このページでは、Inkscapeを使って塗りつぶしパターンの形や色をいつでも修正できるようにするというテクニックについて紹介したいと思います。

(2024.04.15更新)
自分で描いたオブジェクトを塗りつぶしパターンに変換してフィルやストロークの塗りつぶしに使うには、通常は「パターンを使って塗りつぶす」のほうでも書いたように、1つまたは複数のオブジェクトを選択しておいてメニューからオブジェクト > パターン > オブジェクトをパターンにを操作します。
そしてこれも「パターンを使って塗りつぶす」のほうで書いてありますが、パターンに変換した後でそのパターンの中の図形を修正(形を変えたり色を変えたり)するには、一旦パターンを元のオブジェクトに戻す操作を行ったうえで、修正し、再度パターンに変換するという手順になります。
ただし、Inkscapeユーザの間では割と周知なテクニックらしいですが、その手順を踏まなくてもパターンの中の図形を直接修正できるようにする(塗りつぶした状態のままで修正する)方法があるそうです。
どうするかというと、パターンに変換する対象を描いたオブジェクトそれ自体ではなく、描いたオブジェクトから生成したクローンに切り替えます。そうすると、クローン元のオブジェクトの形や色を変更した結果が、パターンに含まれているクローンにもそのまま反映されるので、結果的にパターンの中の図形を修正することができるというわけです。
そもそもパターンに変換したといっても元のオブジェクトの属性はSVG形式データとして保持されたままなので直接修正できても不思議はないのですが、Inkscapeはたまたまその修正機能を持ち合わせていないので、パターンに変換したあとでは手出しできない状態になってしまっているだけで、クローンによる属性の継承機能を使えば、クローン元オブジェクトの属性を修正することで間接的にパターンのほうの属性も修正できるという性質があるわけです。
実際にやってみます。
まず塗りつぶしパターンにしたいオブジェクトを描いて、さらにそのクローンを生成します。

すると次のように塗りつぶしパターンに変換されます。

フィル/ストロークダイアログの上のパターン一覧に追加され、元のクローンはそのパターンで塗りつぶされた矩形オブジェクトに変換されます。
ここまではクローンをパターンに変換しても通常のオブジェクトをパターンに変換しても特に違いはありません。
追加したパターンを別の円オブジェクトの塗りつぶしに使ってみます。

こうしておいて、クローン元オブジェクトのほうを修正します。クローン元オブジェクトのほうはパターンに変換していないので、通常のオブジェクトのままですから、普通に形を変えたり色を変えたりすることが可能です。
ここでは色を変えてみます。すると、変更後の色は自動的にクローンによって継承され、パターンの中のクローンの色に反映されます。
形や色を調整しながらパターンとしての表示の具合をチェックしたいときも活用できそうなテクニックです。
ところで、このテクニックを使えばパターンの中の図形を修正することは簡単にできるじゃないかと言いたいところですが、そうでもないです。
このテクニックはクローンとクローン元オブジェクトとの関係を利用しているので、クローン元オブジェクトが常に存在する状態を維持しないといけません。例えばこのクローンを使ったパターンを「オリジナルのパターンをメニューに登録する」に書いたように単独でオリジナルパターンとして登録して他のドキュメントでも使えるようにすることはできません。このクローンを使ったパターンで塗りつぶしたオブジェクトを他のドキュメントにコピー&ペーストするときも、クローン元オブジェクトごとペーストしなければなりません。
ちなみにクローン元オブジェクトを削除するなどして取り除いてしまうと、このクローンを使ったパターンに含まれるクローンのデータは自動的にクローン元オブジェクトのデータに置き換わって、通常のパターンと同じ構造のデータになってしまうので、修正できないものになってしまいます。