このページでは、同じ形をぴったり敷き詰めて並べるときの規則(対称化)について紹介します。
- Contents
- 選択する文様群について
- (1)P1:シンプル移動
- (2)P2:180°回転
- (3)PM:反射
- (4)PG:映進
- (5)CM:反転+映進
- (6)PMM:反転+反転
- (7)PMG:反転+180°回転
- (8)PGG:滑らか反転+180°回転
- (9)CMM:反転+反転+180°回転
- (10)P4:90°回転
- (11)P4M:90°回転+45°反転
- (12)P4G:90°回転+90°反転
- (13)P3:120°回転
- (14)P31M:反転+120°回転、濃く
- (15)P3M1:反転+120°回転、薄く
- (16)P6:60°回転
- (17)P6M:反転+60°回転
(参考:タイルクローンとは)
(2025.02.05更新)
選択する文様群について
タイルクローンを作成ダイアログの対称化タブでは繰り返しパターンとして17種類の文様群(wallpaper group)の中の1つを指定します。

1つの模様を繰り返し並べて平面をぴったり埋め尽くすパターンは17種類の文様群であることが数学的に分かっているそうで、Inkscapeもその17種類のパターンを指定可能になっています。
ここでは、文様群のそれぞれについて、どんな性質のパターンなのかを具体例付きでまとめたいと思います。
(1)P1:シンプル移動
ダイアログのプルダウンメニューで「P1:シンプル移動」と表示されるパターンです。
このメニューラベルに「P1」という記号っぽい部分(というか記号そのもの)がありますが、このパターンの名前を標準的な形式で表現したもので、その形式は「結晶学記法」と呼ばれるそうです。「シンプル移動」という部分はInkscape独自の名前らしく、結晶学記法の名前ではわかりにくいので、少しでもパターンの特徴を表そうとしているようです。しかし、さすがにひとことで各パターンの特徴を説明するのは難しいので、このInkscape用の名前の意味はあまり気にする必要はないと思います。
このパターン「P1」は、クローン元オブジェクトを並進(平行移動のこと)したときの並進前と並進後のものを最小ペアにして、縦横に繰り返したパターンです。サンプルとしてアルファベットの「F」をクローン元オブジェクトとして選択し、「P1」のタイルクローンを生成すると、次のようになります。「P1」の「1」は「360°」を意味しているので、無回転のまま右に平行移動しています。
(2)P2:180°回転
「P2」は、クローン元オブジェクトを180°回転したときの回転前と回転後を最小ペアにして、縦横に繰り返したパターンです。ちなみに「P2」の「2」は180°(360°の1/2)を表しているそうです。
「PM」は、クローン元オブジェクトを鏡映(反転すること)したときの鏡映前と鏡映後を最小ペアにして、縦横に繰り返したパターンです。ちなみに「PM」の「M」は「Mirror」を表しているそうです。
(4)PG:映進
「PG」は、クローン元オブジェクトを映進(並進と鏡映を同時に行うこと)したときの前と後を最小ペアにして、縦横に繰り返したパターンです。
「映進」とは、進む(並進させる)方向に向かってひねるように鏡映(反転)させる動きのことで、「すべり鏡映」とも呼ぶそうです。ちなみに「PG」の「G」は「Glide reflections」の「G」だそうです。
多くの場合「映進」について「右に進みながらひねる」と説明されていますが、Inkscapeではどういうわけか「下に進みながらひねる」変化になっています。縦と横を入れ替えれば同じことなのですが、少しわかりにくいです。
(5)CM:反転+映進
「CM」は、クローン元オブジェクトを縦軸に沿って鏡映(反転)したときの前と後を最小ペアにして、斜め方向に繰り返したパターンです。「C」は「centered」の略だそうですが、下の例でいえば四角形の四隅の「F」以外にもう1つその真ん中にも「F」がある構造(つまり「面心」)を指しているそうです。

繰り返しの方向がわかりやすいように、点線を引いてみました。
(6)PMM:反転+反転
「PMM」は、クローン元オブジェクトを横軸と縦軸に沿ってそれぞれ鏡映した4つを最小単位にして、縦横に繰り返したパターンです。
