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Inkscapeでパスを作成/編集

 このページでは、Inkscapeでパス(自由に引いた線)を新たに作成したり、変形したりする手順をまとめます。

(2024.10.08更新)

パスの作成(基本)

 パスは、セグメント(直線や円弧やベジエ曲線)を組み合わせてノードで連結した任意の形の線のことで、SVG形式で定義されているところの<PATH>エレメントに相当します。

 ノードを線でつないだもの、とも理解できそうですが、そうするといろんなことが分かりにくくなるのでお勧めしません。ノードはセグメントの端を移動するためのマークぐらいに捉えたほうがよさそうです。例えばこの後出てくる「ノードハンドル」は名前からすると「ノードを変更するためのもの」かのようですが、「セグメントの端を変更するもの」なので、セグメントの両端に表示されているのであって、結果的にノードから延びているように見えているだけだと思います。

 Inkscapeでパスを新たに作成するには、ペンツールを使ってセグメントを次々につないでいくように描いて作成する以外に、フリーハンドで描画したような自由な形のパスを作成する鉛筆ツールカリグラフィツールを使ったり、それ以外のツールで描いたオブジェクトをパスに変換したりする方法があります。使うツールによっていろんなパス作成手順があるので、詳しくは別のページで。

   ・ペンツールでパスを描く

   ・鉛筆ツールでパスを描く

 新たなパスを描いたのちに、ノードツールを選択すると、作成済みのパスのノード(パス上の端点と連結点)が○や◇で表示され、そのノードをドラッグしたり、セグメントの線をドラッグすることでパスを変形することができます。


作成したパスの変形

  作成したパスを変形する詳細な手順です。

 作成したパスを変形するには、ツールバーからノードツールを選択します。

 ノードツールを選択し、続いて変形対象のパスを選択すると、そのパスのノード(◇など)が表示されます。(変形対象のパスを選択しておいて、次にノードツールを選択しても同じことが起こります。)

 こんな感じです。

 デフォルトでは、ノードの表示と合わせて、そのパスオブジェクト全体を選択していることを示すバウンディングボックスが点線で表示されます。この表示が不要な場合は、環境設定ダイアログのツール > ノード > 選択状態を表示するというオプションをオフにしてもう一度選択すると、消えます。

 この状態で、ノードをドラッグしたり、セグメントの線の上の曲げたいところをドラッグすると変形することができます。例えば、右半分のセグメントの真ん中あたりを外側にドラッグすると、次のようにセグメントが曲がります。

 さらに、真ん中(頂点)のノードをクリックすると、次のようにそのノードが選択状態なり(赤くなっている)、かつ、頂点と右下の2つのノードに制御点(Control Point)を示すノードハンドルがヒゲのような形で表示されます。

 ノードハンドルは、セグメントごとにその両端に表示され、そのノードの位置でのセグメントの接線方向を表すものです。ただし、セグメントがまっすぐな場合は表示されません。上の例では、左半分のセグメントはまっすぐなので、両端にはこのヒゲ(ノードハンドル)が表示されていません。

 ノードハンドルは1個のノードの両側に表示されるものと理解するよりも、1本の曲がったセグメントの両端に表示されるものと理解したほうがわかりやすいこともあります。

 ノードハンドルをドラッグすると、セグメントの曲がり具合を変更することができます。


 ノードのところでの2つのセグメントのつながり方を変更することもできます。

 ノードのところでセグメント同士がなめらかにつながるようにしたい場合は、そのノードを選択した状態で、ツールコントロールバーの真ん中あたりにある選択ノードの種類をスムーズにアイコンをクリックします。すると、次のように、そのノードのところの接続がなめらかになります。

 この例は左右対称なので、これで十分になめらかにつながっているようにみえますが、セグメントが左右対称でない場合で、もっとなめらかにつなげたい場合があります。その場合は、ツールコントロールバーのさらに隣の選択ノードの種類を均等にアイコンをクリックすると、次のように、ノードハンドルのヒゲが自動的に左右対称になるので、もっと丸くなめらかになります。

 ちなみに、選択ノードの種類をシャープにアイコンをクリックすると、逆にスムーズでなくなります。

 さらに、ノードをドラッグして移動した場合にもなめらかにつながった状態を保ちたい場合は、次のようにします。

 次の図は、頂点のノードを選択しておいて選択ノードの種類を均等にアイコンをクリックし、さらに右下のノードを上の方に移動した場合の図です。なめらかといえばなめらかですが、右肩のところがちょっとゆがんだカーブになっています。頂点のところのノードハンドルは動いていないからです。

