼ぶんですね。キャンバス全体を複数枚のレイヤに分けて、そのレイヤの中にオブジェクトを配置するというInkscapeの構造のほうが分かりやすいと感じます。Affinity Designerのレイヤはオブジェクトグループの一種として複数のオブジェクトをまとめるイメージが強いようです。
そのせいか、編集対象のレイヤと編集対象のオブジェクトはそれぞれ別々に選択するというInkscapeのイメージとは違って、Affinity Designerではレイヤとオブジェクトは同列に選択するイメージになっている(というかどちらもレイヤとしている?)ので、オブジェクトを選択しているつもりで、その1つ階層が下のレイヤのほうを選んでいるなんてこともありました。
「調整」という広い意味の用語になっていますが、「(色の)調整」と理解したほうがよさそうです。
境界線の幅
Inkscapeの「パワーストローク」のような機能ですが、メインの機能として「境界線の幅ツール」という名前でツール化されています。
動きもInkscapeと似ていて、境界線の上でクリックした位置の幅をマウスドラッグで変化させることができます。
境界線の編集
「境界線を展開」という操作を行うと、境界線部分がドーナツ状のパスに変換されるので、境界線部分を独立して編集できるようになります。Inkscapeでいうところの「ストロークをパスに」と同じ機能です。
レイヤーエフェクト
こちらは「調整」とは違って、Inkscapeでいうところのパスエフェクトと同じように、オブジェクトに対して自動的な編集操作を加える(例えば縁取りをする)ようなものらしいです。なぜ「レイヤー」という名前が頭に付いているのかはよくわかりません。レイヤーを選択しておいて適用できるエフェクトもあるし何も効果が出ないエフェクトもあるようですし、オブジェクトを選択しておくと適用できるものでもあるようです。ヘルプでは「エフェクトを適用したいレイヤーを選択します」と書いてあるので適用対象はレイヤーです。目に見えるオブジェクトもレイヤの一種と考えているのでしょうか。「レイヤ」と「オブジェクト」の2つの用語がはっきりとした区別なく使われているように感じます。
「レイヤーエフェクト」は各オブジェクトの属性として設定されているのに対し、「調整」は独立したレイヤである点も違います。
画像部品
「ストックパネル」を表示すると、そこに画像部品が並んで表示され、ビューにドロップして貼り付けることができます。画像自体は外部サービスから提供されているものなので、許される利用方法は別途調べないといけないそうです。お絵描きツールではこういう部品のライセンスがどうなっているのかをはっきりさせるのが難しいというのはいつもあるように思います。
テンプレート
テンプレートとして保存したり、新規ドキュメントの作成を開始するときにテンプレートを読み込んだりすることができます。
あらかじめ指定しておいたフォルダにあるファイルを一覧表示してくれるので、そこから新規ドキュメントに使うテンプレートを選びます。
テンプレート専用のファイルでなくてもAffinity Designerのファイルであればテンプレートのように読み込めますが、新規ドキュメントを作り始めるタイミングでしか読み込めないようです。編集中のドキュメントに追加で読み込む(いわゆるインポート)ことはできないみたいです。Affinity Designerにも「インポート」と呼ばれる機能がありますが、インポート可能なファイルは一部に限られるようです。
GUI
画面の上辺に水平にメニューが並んでいるところを「ツールバー」と呼び、「ツールバー」の下に並んでいるところをツールごとのメニューが並ぶ「コンテキストツールバー」と呼び、画面の左辺に垂直にアイコンメニューが並んでいるところを「ツールパネル」と呼びます。メニューで表示されるものをなんでも「ツール」と呼ぶようです。一番上のプルダウンメニューだけは「ツール」とは呼ばないのかも。
シェイプ入力用のツールのどれを選んでいる状態なのかが分かりにくいけれど、画面のどこかに表示されているのでしょうか。
パネルの表示を「ウィンドウ」メニューから行わないといけない。パネル表示領域の近くにあったほうが便利かも。閉じる操作も同じ。
パネルを表示しすぎたときにとりあえず必要のないパネルを隠したいけど、ウィンドウメニューからしかパネルを隠す(閉じる)方法がないようだ。「×」ボタンとかあると楽なのだが。
「外観パネル」というものがあると書かれていますが、画面上では「アピアランス」と表示されるパネルなので、間違いやすいです。
「選択コントロールを使用すると・・・」と書いてあるが、「選択コントロール」という文言がヘルプで検索できない!?「選択コントロール」とは何ぞや。「ノートツール」のことか?
ヘルプの内容
日本語版ヘルプが直訳しすぎなのか、用語レベルで意味の分からない表現が多いような。「図形の比率を制限」と急に言われてもどういう機能なのか分からない。シフトキーを押しながら拡縮すると縦横の比率を保つという意味でした。
ヘルプの妙な日本語を読み解くのにそろそろ疲れを感じ始めました。Designerユーザのみなさんはこのヘルプではない解説コンテンツで勉強したのでしょうか?
ソフトウェアのヘルプにありがちだと思うのですが、「×××を使うと〇〇〇を実行することができます」という文言がよく登場しますが、肝心の「×××」を使い始めるにはどうしたらいいのか?とか「〇〇〇」ってどんな機能なのか?ということをその場に書いてくれないので、読めば読むほどわからないことが増えていってしまいます。そのうちわかるのだろうと我慢してますが。