Inkscapeの新しいバージョン(1.4.2)で主にどのような変更があったのかをリリースノートを読みながらまとめていきたいと思います。ただし、英語力不足で意味が読み取れないところも多いし、不具合の症状をひとことで説明してあるだけので、誤解しているところもあるかもしれません。両方のバージョンでいろいろ試してみて、やっとどういう変更がなされたのかが分かったものもあります。
(参考:バージョン1.4の変更点)
なお、バージョン1.4.2にアップデートして普通に使っていれば自然に分かってくるような(あるいは変化していることにも気づかないような)細かい変更点や異常終了してしまうバグの修正などについてはとりあえず省略します。
(2025.05.15更新)
ユーザインタフェース関連
(ウィンドウの幅と高さ)ver1.4では、ウィンドウの幅や高さを縮めたときに、ツールコントロールバーやコマンドバーに並んでいるアイコン群の一部が適宜ドロップダウンメニューに切り替わる(そうするとウィンドウ全体の幅や高さが小さくなる)ようになっていましたが、ver1.4.2でドロップダウンメニューに切り替わるアイコン群が増えました。
ver1.4では次のようにドロップダウンメニューに切り替わるアイコンが少なかったし、縦方向のコマンドバーはほとんどドロップダウンメニューに切り替わっていなかったので、ウィンドウの幅と高さはそれほど縮まりませんでした。

ドロップダウンメニューに切り替わるアイコンが増えたので、ウィンドウの幅と高さをもっと縮めることができるようになっています。赤く囲ったあたりが今回ドロップダウンメニューへの切り替え対象に追加されたところです。

(ガイドラインのメッセージ)キャンバス上のガイドラインにマウスカーソルを重ねた時にステータスバーに「ガイドラインをダブルクリックすればガイドラインの設定画面が表示されるよ」というメッセージが表示されるようになりました。このダブルクリック機能の存在はユーザに認識されにくいので、メッセージを追加したのだと思います。
(移動量のズレを解消)矢印キーでオブジェクトを移動するとき、環境設定で設定した「矢印キー1回あたりの移動量(mm)」に正しく従うようになりました。(ver1.4ではちょっと小さいほうにズレていました)
(モジュラーグリッド)モジュラーグリッドの大きさに負の数を指定して左下を原点にしたときにもグリッドが表示されるようになりました。(というようなことが書いてあるのですが、ver1.4とver1.4.2の動作を比較しても違いが分からず、どういう症状が改善したのか、よくわかっていません)ダイアログ関連
(バッチエクスポート)バッチエクスポートのときに保存先のフォルダが存在しない場合の動作が正しくなりました。存在しないフォルダに保存しようとしたときに「(存在しないフォルダの名前)に保存しようとしているよ」というメッセージが表示されるはずのところが「(別のすでに存在するフォルダの名前)に保存しようとしているよ」という間違ったメッセージが表示されていたというバグを修正したということが書かれていますが、試しに存在しないフォルダに保存しようとしてみたら、次のように「空」のメッセージが表示されました。どういうことなのかは分かっていません。

(Asian patterns)組み込みパターンの1つ「Asian patterns」の色を変更できるようになりました。ver1.4では線の色を変えることができませんでしたが、ver1.4.2ではパターン設定画面から色を変更できるようになりました。

(レイヤとオブジェクトダイアログ)レイヤとオブジェクトダイアログでオブジェクトグループをクリックすると、そのグループのメンバもハイライト状態になるようになりました。ver1.4ではクリックしたグループだけがハイライト状態になっていました。また、レイヤとオブジェクトダイアログでレイヤをクリックすると、選択状態になる代わりにそのレイヤがアクティブになって「現在のレイヤ(current layer)」になるようになりました。(詳しくは「レイヤ/グループを選択する」を)
(パレットファイル)拡張子が「.ase」のパレットファイルを正しくインポートできるようになりました。
ツール関連
- 計測ツールのツールコントロールバーのオプション項目の名前が分かりやすいものになりました。(同じ名前の項目が2つ並んでいて区別がつかなかったらしいです)
- スプレーツールの「(不)透明な領域上に適用」というオプションの切り替えが正しく反映されるようになりました。
ビットマップ関連
「ビットマップのコピーを作成」をしたときに、「ドキュメントのプロパティ」でのアンチエイリアスの設定(アンチエイリアスを使用するか否か)に正しく従うようになりました。次の例は左から、テキストオブジェクト、アンチエイリアスを使用せずにビットマップのコピーを作成、アンチエイリアスを使用してビットマップのコピーを作成した例です。

ファイル関連
- PDFファイルのインポート/エクスポートに伴うバグがいくつか修正されました。
パスエフェクト関連
- 「鏡映対称」というエフェクトで、複数ページの存在するドキュメントでも正しく動作するようになりました。
- 「透視図/エンベロープ」というエフェクトで、手違い(?)で表示されなくなってしまっていたパラメータ項目が復活されました。
パス操作関連
- パス操作(「差分」など)を行ったときにパスの塗りつぶしのルールを正しく適用するようになりました。この修正で「ブーリアン操作」という名前のパスエフェクトが作り出す「穴」の処理も正しく行われるようになりました。
- パス操作(「差分」「交差」など)で円弧オブジェクトを交点のところで切断したとき、円弧の形がくずれないようになりました。同じように、この修正でシェイプビルダツールを使って円弧オブジェクトを他のオブジェクトと合体したときも円弧部分の形がくずれないようになりました。
特に後者はどういうことかよく分からなかったので、「差分」操作で試してみました。まずver1.4で差分を実行してみます。

当たり前ですが、「差分」を実行すると2番目の図のように一部が欠けた形になります。ここに3番目のように元の形の楕円を重ねてみます。これでは図が小さいのでわかりにくいですが、拡大してみると、次のように交点のところで切断されて残った弧の部分が元の形からわずかにゆがんでいることがわかります。

同じことをver1.4.2でやってみると次のようになります。

こちらはいい感じにゆがまずに切り取れているようです。
ショートカットキー
(オブジェクトの整列)オブジェクトのどちら側をそろえるかを指示するとき、Ctrl+Alt+「テンキー」が以前から使えましたが、テンキー以外の数字キーでもショートカットキーとして使えるようになりました。(詳しくは「オブジェクトを整列/配置する」を)
(変形キーの上書き)[や]や<や>はオブジェクトの回転や拡縮のショートカットキーに使われていますが、それらのキーを別の操作のショートカットキーに割り当てたくてもできなかったところを、可能にしました。
(回転と拡縮)ショートカットキーで操作するとき、あらかじめハンドルを選択しておけば、そこを中心に回転や拡縮が行われるようになりました。オブジェクトを選択し、その端に拡縮用の矢印ハンドルが表示された状態で、いずれかのハンドルをクリックして選択してから[や]や<や>を押すと、その選択したハンドルを中心に回転や拡縮が行われます。ただ、回転するための中心を選ぶ場合も回転ハンドルではなく拡縮用のハンドルを使うので少し妙な感じがします。
(ズームを元に戻す)「前のズーム」「次のズーム」がショートカットキーで正しく動作するようになりました。日本語キーボードでいえば「@」または「8」は「前のズーム」のショートカットキーで、ズーム操作の履歴をさかのぼって元に戻します。「シフト+@」または「9」は「次のズーム」のショートカットキーで、ズーム操作の履歴に沿ってやり直します。エクステンション
- 「パスの変形」メニューの下に無駄なノードなどを除去してくれるエクステンションが追加されました。
- Affinity Designerのファイルから読み込めるデータが増えました。
- DFXファイルもインポート/エクスポートの両面で改良されました。