このページでは、Inkscapeを使って「パスその1」を「パスその2」の形に沿うように変形する機能「パスに沿うパターン」(Pattern Along Path)について紹介します。

(参考:パスエフェクトの使い方(共通部分))
(2023.03.31更新)
「パスに沿うパターン」の概要
言い換えれば、「パスその2」を描くときに単に等幅でストロークを描くのではなく、「パスその1」を模様に使って描く、という機能です。
そういう意味では、「パスに沿うパターン(Pattern Along Path)」と呼ぶよりも「パスAに沿うパスB」のほうが呼び名としてあっているような気もします。
パスその1を「パターンパス」と呼び、パスその2を「スケルトンパス(骨格パス?)」と呼びます。
パスエフェクト版とエクステンション版
実はInkscapeでは「パスに沿うパターン」という名前の機能が3個所から実行可能です。
1つ目は、おそらくもっとも使用頻度が高いだろうと思われますが、パスエフェクトとして設定するパスに沿うパターンです。
2つ目は、エクステンションのメニューから実行可能なパスに沿うパターンです。
3つ目は、ペンツール(または鉛筆ツール)のツールコントロールバーでクリップボードからを選択する場合です。この3つ目の手順は、1つ目のパスエフェクト版のパスに沿うパターンを自動的に適用し、かつ、それに対して固定の初期パラメータを設定する手順を組み込んだものになっています。
以下では、1つ目の手順と2つ目の手順についてさらに詳しくまとめます。3つ目の手順については「ペンツールで図形をパスに沿わせる」のほうで詳しくまとめます。
パスエフェクト版の「パスに沿うパターン」
パターンパスとするパスオブジェクトをクリップボードにコピーしてからスケルトンパスとするパスオブジェクトを選択し、このエフェクトを適用すると、スケルトンパスのスタイルを使ってパターンパスをスケルトンパスに沿うように描きます。具体的な手順は他のパスエフェクトと共通部分が多いので、「パスエフェクトの使い方(共通部分)」のほうにまとめていますが、少しだけ書いておくと、
パターンパスをクリップボードにコピーする → スケルトンパスを選択する → エフェクトを適用する → パターンソースのところに並んでいるボタンのうち、右側の2つのボタン(パスを貼り付け、クリップボードのパスへリンク)のどちらかを押す→そのパターンパスがスケルトンパスに沿って表示される
という手順になります。
パスエフェクトダイアログのパラメータ設定画面は次のようになっています。

パターンパスの並べ方はパターンのコピーというメニューで選択します。繰り返しを選ぶと、パターンパスをコピーしながらスケルトンパスに沿って並べます。繰り返し、引き伸ばしを選ぶと、繰り返しと同じように並べますが、スケルトンパスの端にぴったり揃うようにパターンパスを伸縮してから並べます。単一を選ぶと、コピーせずにパターンパスを1個だけスケルトンパスに沿うように変形します。単一、引き延ばしを選ぶと、コピーせず、かつ、スケルトンパスの端にぴったり揃うように伸縮します。これを選んだ場合は、曲げるパスエフェクトと同じような効果が得られます。
幅を指定すると、パターンパスの横方向(スケルトンパスに対する垂直方向)の幅をその分だけ(その倍率で)広げます。数値で指定するのは難しいので、パスのノードのそばに表示される幅変更用のハンドル(幅の結節点と呼ぶようです)をドラッグして調整するのが良さそうです。
幅を長さの単位に合わせるは少しややこしいパラメータです。このパラメータの意味は「幅の欄に指定した倍率を、パターンパスの幅と長さの比率を維持したままスケルトンパスに合わせて長さを伸ばしたそのときの幅の大きさに対して掛けるのか、パターンパスの元の幅に対して掛けるのか」を示すものということになります。だから、これにチェックを入れると、パターンのコピーが○○、引き延ばしのとき(つまりオリジナルパスの長さを伸ばして並べるとき)に限り、チェックを入れていない場合の幅と差が出ます。
次の例は、左上の矩形をパターンパスにして、横一直線のスケルトンパス上に並べたものです。繰り返し、引き伸ばしを指定して、パターンパスの2倍より少し長く伸ばしています。そうすると1個1個のパターンもオリジナルのものより少し長くなります。この状態で、「幅1.0、幅を長さの単位に合わせるをオフ」(左上)、「幅2.0、幅を長さの単位に合わせるをオフ」(右上)、「幅1.0、幅を長さの単位に合わせるをオン」(左下)、「幅2.0、幅を長さの単位に合わせるをオン」(右下)を指定しています。

上段2つは、長さは伸びていても、幅はオリジナルの1.0倍または2.0倍になっていますが、単位に合わせるをオンにした下段2つは、パターンパスを相似形のまま拡大し、その拡大後の幅を1.0倍または2.0倍にした幅になっています。
他にも、パターンパスをコピーして並べるときに間をどのぐらい空けるか、スケルトンパスの先端からパターンパスまでをどのぐらい空けるか、スケルトンパスからどのぐらい垂直方向にずらして並べるかなども指定できます。
次の例は、左上の長方形をクリップボードにコピーしておいて、左下のパスに対してエフェクトを適用しています。繰り返しを選んでいるので、スケルトンパスの右側の端は少し余るように並べられています。
近接する終点の結合の値にゼロより大きい値を指定すると、パターンパスが閉じていないパスの場合で、コピーすることで隣り合って並べられた2つのパターン同士の端がこの値よりも近い場合は自動的にパターンパスの末端同士をつないでくれます。次の例では、左上のパスをパターンパスとし、近接する終点の結合の値に小さい値を指定すると、パターンパスはばらばらのまま並べられますが、近接する終点の結合の値に大きい値を指定すると、右の結果のように自動的につないで一本のパスにしてくれます。
エクステンション版「パスに沿うパターン」
エクステンション版はほぼエフェクト版と機能は同じです。もちろん、エフェクトとは異なり、スケルトンパスに沿って並んだパターンパスはコピーされたもので、それらをサブパスとするパスオブジェクトとして生成されます。
エクステンション版を実行するには、パターンパスをスケルトンパスよりも前面に来るようにしておいて、パターンパスとスケルトンパスの両方を選択して、エクステンション > パスから生成 > パスに沿うパターンメニューを実行します。するとエクステンションのダイアログが表示されるので、適用ボタンを押します。
生成して並べたパスをバラバラにして独立に編集したい場合は、メニューでオブジェクト > グループ解除やパス > 分解を操作します。
エクステンションのダイアログは次のようになっています。

エフェクト版と大きく違うのは、変形の種類というメニューです。このメニューでは、ヘビまたはリボンを選択することができます。
ヘビを選択したときは画面の平面にぴったり貼り付いているかのようにオリジナルパスが曲げられます。リボンを選んだときは立体的に曲がるリボンの上に貼り付けられているかのようにオリジナルパスが曲げられます。
次の例では、左がヘビで、右がリボンです。