(7)PMG:反転+180°回転
「PMG」は、クローン元オブジェクトを横軸に沿って鏡映し、さらに縦軸に沿って映進した4つを最小単位にして、縦横に繰り返したパターンです。
でもこれ、映進の方向が斜めになっている(映進前の画像の右端に映進の軸があって、その軸を中心に右下斜めの方向に映進している)のが少し不自然な感じがするので、次のように配置するほうがPMGとして典型的なのじゃないかと思ったりもします。
(8)PGG:滑らか反転+180°回転
「PGG」は、クローン元オブジェクトを横軸と縦軸に沿って映進した4つを最小単位にして、縦横に繰り返したパターンです。
(9)CMM:反転+反転+180°回転
「CMM」は、クローン元オブジェクトを横軸と縦軸に沿ってそれぞれ鏡映した4つを最小単位にして、斜め方向に繰り返したパターンです。
(10)P4:90°回転
「P4」は、クローン元オブジェクトを90°回転で1周した4つを最小単位にして、縦横に繰り返したパターンです。
(11)P4M:90°回転+45°反転
「P4M」は、クローン元オブジェクトを横軸、縦軸、斜めの軸に沿って鏡映した8つを最小単位にして、縦横に繰り返したパターンです。
(12)P4G:90°回転+90°反転
「P4G」は、クローンオブジェクトを90°回転で1周した4つをまとめて横軸と縦軸に沿って映進した16個を最小単位にして、縦横に繰り返したパターンです。
(13)P3:120°回転
「P3」は、クローン元オブジェクトを120°回転させていって1周したときの3つを最小単位にして、六角形を並べて繰り返したパターンです。
このパターンはクローン元オブジェクトのバウンディングボックスを基準にして配列するのではなく、バウンディングボックスに対して次のような位置に設定したひし形を基準にして配列したものです。というか、Inkscapeの実際の動作を観察すると、そう説明できるということです。クローン元オブジェクト1個だけを描くと次のようになります。
これをクローン元オブジェクトとして選択して「P3」で並べると、次のようになります。基準としているひし形も上から描き足してみました。
ちなみに、「F」同士が重なっているのは、基準となるひし形から出張っているところがそのまま重なって表示されているからです。きれいにぴったり敷き詰められた絵にしたいときは最初からひし形の内側だけに図形を描いたクローン元オブジェクトを作ればよいです。
ひととおりのタイルを生成すると次のようになります。
(14)P31M:反転+120°回転、濃く
「P31M」は、クローン元オブジェクトを鏡映したときの前後2つをまとめて120°回転させていって1周させて6個のオブジェクトを生成し、それを最小単位にして、基準となる六角形を並べて繰り返したパターンです。鏡映した2つのオブジェクトは基準とする1つの正三角形の上に乗っかる形になっています。このパターンは繰り返しのときのオブジェクトの密度が(この後のP3M1に比べて)より高くなっています。
このパターンでは、クローン元オブジェクトのバウンディングボックスをぴったり覆う正方形の中の次のような正三角形を配置の基準とします(というか、そうなのだろうと思われる動作をします)。
この正三角形を敷き詰めるように配置します。
(15)P3M1:反転+120°回転、薄く
「P3M1」は、「P31M」と同じように、クローン元オブジェクトを鏡映した2つをまとめて120°回転させていって1周したときの6個を最小単位にして、基準となる六角形を並べて繰り返したパターンです。鏡映した2つは基準とする2つの正三角形(1つのひし形)の上に乗っかる形になっています。このパターンは繰り返しのときのオブジェクトの密度が「P31M」に比べてより低くなっています。
このパターンでは、クローン元オブジェクトのバウンディングボックスに重なった次のような正三角形を配置の基準とします。
この正三角形を敷き詰めるように配置します。
(16)P6:60°回転
「P6」は、クローン元オブジェクトを60°回転で1周させたときの6個を最小単位にして、基準となる六角形を繰り返したパターンです。
(17)P6M:反転+60°回転
「P6M」は、クローン元オブジェクトを鏡映させたときの2つをまとめて60°回転して1周させ、その1周分の12個のオブジェクトを最小単位にして、基準となる六角形を繰り返したパターンです。
