このページではInkscapeの「ぼかし」機能について紹介します。

- Contents
- 「ぼかし」とは
- 「ぼかし」の詳細
- オブジェクト回転後のぼかし
- ぼかしをハンドルで調整
(2023.07.31更新)
「ぼかし」とは
Inkscapeにはオブジェクトにぼかしを入れる機能があります。

といっても、ぼかしそのものはInkscapeが用いているSVG形式データの1要素として標準規格になっているもので、<path>とか<polygon>などの基本図形と同じように<feGaussianBlur>という要素(エレメント)として定義されています。
「ぼかし」の詳細
この <feGaussianBlur>をドキュメント中に挿入する操作が「ぼかしを加える」ことに相当します。
通常はフィル/ストロークダイアログの下のほうにある「ぼかし」バーを調整することで、デフォルトのゼロ(すなわちぼかしなし)から適当にぼかしが入った状態に変更します。

このバーの値をゼロよりも大きくすると、次のように全体に均等にぼかしが入ります。

実はこの「ぼかし」の効果は上で書いたように<feGaussianBlur>を挿入することで設定されているので、オブジェクトそれ自身の属性というよりも、オブジェクトに適用されたフィルタによって実現されています。
(参考:フィルタとは何か)
そしてこのぼかしフィルタのぼかしの強さは「標準偏差(stdDeviation)」をフィルタのパラメータとして指定することで調整します。「標準偏差」が大きいほどぼかしが強くなります。フィル/ストロークダイアログのバーで指定しているのはこの「標準偏差」の値です。(標準偏差などと難しいパラメータ名で表示されても意味がわからないのでInkscapeではあえてこの呼び名を使わずにいるようです。)
さらに、1つだけ「標準偏差」の値を指定して全体の均等なぼかし具合を調整することもできますが、2つ「標準偏差」の値を指定することで横方向と縦方向のぞれぞれのぼかし具合を変えることもできます。ただし、Inkscapeのフィル/ストロークダイアログは2つを指定することができる画面になってないので、縦方向と横方向で異なるぼかしを入れたいときはフィルタエディタを表示してそこで<feGaussianBlur>のパラメータを直接調整します。(バージョン1.3ではフィルタエディタを使わなくても調整できるようになったので、それについては下のほうで)
ぼかしをかけたオブジェクトを選択しておいてからフィルタエディタを表示させると、次のようにサイズと書かれたパラメータが2つ並んでいて、これが「標準偏差」に当たります。デフォルトでは横方向のサイズ(上のバー)と縦方向のサイズ(下のバー)とが常に一致する(すなわち標準偏差を1つしか指定しない)状態になっています。

横方向と縦方向で違う値を指定したいときは、まずバーの右側に小さく表示されている短い鎖のようなアイコンをクリックします。そうすると鎖が解けたようなアイコンに変化して、2つのバーを独立に操作できるようになります。そうしておいてから違う値を指定すると、次のように一方向に偏ったぼかしになります。

この場合は縦方向に大きな値を指定しているので、縦に伸びたようなぼかしになっています。
オブジェクト回転後のぼかし
横方向と縦方向で異なるぼかしが設定できることがわかると、次に気になるのはオブジェクトを回転した後のぼかし具合はどうなるのか?ということですが、ぼかしの軸はオブジェクトを最初に配置したときの軸と一緒なので、キャンバス上でドラッグして新規オブジェクトを描いたときの水平方向(X軸)と垂直方向(Y軸)にぼかしの軸があり、オブジェクトを回転するとぼかしの軸も一緒に回転し、オブジェクトを回転したあとに設定したぼかしの軸も回転後の軸と一緒になります。

ぼかしをハンドルで調整
バージョン1.3ではノードツールを使うと通常のノードのほかに横方向と縦方向のぼかしの標準偏差を調整するためのハンドルも表示されます。このハンドルをドラッグすることで、横と縦で異なるぼかし具合を指定することができます。

通常のノードと見た目で区別しにくいのでときどき見失うことがあります・・・。