このページでは、複数のオブジェクトの位置を整列したり配置したりする機能についてまとめます。

(2023.08.24更新)
はじめに
この機能は、複数のオブジェクトを選択しておいてから実行すると、そのオブジェクト同士を端のところでピッタリそろえたり(整列)、あるルールに従って自動的に位置を決定したり(配置や配列)するなど、一回の操作でオブジェクトをパッと自動的に並べ直す機能です。
なお、Inkscapeに限らずこういった動作を日本語で「整列」、「配置」、「配列」などと表現するかと思いますが、Inkscape用語としての意味の違いはそんなに明確ではなく、どんな並べ方が「整列」で、どんな並べ方が「配置」に分類されるのかといったことはあまり気にする必要はないかと思います。
ちなみに英語では「Align(整列)」、「Distribute(配置)」、「Arrange(配列)」となっています。こちらを見ると少しだけニュアンスの違いが表れているような気もします。
整列/配置機能一覧
以下、この番号に沿ってそれぞれの機能の内容をまとめていきます。
ダイアログの構造
整列も配置も配列も整列と配置ダイアログから実行します。
(参考:Inkscapeのウィンドウ/ダイアログの特殊な機能
まずはこの整列と配置ダイアログの構造を示します。
上の一覧の1~6の機能は整列と配置ダイアログの整列タブから実行します。
7の機能は整列と配置ダイアログのグリッドタブから実行します。
8の機能は整列と配置ダイアログの円タブから実行します。
以下、この順番に詳しくまとめていきます。
1.整列(Align)
基準とするオブジェクトやページ枠の特定の位置(左側、右側、上側、下側、テキストのベースライン)に対して、選択中の複数のオブジェクトが揃うように移動する機能です。
ダイアログの基準と書かれたドロップダウンメニューから「どれに揃えるか」を選んで、その下のアイコンで「選択したオブジェクトのどこを揃えるか」を選ぶと、整列が実行されます。
基準(どれに揃えるか)としては、ページ領域や特定のオブジェクトが指定できます。
オブジェクトを基準に指定する場合、最初に選択したオブジェクト、最後に選択したオブジェクト、最大のオブジェクト、最小のオブジェクト、キャンバス上の全オブジェクトのバウンディングボックス(メニューの表記は描画)、選択したオブジェクトのバウンディングボックス(メニューの表記は選択範囲)のどれを基準とするかをドロップダウンメニューで指定します。
最初に選択したオブジェクト、最後に選択したオブジェクト、最大のオブジェクト、最小のオブジェクトのいずれかを基準に指定した場合は、選択中の複数のオブジェクトの中で、その条件に該当するオブジェクトに対して、それ以外のオブジェクトを揃えます。
選択オブジェクトをグループとして移動/整列しますというボタンをオンにすると、整列する際に個々のオブジェクトを独立に整列するのではなく、オブジェクトの相対的な位置関係をオブジェクトグループのように維持したまま全体を移動することで整列します。
整列ハンドルについて
3回目のクリックでハンドルを整列しますというボタンをオンにすると、キャンバス上でオブジェクトを選択したときに表示されるハンドルとして、通常のサイズ変更ハンドルや回転ハンドルに加えて、整列ハンドルが表示されるようになるので、整列したい複数のオブジェクトを選択して、何回かクリック(ダブルクリックにならないようにゆっくりクリック)して整列ハンドルを表示してから、揃えたい位置のハンドルをクリックすると、オブジェクト同士を簡単に揃えることができます。
次の例では、3つの矩形を選択しておいて1回クリックすると回転ハンドルになり、もう1回クリックすると整列ハンドルになり、さらに右辺側の整列ハンドルをクリックすると3つの矩形の右辺がピッタリ揃うという動作をしています。

また、シフトキーを押しながら整列ハンドルをクリックすると、クリックした側の辺が揃うのではなく、クリックした側と反対側の辺が揃います。
中央のハンドルをクリックするとオブジェクトを水平方向に移動することでオブジェクトの真ん中が揃います。シフトキーを押しながら中央のハンドルをクリックすると水平方向ではなく垂直方向に移動することで揃います。
なお、バージョン1.0のときのリリースノートでは、シフトキーとコントロールキーを両方押しながらハンドルをクリックすると、選択オブジェクトをグループとして移動/整列しますボタンをオンにしたときと同じように整列されるということになっていますが、実際にやってみるとコントロールキーを押しても無視されているようなので、その後のバージョンでこの機能がなくなったのか、バグなのか・・・。
2.配置(Distribute)
基準に合わせるのではなく、複数のオブジェクト同士の並びを所定の方向に等間隔に並べる機能です。テキストオブジェクトに限れば、テキストのベースラインが等間隔になるように並べることもできます。