 それに対して、次の図は、頂点のノードを選択しておいて選択ノードを自動スムーズにアイコンをクリックしたものです。同じように右下のノードを上の方に移動しても、頂点のところのノードハンドルが自動的に調整されて、いいぐあいに左右均等に曲がっていることがわかります。この機能を使うと、パスのノードの移動(この例では右下のノードの移動)に応じて、その周囲のノード(この例では頂点のノード)のところもいいぐあいにスムーズになるように連動して自動的に調整してくれます。

ノードの種類

 上で書いたようにノードの位置での曲がり具合には種類がありますが、その種類に対応する形でノードにはその前後の2つの制御点(ノードハンドル)同士がどのような位置関係なのかによって種類があり、その種類に応じてノードのところでの曲がり具合に違いが現れます。

シャープノード
 「」で表示されます。
 前後の2つのノードハンドルは独立に操作することができるので、ノードのところで尖がったパスに変形できます。
 
スムーズノード
 「」で表示されます。
 前後の2つのノードハンドルは常に1本の直線上に並ぶように自動調整されるので、ノードのところがなめらかにつながったままで変形されます。
 
対称ノード
 「」で表示されます。スムーズノードと見かけ上の違いがありません。
 前後の2つのノードハンドルは常に1本の直線上でかつ対称な位置に並ぶように自動調整されるので、ノードの前後の曲線が均等に曲がったままで変形されます。
 
自動スムーズノード
 「」で表示されます。
 前後の他のノードの位置が変化しても、それに対して自身のノードのところがなめらかにつながったままになるようにノードハンドルを自動調整します。ノードハンドルのドラッグを行った場合は、自動スムーズノードは解消されて通常のスムーズノードに強制的に変更されます。
 


 ノードの種類の変更は、上で書いたようにツールコントロールバーのボタンを押すか、または、コントロールキーを押しながらノードをクリックして行います。後者の場合は、クリックするたびにノードの種類がローテーションするように変化します。

 ノードの種類が分からないときは、マウスカーソルをそのノードの上に持っていけば、ステータスバーにノードの種類が表示されます。

移動、拡大/縮小、回転

 パスはオブジェクトの一種でもあるので、選択ツールを使ってパス全体を選択するとハンドルが8方向に表示され、そのハンドルを操作することで、シェイプと同じように拡大、縮小、回転、傾けを行うことができます。もちろん、パス全体を移動(平行移動)することもできます。

 一方、ノードツールを選択してパスのノードを表示した状態で、次のように一部のノードを同時に選択すると、それらのノードだけをまとめて移動したり回転したりすることもできます。(参考:パスのノードを選択する

 例えば、同時に選択したノードのどれかひとつをマウスでドラッグすると、選択されているノード全体がまとまって移動します。

 また、この場合は選択されている複数のノードが互いに同じ位置を保ったまま平行移動するように動きますが、次のように、複数のノードを選択した状態で、中の1つのノード(赤いノード)だけをAltキーを押しながらドラッグすると、

次のように、ドラッグしたノードそれ自体はマウスの位置まで移動しますが、他の選択されているノード(青いノード)は平行移動するのではなく、パスの一部がゴムでできているようにノードの間が伸び縮みするように移動します。

 さらに、ツールコントロールバーの次のボタンを押すことで表示されるハンドルを操作すれば、選択されているノード全体がまとまって拡大/縮小します。



 また、ちょっとわかりにくいですが、この状態でシフト+「h」キーを押すと、拡大/縮小のハンドルが回転用のハンドルに切り替わって、選択中の一部ノードだけを回転させたり傾けたりする操作も可能になります。(この切り替え操作はメニューからはできないようです。)

その他のパスの編集操作

 他にも、パス編集特有の細かい操作がいろいろあります。ここでは説明が簡単な操作についてだけ、ざっとまとめておきます。

ノードの選択

 パスのノードを選択する方法は「パスのノードを選択する」のほうにまとめました。

ノードの追加

 セグメント上をダブルクリック、または、Ctrl+Alt+クリックすると、その位置に新しいノードを作成することができます。

 前に描いたパスの端のノード上をクリックして新たなパスを描く操作を行うと、前に描いたパスと1本につながったパスにすることができます。

 シフトキー+「D」を入力すると、選択中のノードの位置にもう1個ノードを追加(つまりノードを複製)します。(ノードを選択していない場合は何も起こりません)

