このページでは、Inkscapeを使って複数のオブジェクトの色をまとめて同じ色に変更する方法について紹介したいと思います。

(2024.03.03更新)
同時に選択しておいて変更する
まずは基本的な方法から。
まとめて変更したいオブジェクトを同時に選択しておいて、フィル/ストロークダイアログ上で色を指定するとその色に変更できます。

複数のオブジェクトを手で選んでいくのが面倒なら、何かの属性でオブジェクトを検索してヒットした複数のオブジェクトを選択状態にしておいてから色をまとめて変更することもできます。
同時に選択したオブジェクトの色が互いに異なる場合は少しクセがあります。
異なる色のオブジェクトを同時に選択すると、次のようにフィル/ストロークダイアログ上にはその色の平均の値が表示されます。

この状態でダイアログを触らなければ結果的に色の変更は実行されませんが、少しでもダイアログ上の値を変えると即座に複数のオブジェクトが全部その色(平均値の色から変更された色)に変更されます。

複数のオブジェクトのうちの特定の1つの色に統一させたいような場合はスポイトツールを使って統一させたいほうの色を他のオブジェクトに転写させるほうが簡単でしょう。
エクステンションを使って変更する
もとの色と新しい色を指定して実行すると、もとの色で塗られたところを全部新しい色に変更してくれるエクステンション「色の置換」があるので、これを使ってもまとめて色を変更することができます。
スウォッチを使って変更する
オブジェクトに直接色を設定する代わりに、新しく設定したい色をスウォッチに色見本として登録しておいて、その色見本を複数のオブジェクトに設定することでまとめて変更することもできます。
例えば次のように緑のオブジェクトを選択しておいてスウォッチに色見本として登録します。(その手順の詳細は「独自のカラーパレット/スウォッチダイアログを作る」のページを)

そして同じ緑に変更したいオブジェクトを選んで、スウォッチダイアログ上でこの色見本を選択すると、次のようにオブジェクトの色を揃えることができます。色見本はドキュメントデータ(Inkscape SVG形式)の中に登録されていてファイルにも保存されるので、一度登録しておけばその色見本を使って複数のオブジェクトの色を変更することはいつでも可能です。

スウォッチの色見本を通して同じ色に設定することのメリットは、一旦色を揃えた後でもフィル/ストロークダイアログ上でその色見本の色を変更すると、同じ色見本を設定したオブジェクトの色をまとめて別の色にいつでも変更できるという点です。

不透明度を変えずに色だけ変更する
次のように同じ色で不透明度だけが異なるオブジェクトが描かれているとします。

これを次のように2つの不透明度をそれぞれ維持したまま色だけ変更したいときはどうすればよいかという問題です。

前提として「不透明度についてのあれこれ」のほうで紹介したことをここでも簡単に書いておきます。Inkscapeでは不透明度を設定できるGUI部品が次のように2個所にあります。

不透明度1で不透明度を設定している場合は不透明度はRGBなどの色情報の一部分として扱われるので色と不透明度を独立して変更することができません。
不透明度2で不透明度を設定している場合は不透明度はオブジェクトの色とは別の属性として設定されるので色と不透明度を独立して変更する(色だけ変更する)ことができます。
したがって透けて見えるオブジェクトを描くときに不透明度2のほうで不透明度を指定するようにしておけば、上に書いたような方法で不透明度を変えずに色だけ変更することができますが、不透明度1のほうですでに設定されていたり不透明度1のほうで設定したい理由がある(例えばフィルとストロークで異なる不透明度にしたい)場合はそうもいきません。
そこで不透明度1のほうで不透明度が設定されているケースで不透明度を維持したまま色だけ変更するにはどうしたらよいかということです。
不透明度1のほうで不透明度を設定している場合、上に書いた基本的な手順を使ってフィル/ストロークダイアログから同じ色に変更しようとすると、次のように不透明度も共通の値になってしまうので、2つの不透明度をそれぞれ維持することができません。

上に書いたエクステンションを使う方法でも同じように不透明度は共通の値に変更することしかできません。
そこでスウォッチを使います。
スウォッチの色見本を使って色を設定した場合は「不透明度についてのあれこれ」のほうでも紹介したように、色見本の不透明度と変更対象のオブジェクトの不透明度とを掛け合わせた不透明度になるという動きをするので、色見本の不透明度を「1.0」(Inkscapeの画面上では「100」)にしておけば、変更対象の各オブジェクトの不透明度を変えずに(1.0をかけてももとの不透明度と変わらないから)色だけを色見本のものに変えることができます。
具体的な手順は次のようになります。
新しい色を不透明度「100」で塗ったオブジェクトを色変更対象のオブジェクトとは別に、描いて(例えば次の小さいピンクの円)、それをスウォッチに色見本として登録します。

そして変更対象のオブジェクトを選択し、スウォッチダイアログを表示させます。スウォッチダイアログにはさきほど登録した色見本が表示されます。

そしてこの色見本をクリックすると、選択している両方のオブジェクトに同じ色(この例ではピンク)が設定されますが、それぞれの不透明度は変化しないままにすることができます。