3.再配置(Rearrange)
揃うように並べるのではなく、特殊なルールに従って自動的に配置し直す機能です。コネクタでつながったオブジェクト群(コネクタツールを用いて描いたもの)をいい感じに配置し直す方法と、3つ以上選択して実行するとボタンを押す度に全体が回転(ローテーション)するように入れ替わる方法(選択した順番に沿ってローテーションするか、重なりの順番に沿ってローテーションするか、時計回りにローテーションするかは、押すボタンによって変えることができます)と、選択した複数のオブジェクトを適度にばらつくように(ランダムになるように、または、同じような距離になるように)配置し直す方法があります。
時計回りのローテーション機能では、オブジェクトが時計回りに回転するように入れ替えてくれます。

いずれにしても、結果としてどんな風に再配置されるのかを予想しながら実行するのはなかなか難しそうですが。
4.重なりを除去(重ならないように移動)
ダイアログ上で指定したピクセル数分だけ隙間のあく位置まで移動して重ならないようにしてくれます。

5.ノードを整列/6.ノードを配置
こちらはオブジェクトの整列に対して、その「パスノード版」といった感じの機能です。
ノードツールを使ってパスオブジェクトのノードを表示し、そのうちのいくつかを選択した状態で、基準をドロップダウンメニューから選択し、各ボタンを押すと、選択したノードを基準と同じ水平線上に揃えたり、基準と同じ垂直線上に揃えたり、選択したノードの右端と左端の間で均等に並べたり、選択したノードの一番上と一番下の間で均等に並べたりしてくれます。(参考:パスを作成/編集)

7.升目(グリッド)に配列
HTMLで言うところのTABLEのように、行と列に並んだマス目の中に自動的に複数のオブジェクトを配置します。(マス目それ自体は表示されません!)

「グリッド」と呼ばれていますが、スナップ対象(スナップ先の位置)として用いるグリッド(ページグリッド)とは別のものです。(参考:スナップ機能(ドラッグ時の位置合わせ))
グリッドタブ上で、縦横のマスの数を指定し、全部のマスの幅を揃えるか、高さを揃えるかを指定し、グリッド全体の大きさをどうやって決めるかを指定し、グリッドの1つのマスの中での配置を指定して、配列ボタンを押します。
選択した配置対象のオブジェクトの数に応じて、必要最小限な数のマスが用意されます。それを超えるマスの数を指定しても、先に指定したほうの数が余分であれば自動的に減らされます。
幅や高さを揃えるよう指示しない場合は、オブジェクトの大きさにぴったりのマスが用意されます。
どのマスにどのオブジェクトが配置されるかは、まず全オブジェクトを縦方向に見て、重なっているものは同じ順位、重なっていないものは上から下の順で並べ、同じ順位のオブジェクトについて今度は横方向に見て左から右の順に並べ、その並びに沿って、グリッドの左から右、上から下に埋めていきます。(厳密に言うと、もう少し込み入った並べ方をしていると思いますが)
各マスにオブジェクトを埋めたら、次に各マスの中での配置が決まります。
選択枠にフィットをオンにすると、配置対象として選択した複数のオブジェクト全体のバウンディングボックスの辺にできるだけピッタリ張り付くように配置されます。「ピッタリ」の定義ははっきりわかりませんが・・・。このとき、通常の順序付けやマス内での配置は優先度が下がって、無視されることがあるようです。例えば、縦長のオブジェクトが左下にあったとしても、ピッタリ張り付くようにするために自動的に右上に移動されたりします。
間隔を設定をオンにすると、縦と横でそれぞれ指定した間隔をあけるように各マスの大きさが決まります。
8.放射状に配列
1つの円/弧オブジェクトのアウトライン上に、他のオブジェクトを等間隔に並べ直します。

円タブで実行します。
アンカーポイントとして、円/弧オブジェクトのアウトラインにオブジェクトそれぞれのどの位置を揃えるかを選び、配置位置となる円/弧オブジェクト(あらかじめ描いておく必要があります)を指定して、ダイアログの一番下の配列ボタンを押すと、アウトライン上に他のオブジェクトが並びます。
上の例では、アンカーポイントとして左下隅を指定したので、赤い円(配置位置)の上に、各矩形のストロークの左下隅の角がちょうど重なる位置に移動しています。
オブジェクトを回転にチェックを入れて実行すると、円周に接するように回転を加えてくれます。