このページでは、Inkscapeで作成したドキュメントを紙に印刷したいときに必要なノウハウをまとめてみたいと思います。

(2024.09.04更新)
Inkscapeを使う個人的な目的からすると、Inkscapeで作成した絵をWeb上で表示させることができれば十分なので、InkscapeのドキュメントをPNG画像としてエクスポートすることができればゴールなのです。
ただ、せっかくInkscapeの使い方を覚えたのであれば、年賀状や名刺のような紙への印刷のノウハウも覚えたほうが楽しそうだなと思うわけです。
これが会社の会議で使うプレゼン資料のような印刷物であれば、細かいことは気にせずにPDFで保存して画面に表示して確認して印刷メニューを操作するだけなのでしょう。
しかし、年賀状や名刺やチラシやポスターなどを印刷することを考えると、色が思った通りに出るのかとか、解像度が十分なのかとか、いろいろ気にすることがありそうです。
ページの設定
Inkscapeではキャンバス全体を複数のページに分けて、ページごとにサイズや余白などを設定することができます。当然印刷するときはページごとにその設定に従って印刷することができます(できるはず?)。
詳しくは「ページツール」を。

1つのキャンバス上でチラシの表裏を作成したり、縦長の資料と横長の資料を作成したりすることができそうです。
マージンと塗り足しの設定
ページの端っこにマージン(余白)や塗り足しを設定して、印刷時に端のところがきれいに印刷されるようにすることができます。
作成したドキュメントデータを印刷サービスに渡して印刷してもらうときに印刷サービス側から設定しておくように指示される場合もあります。
詳しくは「ページのマージンと塗り足し」を。
フォントの互換性
Inkscape上でテキストを描くのに使っているフォントと同じフォントのフォントデータが印刷時に利用できるとは限らない(特に印刷サービスに印刷をお願いするとき)ので、テキストについては全てパスに変換してからファイルに保存することが推奨されています。一方、フォントデータそのものをInkscapeからエクスポートするファイルの中に一緒に格納してしまえる場合もあるようです。
詳しくは「フォントの互換性について」を。
印刷時の色
編集時に画面で見ていた色と同じ色で紙に印刷してほしいですが、見た目が同じ色で印刷するにはどんなことに注意したらいいのでしょう?
Inkscapeでオブジェクトの色を設定するときは通常はRGBやHSLの値を設定しますが、これは画面の表示色を指定するためのパラメータで、光の混ぜ方を記述するものになっています。
一方、印刷はインクを使って行われるのでインクの混ぜ方を記述する「CMYK」と呼ばれるパラメータ(「CMYKカラーモデル」と呼ばれる)で色を設定する場合が多いようです。
ただ、RGBなどの値とCMYKの値を見た目に同じ色になるように揃えることは意外に難しいそうです。お絵描きツールそれぞれが工夫してなんとか揃える努力をしているようですが思った色で印刷できないという声もよく見かけます。
というわけでInkscapeの場合も「CMYKカラーモデルで表される色情報をInkscapeのキャンバス上で設定したり、ファイルに格納したりするにはどうすればいいのか?」ということが問題になります。
Inkscapeと「CMYK」との関係はいろいろ複雑な事情があるので詳しくは「CMYKモデルについて整理してみた」を。
印刷サービスの利用
特にカラーで印刷したいときは手元のプリンタではなくネットで注文可能な印刷サービスを利用することが多いのではないかと思いますが、Inkscapeがベースとするファイル形式であるSVG形式ファイルを直接印刷してくれるサービスは多くはないようです。
ざっと探してみるとPDFファイルをアップロードすると印刷してくれるサービスが目立ちます。
InkscapeはPDFファイルにエクスポートすることができるので、作成したドキュメントをPDFファイルにして印刷をお願いすることはできそうです。
というわけで、2024年現在で個人的に印刷サービスを使って印刷を頼む予定はないですが、印刷サービスを利用したい場合にInkscapeを使って行う作業の流れはこんな感じになるのかなと考えてみた一例を簡単にまとめておきたいと思います。作業ステップごとの詳細は「InkscapeのCMYK対応機能の詳細」や「ページのマージンと塗り足し」や「『トンボ』を描く」や「ImageMagickでCMYK化する」に書いてあります。
- パソコンにプリンタ用のICCプロファイルをインストールする。
- ドキュメントのプロパティでそのICCプロファイルを使用するよう設定する。
- ページツールでマージンと塗り足しをそれぞれ「3mm」に設定する。各オブジェクトは印刷後にマージンと塗り足しの間で切り取られることを前提に描いていく。
- 色を設定するときはフィル/ストロークダイアログで「RGB」や「CMYK」ではなく「CMS」を選択し、ICCプロファイルに従ったCMYK値を使って設定する。
- テキストオブジェクトをパスオブジェクトに変換する。
- トンボを手で描く。トンボのストロークの色はC/M/Y/Kすべて「1.0」に設定する。
- トンボが内側にくるように塗り足しの幅を増やす。
- PDFファイルにエクスポートする。
- 「ImageMagick」を使ってPDFファイル内の色情報をCMYK値に変換する。
- PDFファイルをアップロードして印刷を依頼する。