このページでは、Inkscapeでオブジェクトをクリックしたときにどのような動きをするのかを補足整理したいと思います。

(参考:オブジェクトの選択操作)
(2024.09.10更新)
ドロー系ツール全般でオブジェクトのクリック操作に統一された機能が割り当てられているわけではないので、Inkscapeならではのクリック操作を覚えなければならないのですが、クリックだけでいろんなことを可能にしようとしているせいか、どんなに整理してもシンプルに理解するのが難しくて、そう簡単には慣れないというのが正直なところです。
でもドロー系ツールというものはそういうものだとも思いますし、Inkscapeの動作も他のツールに比べてそこまで不自然なものだということもないと思います。
ともかくオブジェクトのクリック時の動作についてまとめておこうと思います。
クリック関連動作一覧
まずオブジェクトのクリックに関連してInkscapeがどんな動作をするのかを一覧します。
この一覧を眺めただけでも、オブジェクトをクリックしたときに何が起こるのかを予想するのは慣れないと難しいことがわかります。
- オブジェクトを1回クリックすると選択状態になる。
- Escキーを押すと何も選択していない状態になる。
- 何も見えないところをクリックすると何も選択していない状態になる。
- 透明かつ単一の色で塗られたところは何も見えないところ。
- グラデーションやパターンの透明部分は何も見えないところではない。
- 点線の隙間は何も見えないところではない。
- 選択状態のオブジェクトをもう1回クリックすると回転ハンドルが現れる。
- オブジェクトグループやレイヤはツリー状に階層化することができる(グループのグループ、レイヤの下のレイヤを作ることができる)。
- 現在フォーカスのあたっている1つの階層の直下にあるメンバの単位で選択対象になる。
- オブジェクトグループに「入る」操作を行うとそのグループにフォーカスが移り、そのグループに属するメンバ(子要素)単位で選択対象になる。(「入る」操作については後述)
- 複数階層のグループの場合は階層を上下するように入ったり出たり(抜けたり)することができる。
- Ctrlキーを押しながらクリックするとオブジェクトグループの階層がスルーされて末端のオブジェクトの単位で選択状態になる。
- Altキーを押しながらクリックするたびに1つずつ下に重なっているオブジェクトが選択状態になる。(一周すると一番上のオブジェクトに戻る)
何とも複雑な動きをします。憶えてしまえば簡単なのですけれど。
ここは押さえておきたい
Inkscapeの動作と合わせて、以下のことは押さえておきたいところです。
- オブジェクトもオブジェクトグループもクリック操作において同列に扱われる。ファイルとフォルダ(ディレクトリ)の関係に似ている。
- オブジェクトグループの階層はキャンバス上ではわかりにくいので、レイヤーとオブジェクトダイアログで確認するとよい。(参考:「レイヤーとオブジェクト」ダイアログ)
「グループに入る」とは?
Inkscapeでは各オブジェクトをいずれかの「レイヤ」に配置し、ある時点では1つの「レイヤ」にフォーカスをあててその上のオブジェクト群に絞って選択対象としています。
オブジェクトグループについても同じようにある時点で1つのオブジェクトグループにフォーカスをあててそれに属するメンバ(オブジェクトや下位のオブジェクトグループ)に絞って選択対象とすることができます。
その機能は「グループ〇〇に入る」と表現されています。
このあたりはファイルシステムでいうところの「カレントディレクトリ」、「ディレクトリを移動する」という概念に似ています。
入りたいグループ(のオブジェクト)の上でマウスの右ボタンをクリックすると表示されるメニューの下のほうに「グループ〇〇に入る」という項目が自動的に追加されます。「〇〇」の部分は右クリックしたグループの名前が自動的に挿入されます(下の例では「g16」)。

グループに入ると、一旦何も選択されていない状態になり、その後はそのグループ全体を選択するのではなくグループ内のメンバ単位の選択が行われます。メンバのオブジェクトをクリックすると通常はそのオブジェクトが属するグループのほうが選択されますが、グループに入ったあとはクリックしたオブジェクトだけが選択状態になります。
この状態をレイヤーとオブジェクトダイアログを使って具体例で示すと、「g16」というグループに「入った」状態は次のようになっています。

「g16」というグループの直下には「path16」、「path17」、「g15」、「g12」、「g9」というオブジェクト(やグループ)が属しています。「g16」に入った状態で左のキャンバスの上をクリックすると、これら直下のオブジェクト/グループのいずれかが選択されます。もちろん他のオブジェクトなどが選択不可能ということではなく、例えばレイヤーとオブジェクトダイアログでどのオブジェクトでもいつでも選択することは可能です。
どのグループにも入っていない状態でも、クリック時には現在フォーカスがあたっているレイヤの直下のメンバのいずれかが選択されます。
同じように全選択や他のオブジェクトとの同時複数選択についても、グループ単位ではなくメンバ単位に行われるようになります。
オブジェクトグループをダブルクリックしてもそのグループに「入る」ことができます。
うっかりダブルクリックしてしまって意図せずにグループに入ってしまい、どのオブジェクトが選択可能な状態になっているのか分からなくなってしまうこともあります。
特定の1つのグループに「入る」と、それ以降は「抜ける」という操作(右クリックメニューのまたは他のオブジェクトの選択または何もないところをダブルクリック)をするまではそのグループ内のメンバであるオブジェクトやオブジェクトグループが選択対象になります。
現在フォーカスをあてている(入っている)グループに属していない他のオブジェクトを選択すると、そのオブジェクトが属している階層にフォーカスが自動的に移るので、グループに「入って」いる状態も同時に解除され、直前に選択していたオブジェクトを再度選択しようとしても今度は「入って」いない状態になっているので今度はグループのほうが選択されてしまいます。いつの間にかグループに「入って」いる状態が解除されてしまうので、直感的に分かりにくい理由になっていると思います。
オブジェクトグループが階層構造になっているときは、「抜ける」操作を行うと1つ上の階層のグループに入ります。
今現在どのグループに入っているか(どのグループにフォーカスがあたっているか)はステータスバーの左端に表示されます。どのグループにも入っていないときはここに現在編集対象としているレイヤの名前が表示されます。
