このページではInkscapeを使ってテキストにいろんな装飾を施す方法をまとめます。

ネット上ではテキストを装飾する様々な方法が紹介されていて、同じような見た目の装飾であっても編集手順が異なるものが数多く示されています。それらの編集手順にもメリットとデメリットがあるので、それも含めてテキスト装飾のノウハウをここに追加していきたいと思います。
- Contents
- テキスト装飾に使われる編集機能
- 太い文字
- 縁取り
- 立体化(3D文字)
- フィルタの適用
テキスト装飾に使われる編集機能
まず、テキスト装飾によく使われる基礎的な編集機能を紹介しているページへのリンクをまとめておきます。
- インセット/アウトセットを描く
- 文字(テキスト)をアウトラインに変換する
- 変形を再適用する
- クローンを使っていろんなテキストを作る
- パスエフェクト:クローンオリジナル
- エクステンション:長い影(モーション)
- エクステンション:補間
太い文字
オフセットを使う方法
ダイナミックオフセットを使ってテキストオブジェクトのアウトラインを外側に広げるようにドラッグすることで太さを微調整します。

この方法の場合テキストは自動的にパスに変換されるので文字列として編集することはできなくなります。
また、元のパスを均等に外側に広げているので隅のところが丸くなります。
ストロークの幅を大きくする方法
ストロークの幅を大きくしても太い文字にできます。

テキストオブジェクトのストロークはデフォルトでは幅ゼロになっていますが、この幅を大きくします。

さらにスポイトツールを使ってストロークをフィルと同じ色に設定すれば太い文字になります。

またスタイルの角を変えれば隅のところを丸いものから四角いものにすることができます。

テキストオブジェクトのまま太くすることができるので、太い字にしたあとも文字列として編集可能です。
どのぐらい太くするかはハンドル操作で微調整することはできず、幅の大きさを数値で指定するしかありません。
縁取り
オブジェクトを複製する方法
テキストオブジェクトを選択しておいて「Ctrl+"D"」を押すことによってぴったり重なる状態で複製し、色を変更し、重なりを入れ替えて下に重なるようにし、上で書いたような方法で太い字にすると縁取りになります。

縁取り部分と元のテキストは別々のテキストオブジェクトになるので、文字列として編集するときはそれぞれテキストツールで同じように編集する必要があります。
ストロークの幅を大きくする方法
太い字にするときと同様に、テキストオブジェクトのストロークを直接編集して、幅を大きくします。

ただし、単に幅を大きくするだけでは太くなったストロークによって元の文字が覆い隠されてしまう(上の例の2番目のもの)ので、次のようにストロークのスタイルの中にある「順番」という属性を切り替えて、フィルのほうがストロークよりも上に重なって描かれるようにします。すると上の例の3番目のもののように太いストロークがフィルによって隠されて縁取りのようになります。
この方法はテキストオブジェクトそのままで縁取りが可能で、文字列としての編集もテキストツールを使ってそのままできますが、ストロークとしてサポートされているパラメータ(グラデーションやパターン)の種類が限定されています。例えば縁取りをテキストから少しずらしたり、斜めにぼかしたりするようなことはできません。
クローンオリジナルエフェクトを使う方法
「クローンオリジナル」というパスエフェクトがあり、これを使うとテキストオブジェクトの文字列は継承しつつスタイルは自由に設定できるオブジェクト(クローン)を作ることができます。
この方法ならテキストの下にスタイルを変えて縁取りにしたオブジェクト(クローン)を重ねることで上に書いた「オブジェクトを複製する方法」と似た効果を得ることができますし、複製ではなくクローンなので、縁取りをした状態から文字列を編集することもできます。

ただ、クローンオリジナルエフェクトには正式なマニュアルが見つからず、少し不思議な動作をするという面もあるので「文字列編集可能な縁取り」として解説動画などがたくさんありますが、個人的にはおすすめしたくはない方法です。
立体化
変形の再適用を利用する方法
Inkscapeにはオブジェクトの1回の「複製+移動/拡縮など」を「Ctrl+Alt+"D"」を押すたびに繰り返してくれる「再適用」という機能があります。
これを使ってテキストを立体的に見えるようにする方法です。
まずテキストを「Ctrl+"D"」でぴったり重なっている状態で複製します。そして複製したテキストの一方の色を適当に変更し、ドラッグを1回だけ行ってほんの少し移動します。例えば次のように色を変更したほうのテキストをほんの少し右下に移動します。

一部分拡大すると上のようにほんの少しだけ移動させていることがわかります。
この「Ctrl+Alt+"D"」を押すことによる「複製+ほんの少しの移動」を何回か繰り返します。立体的に浮かび上がらせる高さのイメージに合わせて適当な回数繰り返します。

