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Inkscapeのアウトラインとストロークとパス

 Inkscapeではアウトラインストロークパスという用語が出てきますが、どれもオブジェクト(画像オブジェクトを除く)の線を指すという点では似た用語なのでしばしば混乱します。そこでこのページでは、アウトラインストロークパスの3つにどういう違いがあるのか、メモしておきたいと思います。

 (参考:パスを作成/編集

はじめに

 ところでビットマップ画像オブジェクトには線や枠がなく、アウトラインもストロークもパスも無関係なのでここでは除外しておいて、シェイプとパスについて書きます。

 また、これらの用語はお絵描きツール一般で共通の用語とも思われないので、ここでは「Inkscapeで言うところのアウトライン(ストローク、パス)」という観点でまとめてみたいと思います。

(2023.08.12更新)

パスとは何か?

 パスは、点と点をつなぐ線を単位(セグメント)として、それを複数連結したオブジェクト、またはそのデータです。シェイプも複数の線を組み合わせた構造(例えば矩形は4本の線分)の場合がありますが、それはあくまでも表示されたときの見た目であって、データ構造としてはパスのようにセグメントの位置情報を持っているわけではないので、パスシェイプは区別されています。

 次の例では左が星形ツールを使って描いたシェイプ(星形)で、右が全く同じ見た目ですがパスです。次の例のようにノードツールを使ってノードを表示させると、左のシェイプ版星形では2つのノードの位置(座標)だけを保持していてそれだけで形が決まっているのに対し、パス版の星形では各頂点のノードの位置を保持していてそれで形が決まっていることがわかります。

 ちなみに、シェイプを選択しておいて、メニューからパス > オブジェクトをパスへを操作すると、見た目はそのままで、パスのデータ構造に変換してくれます。一旦パス構造に変換してしまうと、元に戻す(Undo)操作以外では元のシェイプに戻せないようなので注意です。(戻す方法あるのかな?)

ストロークとは何か?

 ストロークは、パスやシェイプの線や枠の部分に色などを付けて表示したものを指します。シェイプはパスではありませんが、ストロークは存在します。太さや色や点線などのスタイルの設定に応じて、いろんな見た目のストロークが描かれます。「塗りなし」というスタイルが設定されたストロークもありますが、その場合は(たぶん)ストロークは無いに等しいです。

アウトラインとは何か?

 アウトラインは、ストロークを描く際に、その元となる骨の部分にあたる線(通常は表示されない仮想的な線)を指します。ストロークの真ん中を通る線とも言えそうです。逆に言えばアウトラインが中心にくるようにストロークを描いているということもできます。

 アウトラインはあくまでもデータ上の線なので、ストロークとは違って通常は表示されません。ツールバーノードツールをクリックして、オブジェクトの上にマウスカーソルを持っていくと、(デフォルトでは)薄目の青い線で一瞬だけアウトラインが表示されます。また、ノードツールでパスオブジェクト(シェイプではない)を選択しておいて、ツールコントロールバーの右のほう(画面右上)に置かれている次のパスのアウトラインを表示ボタンを押すと、アウトラインがノードといっしょに常に表示されるようになります。

アウトライン表示ボタン

 少しややこしいのですが、パスエフェクト機能を使って変形されているパスオブジェクトの場合に限って、エフェクトをかける前のパスとは別のところを通るようにストロークが描かれるのですが、エフェクトをかける前のパスの線をアウトラインと呼ぶのか、エフェクトによって変形された後のパスの線をアウトラインと呼ぶのか、よく分かりません。Inkscapeのメニューなどに「アウトライン」というワードがよく出てきますが、どちらを指す場合も「アウトライン」というワードを使っているようです。例えば、Bスプラインモードで描かれたパスは、実は「Bスプライン」という名前のパスエフェクトをパスに適用した結果を表示したものとなっているのですが、パスのアウトラインを表示ボタンを押すと、エフェクトをかける前のパスが表示され、アウトライン表示モードにするとエフェクトをかけた後のパス(変形後のパス)が表示されます。既存の解説コンテンツを読んでみるとどちらの使い方もアリのようにみえます。

テキストなどのアウトライン

 ちなみに、テキストなどのオブジェクトの縁(ふち)の線のことを「アウトライン」と呼ぶことが一般によくあるようですが、Inkscapeでよく使われる「パスの骨組みにあたるアウトライン」と一般の「図形の縁にあたるアウトライン」は別物なので、文脈からどちらを指しているのか区別しないといけないです。

これは「縁(ふち)」のほうのアウトライン

 SVG形式の規格を読むと、そちらでは「パスの骨組みにあたる線」のことは「パスデータ」と呼んでいるようですが、これだと「パス」という言葉がデータのほうを指しているのか画面に見えているパスオブジェクトを指しているのか分かりにくいので、Inkscapeでは「パスデータ」のほうを「アウトライン」と呼ぶことにしたのだと思います。それはそれで用語がかぶっているので分かりにくくなってしまっていますが…。

 (参考:文字(テキスト)をアウトラインに変換する