  セグメントの両端のノードを選択して、Insertキーを押すと、そのセグメントの中央に新しいノードが追加されます。追加されたノードも自動的に選択状態になっているので、Insertキーを続けて押すと、そのまた中央のそのまた中央にノードを追加していく・・・ということができます。

ノードの削除

 ノードの削除は少しクセのある機能です。

 対象のノードを選択しておいてDelキーを押すと、シャープノードの場合は削除したノードの両隣のノードをまっすぐな線でつなぎ直しますが、シャープノード以外では曲線の形を維持したままそのノードを削除します。

 ただし、環境設定のノードツールの設定で「ノードの削除時に形状を維持する」というオプションにチェックを入れてオンにしているか、と、何のキーを押しながらDelキーを押すか、によって結果は異なります。

 少しややこしいですが、書いておきます。

 「形状を維持する」をオンにしてもオフにしても、Ctrl+Delキーを押すと、削除したノードの両隣のノードをまっすぐな線でつなぎ直します。

 「形状を維持する」をオンにしてシフト+Delキーを押すと、シャープノードの場合は曲線の形を維持したままそのノードを削除しますが、シャープノード以外では削除したノードの両隣のノードをまっすぐな線でつなぎ直します。要は単にDelキーを押したときの逆の動きになります。

 「形状を維持する」をオフにしてDelキーを押すと、シフトキーが一緒に押されても押されなくても、かつ、シャープノードでもシャープノード以外でも、曲線の形を維持したままそのノードを削除します。

 また、Ctrl+Altキーを押しながらノードをクリックすると、そのノードを削除できます。次々にノードを削除したいときに便利です。

セグメントのコピー&ペースト

 ノードツールでパスのノードを表示している状態で、ノードを2つ以上選択しておいてコピー&ペーストを実行すると、それらのノードがコピーされてペースト後のノード同士を連結したサブパスが追加されます。

 ペースト後はサブパスが1つ増えている状態なので、そのサブパスだけをパスオブジェクトとして独立して選択することは当然できません。ときどき「パスをコピペしたつもりなのにペースト後に選択できない」という状態になって「あれ?」と思いますが、実はパスではなくサブパスをコピペして1つ増やしているだけで、パスオブジェクトは追加されていないので、選択ツールで選択しようとしたときに依然として複数のサブパスを1個のパスオブジェクトとして選択することしかできないというだけのはなしだったりします。

 ノードツールで編集中にコピー&ペーストするときは混乱しないように注意が必要です。

角(コーナー)の変形

 角(コーナー)のところを丸めたり(フィレット)切り落としたり(面取り)することができます。

 この操作はパスだけでなくシェイプでも可能です。詳しくは「オブジェクトの変形」を。 

その他の編集

 Altキーを押しながらセグメント上をダブルクリックすると(バージョン1.3.2以前はCtrlを押しながらセグメント上をクリックする)、そのセグメントをまっすぐにすることができます。またはそのセグメントの上をクリックして両端のノードを選択してからツールコントロールバーの線を直線にというボタンを押します。

 Ctrlを押しながらノードをドラッグすると、キャンバスの垂直方向や水平方向にだけ移動します。

 Ctrl+Altを押しながらノードをドラッグすると、セグメントに沿った方向やセグメントに対する垂直方向にだけ移動します。(この動きは言葉ではわかりにくいので、垂直線と接線の描き方(もっと自由に)のほうで詳しくまとめます)

 他にも、ツールコントロールバーの各機能のボタンを押すと、1つの選択ノードのところでパスを切断したり、2つの選択ノードを1つの選択ノードにしてつないだり、2つの選択ノードの間のセグメントを消したり新しいセグメントでつないだりできます。

 なお、以下のページで、パス編集手順のうちさらに詳しい説明が必要なものについて、まとめています。

 (参考:パスをつなぎ合わせる/切り離す

 (参考:パスの「分割」「パスを分割」「分解」の違い

 (参考:パスの切断の詳細

 (参考:パスの塗りつぶしのルール

 (参考:パスを延長する

ノードとハンドルについて

 ノードの表示が小さくてドラッグしにくいと思うときは、環境設定ダイアログのインターフェース > ハンドルの大きさで調整できます。

 Inkscapeでは、ノードの位置に表示される〇や◇それ自体をノードと呼ぶこともあれば、ノードのハンドルと呼ぶこともあるようです。(上のほうで出てきてますが、セグメントの曲がり具合を調整するためにノードのそばに表示されるハンドルのこともノードハンドルと呼ぶので、混乱しないようにするためか、ノードのハンドルのことは単にノードと呼ぶことが多いように思います。)