これだけでは「再適用」の操作によって後から複製したほうのテキストがみんな上に重なってしまっているのでよくわかりません。一番下に隠れている元々のテキストを選択して重なりを一番上に持ってくると、次のように立体化されたテキストのような状態になります。

この方法は少しずつずれたオブジェクトを何枚も重ねて描いているだけなので、立体の側面にあたる部分を通常のフィルのように編集することはできません。
「長い影」エクステンションを使う方法
Inkscapeには上に書いた「再適用」を使った方法と同様の立体的な絵を、立体の側面にあたる部分として隣り合うパスを生成することによって描いてくれる「長い影」というエクステンションがあります。
これを使えばテキストにも立体の側面にあたる部分(すなわち「影」)を生成させることができます。
「長い影」を適用しようとすると次のようなダイアログが表示されます。このダイアログでは影の長さと角度を指定するようになっているので、次のように適当な値を指定します。

立体化対象のテキストオブジェクトはこのエクステンションが適用可能になるようにパスオブジェクトに変換しておく必要があります。
そうしておいてこのエクステンションを適用すると次のようになります。

適用対象のオブジェクトと同じスタイルで「影」が付けられるので、これだけでは立体化されているように見えません。
適用対象のオブジェクト以外のパス(すなわち「長い影」エクステンションによって生成されたパス)だけを選択して色を変えると、次のように立体的に見えるようになります。

これでもいいのですが、よくみると「影」の部分に余計な細い線が見えます。これは生成されたパス同士の境界のところの隙間が見えてしまっているからです。
このうっすらと見えてしまってる細い線を消したいときはその細い線の両側のパス(隙間のある境界を挟んでいるパス)を選択して「パスの結合」を行って一本のパスにします。そうすると当然境界も無くなるので細い線は消えます。どれとどれを結合すべきなのかは適宜判断しないといけないので手間のかかる作業ですが、結合を繰り返していけば次のように不要な線は見えなくなります。

ただ、Inkscapeのエクステンションは詳しい仕様がはっきりしないものも多いので、この方法で立体化を行った場合思いもしない動作をする可能性があり、注意が必要です。
一方で、ちゃんと「面」を表現するパスを生成してくれるので、グラデーションを加えたりしてもっとかっこいいデザインに変更する自由度は高いと思います。
「パス間の補間」エクステンションを使う方法
上に書いた「変形の再適用を利用する方法」と似ていて、少しづつずらしたパスを重ねていくように描くことで立体に見える絵にする方法ですが、こちらは「パス間の補間」というエクステンションを使うので一発でパスの生成と重ね描きが可能です。
このエクステンションは2つの異なるパスを選択して適用すると、パス1からパス2への変化の過程を表すような中間パスを生成してくれるというものです。これを利用して立体の側面かのように見える絵を作成します。
まず立体化対象のテキストを「Ctrl+"D"」でぴったり重なる位置に複製し、複製したものをパスに変換し(このエクステンションを適用するために必要)、色を変えます。

さらにもう1個テキストをコピーして、こちらも色を変えた上で少し小さくし、下に重ねます。この下に重ねたテキストのほうは立体化したときの「底」の部分になります。

そして色を変更した2つのパスを同時に選択しておいて「パス間の補間」エクステンションを適用します。すると左の絵のように大きいパスから小さいパスに向かって少しずつ変化するパスを自動的に追加してくれます。このままでもいいですが、一番下に隠れている最初のテキストオブジェクトを選択して一番上に重なるようにすれば右の絵のようにテキストを立体化したような見た目になります。

パスに変換しているので文字列として編集することはできなくなりますが、遠近感を出しやすい方法です。
フィルタの適用
Inkscapeにはオブジェクトの表示の際にエフェクトをかけてから表示するための各種フィルタが組み込まれているので、これを使うとテキストオブジェクトの場合もいろんな装飾が可能になります。
また、フィルタはオブジェクトの最終的な表示の段階で機能するものなので、テキストオブジェクト単体で変化を付けることができ、テキストとしての編集もそのまま可能で、文字の挿入や削除、フォントの切替などもできるという利点があります。
欠点としては各フィルタの結果がどのようなものになるのかを説明してくれている解説コンテンツがほぼないことと、フィルタのパラメータを試行錯誤で細かく調整しないとフィルタを適用した結果が「それっぽく」ならないことです。
影を付けて盛り上げる
フィルタの「ベベル > 反射光」と「光と影 > 影を落とす」の2つのフィルタを使うと次のように盛り上がったようなテキストになります。

特に「影を落とす」フィルタはオブジェクトのフィルの外側にも内側にも好きな色で影を付けることができるので、何回か重ねて適用することで右上と左下で少し違う影を付けたりして盛り上がった感じを出すことができると思います。