Inkscapeには、あるオブジェクトのスタイル(色など)に他のオブジェクトのスタイルを転用する手順がいろいろありますが、分かりにくいところもあるのでこのページで整理しておきたいと思います。
- Contents
- スタイルを転用する操作の種類
- 転用されるスタイルの種類
- 新規オブジェクトのスタイル設定
(参考:オブジェクトのスタイルを設定する)
(2023.02.14更新)
スタイルを転用する操作の種類
スタイルを転用する操作には次のようなものがあります。
- いずれかのオブジェクトのスタイルを変更したときの結果を最新のスタイルとして記憶しておいて、別の新規オブジェクトを描くときに流用する。
- 選択したオブジェクトのスタイルをコピーして、ツールごとの初期スタイル(新しいオブジェクトを描くときに使うスタイル)に設定しておいて、そのツールで新規オブジェクトを描くときにそれを流用する。
- クリップボードにコピーされているオブジェクトのスタイル情報だけを取り出して、選択して別のオブジェクトのスタイルに設定する。(編集 > スタイルを貼り付け)
「1」は、ツールの種類によらず、最新のスタイル(いずれかのオブジェクトに対して最近行われた変更操作による変更後のスタイル)をInkscapeがいわばグローバル・スタイルとして記憶していて、それを各ツールで新規オブジェクトを描くときにコピーして使う操作です。
「2」は、矩形ツール、円弧ツール、テキストツールなどのツールごとに、いわばツール・ローカルなデフォルトスタイルとして設定する操作です。
そして、新規オブジェクトを描くときに「1」のスタイルを用いるか「2」のスタイルを用いるかを、あらかじめ環境設定で設定しておきます。
環境設定ダイアログには、次のような設定項目がツールごとにあるので、ツールごとに選択しておいてから、新規オブジェクトを入力します。

最後に使用したスタイルにチェックを入れると「1」のスタイルを使うことになります。
このツール独自のスタイルにチェックを入れると「2」のスタイルを使うことになります。さらに選択オブジェクトから取り込みというボタンを押すと、「2」の操作を行ってツール・ローカルなデフォルトスタイル(つまり「このツール独自のスタイル」)を更新することになります。
転用されるスタイルの種類
スタイルといっても、その内容は「フィルの色」や「ストロークの線種」、「フォントの種類」など、いろんな属性値の集合体です。
そして、スタイルを転用する際のコピーは属性値ごとに行われ、かつ、どの属性値をコピーするかは転用先のオブジェクトの種類によって異なります。
例えば、テキストオブジェクトのフォントの種類を変更すると、「1」によってグローバル・スタイルの属性値のうち、フォントの種類だけが更新されます。変更していない他の属性は更新されません。
その後、テキストツール以外のツールに対して最後に使用したスタイルにチェックを入れておいてから新規オブジェクトを入力すると、そのグローバル・スタイルの複数の属性値のうち、フォントの種類は不要なので無視され、他の設定可能な属性値だけがコピーされて、新規オブジェクトに設定されます。
この場合も、フォントの種類はグローバル・スタイルの中に記憶されたまま残っているので、別のタイミングでテキストオブジェクトを追加するときに設定することもできます。
これと同様のことは選択オブジェクトから取り込みボタンを押してツールごとのローカル・スタイルを更新するときにも起こります。
スタイルに含まれる属性値のうち、どれとどれが転用の対象となるのかがわかりにくいし、フィルとスタイルの色以外のどんな値が現時点のスタイルに属性値として含まれているのかを表示して確認する方法がないので、スタイルの転用を行う操作はしばしば混乱を招くことになると思います。
新規オブジェクトのスタイル設定
Inkscapeの新規オブジェクトのスタイル設定手順には少しクセがあると思います。
本物のキャンバスに新しい絵を描くときの、筆を選んで、絵具をつけて、画面に描く、という作業手順からの類推で、ドローツールでもツールを選んでスタイルを設定してキャンバスに描くという手順になるのが自然なのかなと思いますが、Inkscapeでは、あらかじめスタイルを設定(しかも属性値ごとの設定ではなく他のオブジェクトからの転用で行う)しておいて、ツールを選んでキャンバスに描くという手順しかないので、新規オブジェクトの入力時のスタイルをどうやって設定したらいいのかとまどいがちです。
とまどわなくて済むように、上にまとめたとおり、Inkscapeにはツールごとのローカル・スタイルとグローバル・スタイルの両方が記憶されていて、その中の属性値を適宜更新し、どちらか一方を選んで用いるという流れを理解しておくと良いかなと思います。