ここでは、Inkscapeの「ページツール」を紹介します。

- Contents
- はじめに
- ページって何?
- ページの追加、変更、削除
- オブジェクトごと移動
- ページごとの表示ラベルの設定
- 複数ページの保存と読み込み
- ページサイズを描いたものに合わせる
- ページをまたいだ編集
(参考:ページのマージンと塗り足し)
(2023.1.18更新)
はじめに
Inkscapeでは、バージョン1.2からページツールを使って複数のページを作成することが可能になりました。
ページツールを使ってキャンバス上に複数のページの枠(ページ境界)を設定して、その内側に絵を描き、その複数ページをまとめて1つのPDFファイルに保存したり、ページごとに別々のファイルに保存したりすることができます。
ページって何?
まずはInkscapeでいうところのページとは何か、についてです。
ページという言葉の印象から、描画可能な領域のことかと思いそうですが、Inkscapeのページはキャンバスの中で印刷やファイル保存の対象となる一部分の領域のことを指します。だからキャンバスの上でページの外側の領域にも絵を描くことはできるし、絵を描いた後でページの枠のほうを移動したり変形したりして、印刷やファイル保存の対象を変えたりすることもできます。
例えば次のように複数の重なり合ったページを設定して、ページにまたがったオブジェクトを描くこともできます。この例ではページの位置や大きさをバラバラにしてみました。

描かれたものはページごとの内容として処理されるので、上の例のドキュメントをPDFファイルに保存して表示すると、次のように各ページの枠の中に含まれる部分がページごとの内容として保存されていることがわかります。

ページの追加、変更、削除
Inkscapeのドキュメントの作成を始める(新規ドキュメントを開く)と、初期状態として自動的に最初のページが設定されています。
この最初のページに対して、ページツールを使って新しいページを追加していくことができます。
ページツールはツールバーの一番下にあります。これをクリックすると、選択するモードやパスを描くモードなどとは別の「ページ編集モード」に切り替わります。

ページ編集モードにすると、ページツールで設定できるパラメータの入力画面がツールコントロールバーに現れます。

この左上にある「+」が描かれたボタンを押すと、キャンバス上に新しいページが追加されます。

新しく追加されたページは選択されている状態になっていて、4つの角にハンドルが表示されます。他のページの上をクリックすれば選択を切り替えることもできます。
そして、ページ全体をドラッグしたり、4つの角のハンドルをドラッグすると、キャンバス上のシェイプを編集するときと同じような感覚で、ページを移動したり大きさを変更したりすることができます。

四隅のハンドルをドラッグすれば自由な大きさに変えることができますが、A4サイズのように決まったサイズに変えたいときは、ツールコントロールバーで選択します。

ページを削除したいときは、対象のページをクリックして選択しておいてDeleteキーやBackSpaceキーを押すか、または、ツールコントロールバーの右のほうにある削除ボタン「×」を押します。
なお、ページはオブジェクトと違って、複数同時に選択することはできないようです。Illustratorはできるそうですが。
オブジェクトごと移動
ページは単なる「枠」なので、その「枠」の内側や外側に描かれているオブジェクトとは独立に編集するのが基本です。
ただ、ページを移動するときは、そのページに重なって描かれているオブジェクト(ページからはみ出ているものを含む)も一緒に移動します。
オブジェクトを一緒に移動しないように切り替えることもできます。ツールコントロールバーのページ移動オプションボタン(削除ボタンのすぐ右)を押してオフにすると「一緒に移動しないモード」になり、ページだけを移動することができるようになります。

移動オプションボタンがオフになっていれば右上のようにページだけがドラッグされ、オンになっていれば右下のようにページに重なっているオブジェクトも一緒にドラッグされます。
ページごとの表示ラベルの設定
ツールコントロールバーにラベル入力欄があります。ここに何か文字列を入力すると、選択しているページのそばにラベルとして表示されるようになり、ページを移動して順番が入れ替わっても区別がつくようになります。

ただし、バグのせいか日本語ラベルは化けてしまいます。
また、このラベルはキャンバス上に表示されるだけのもののようで、印刷時に自動的にヘッダに印字してくれたりはしないようです。
複数ページの保存と読み込み
ファイル > 名前を付けて保存メニューや、ファイル > コピーを保存メニューではなく、ファイル > エクスポートメニューを操作すると、保存対象のページを指定できる画面が表示され、ここで指定したページだけがファイルに保存されます。

同じ画面のバッチエクスポートタブを使えば、複数のページを別々のファイルに保存したりすることもできます。
また、すでに複数のページを保存してあるファイル(SVGファイルやPDFファイル)をインポートすると、編集中のページ群に対してインポートしたファイルの中のページ群を付け足すことができます。
ページサイズを描いたものに合わせる
あまり使う機能ではないかもしれませんが、描かれているオブジェクト群がぴったり収まる大きさにページのほうを合わせる機能です。
オブジェクトを何も選択していない状態で、ページツールを選択し、さらにツールコントロールバーの次のボタンを押します。

すると、1ページだけ設定している場合はキャンバス上のすべてのオブジェクトがぴったり収まる大きさにページサイズが自動的に変更され、複数ページが設定されている場合は選択しているページに重なっているすべてのオブジェクトがぴったり収まる大きさに選択中のページのページサイズが自動的に変更されます。

一部分のオブジェクトだけを選択した状態でページツールを選択して、同じようにボタンを押すと、選択しているすべてのオブジェクトがぴったり収まる大きさになるはずですが・・・。

ボタンを押してもこうなりません。ネット上でもこの動作が報告されているので、どうやらバグらしいです・・・・。
しょうがないので、オブジェクトを選択しておいて、ページツールを選択することなく「Control+Shift+R」を押せば、同じ機能が働きます。
(参考:ページの端ピッタリに絵を拡大する)
ページをまたいだ編集
複数のページにまとめて同じ編集操作を行うことはできないようです。例えば同じ位置にまとめてペーストすることはできないようです。Illustratorではできるそうですが。
ページを1つずつ選択していきながら同じ位置へのペーストを繰り返すことはできます。(参考:オブジェクトの分身を作るには)